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委託物横領罪における預金による金銭の占有を肯定する理由は、①否定すると振替送金のように預金債権のままで処分したときには背任罪しか成立しないことになり不均衡であるから、預金たる金銭という不特定「物」の「占有」も認めるべきであるという価値判断(高橋則夫「刑法各論」第2版362頁、西田典之「刑法各論」第7版254~255頁、大塚裕史「基本刑法Ⅱ」第2版287頁)と、②正当な払戻権限の存在により預金の払戻請求に対する銀行の要保護性が否定される(銀行に対する移転罪の成立が否定される)結果、払戻権限を有する者に法律的支配に基づく預金の占有が認められることになるという理論的根拠(山口厚「刑法各論」第2版29 […]
秒速・総まくり2021及び秒速・過去問攻略講座2021に関するQ&Aの一覧表を作成いたしました。 下記の質問一覧で、回答を確認したい質問(青文字)をクリックすると、クリックした質問に対する回答に移動します。 回答文の最後にある「Q&A一覧に戻るにはこちらをクリック」から、記事上部の質問一覧に戻ることができます。 秒速シリーズに関する疑問点等がQ&A一覧でも解決しない場合には、「質問コーナー」又は「お問い合わせ」からご質問いただければと思います。 宜しくお願い致します。 秒速シリーズ2021全般 Q1.秒速シリーズのテキストは、加藤先生が作っているのですか。 Q2.秒速シリーズ20 […]
詐欺罪における財産的損害については、①詐欺罪における財産的損害の内容は、「欺」罔行為のところで、法益関係的錯誤の対象事項(判例でいう「交付の判断の基礎となる重要な事項」)の解釈に取り込まれる形で「欺」罔行為の要件に吸収されているとして、書かれざる構成要件要素として独立の要件に位置づけることを否定する見解(山口厚「刑法各論」第2版267頁、山口厚「新判例から見た刑法」第2版292~297頁)と、②書かれざる構成要件要素として独立の要件に位置づける見解(高橋則夫「刑法各論」第2版323頁)があります。著者によって判例の立場の理解について対立があるものの、山口厚「新判例から見た刑法」第2版295頁で […]
業務上占有者と非占有者とが横領の共同遂行について合意した場合における非占有者の認識については、業務上横領罪の認識を認める見解と、単純横領罪の認識を認める見解とがあります。平成27年司法試験の出題趣旨・採点実感では、「本件の錯誤は、構成要件を異にするいわゆる抽象的事実の錯誤であるから、このような錯誤の場合にどのように処理するか、故意責任の本質について触れて一般論を簡潔に示した上、業務上横領罪と窃盗罪との関係を論じることになる。」(出題趣旨)、「業務上横領罪と窃盗罪との間に重なり合いが認められた場合には軽い罪の限度での重なり合いを認めることとなろうが、業務上横領罪と窃盗罪とは懲役刑については同一の […]
共同正犯関係からの離脱が問題となる事案において、心理的因果性の遮断が認められる一方で物理的因果性が残存している場合について共同正犯の成立を否定するための理論構成には、3つあります。①と②が因果性遮断説からの説明、③が共同正犯に固有の要件からの説明です。 ①共犯の処罰根拠について自己の関与が構成要件的結果を惹起したという因果性であると理解する因果的共犯論からは、自らの関与と因果性を有する範囲で処罰範囲が正当化されるため、いったん共犯関係が成立した後であっても、その後に自らが設定した結果惹起に至る因果性が解消されれば、共犯関係からの離脱が認められ、その後の行為及び結果については共犯の罪責を負わない […]
不作為犯の因果関係も、①事実的因果関係としての条件関係と、②偶発的な結果を排除して適正な帰責範囲を確定することを目的として行為に帰責される結果の範囲について規範的見地から限定を加えるための概念である法的因果関係の2つからなります(大塚裕史「基本刑法Ⅰ」第3版59頁・66頁・90頁)。 最三小判平成元・12・15・百Ⅰ4は、保護責任者不保致死罪が問題となった事案について、「直ちに被告人が救急医療を要請していれば、・・十中八九・・救命が可能であったというのである。そうすると、・・救命は合理的な疑いを超える程度で確実であったと認められる」として因果関係を認め、保護責任者不保護致死罪の成立を肯定してい […]
令和3年司法試験が終了したことに伴い、「令和3年司法試験合格に向けた理想的な勉強計画(9月スタートver)」の記事を取下げ、新しく「令和4年司法試験合格に向けた理想的な勉強計画(7月スタートver)」を公開いたしました。2021.06.20 下記画像をクリックすると、「令和4年司法試験合格に向けた理想的な勉強計画(7月スタートver)」の記事に移動します。
他人名義のクレジットカードを使用して財物を購入することについて、最二小決平成16・2・9・百Ⅱ54は、加盟店を被害者と捉え、クレジットカードの名義人と利用者の同一性が詐欺罪における法益関係的錯誤の対象である重要事項に当たるとして、名義人と利用者の同一性を偽ること自体が加盟店に対する「欺」罔行為に当たり、加盟店に対する1項詐欺罪が成立するとしています。このように、名義人と利用者の同一性を偽ること自体が「欺」罔行為を構成するため、名義人がカード使用について承諾しているかどうか、さらには利用代金が名義人において決済されるかどうかは、「欺」罔行為の成否に影響しません。したがって名義人と利用者の同一性の […]
最二小判令和2年9月11日は、「請負契約に基づく請負代金債権と同契約の目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし、他方を反訴請求債権とする本訴及び反訴が係属中に、本訴原告が、反訴において、上記本訴請求債権を自働債権とし、上記反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張すること」について、民事訴訟法142条に抵触せず、適法であると判示しました。 つまり、「本訴請求債権を反訴請求に対する相殺の抗弁に供すること」のうち、㋐本訴請求債権である請負代金債権を瑕疵修補に代わる損害賠償請求権を訴訟物とする反訴において相殺の抗弁に供することと、㋑本訴請求債権である瑕疵修補に代わる損害賠償請求 […]
大塚裕史「基本刑法Ⅱ」第2版282頁では、「預かった物の返還を求められた際にそれを拒絶したりすれば、それだけで既遂に達する」とされていますから、委託信任関係に基づき「他人の物」を「占有」する者が、当該「他人」からの返還要求に対して嘘をつくなどしてこれを拒絶した場合には、それだけで「横領」に達するとして委託物横領罪が成立します。平成19年司法試験の事例において、甲が費消した残金50万円は、甲がBとの委託信任関係に基づき「占有する」「他人」B「の物」ですから、委託物横領罪の客体に当たります。そうすると、甲がBに対して「残り100万円のうち50万円しか受け取れなかった」と嘘を言った時点で「横領」が既 […]
練馬事件・最大判昭和33・5・28・百Ⅰ75は、「数人の共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所で会し、かつその数人間に一個の共謀の成立することを必要とするものでなく、同一の犯罪について、甲と乙が共謀し、次いで乙と丙が共謀するというようにして、数人の間に順次共謀が行われた場合は、これらの者すべての間に当該犯行の共謀が行われたと解するのを相当とする。」と判示しています。これにより、同一犯罪について、数人の間に順次共謀が行われた場合、共謀者全員の間に共謀が成立したものと評価される。 平成28年司法試験の事案は、甲による共同正犯関係からの離脱や丙についての承継的共同正犯の成否等、順次共謀以 […]
振り込め詐欺の事案については、1項詐欺罪説と2項詐欺罪説とが対立しており、判例は1項詐欺罪説に立っています(大判昭和2・3・15)。犯人は、自己の管理する銀行口座に金銭を振り込ませることで、その金額の預金を自由に払い戻せる状態になるのだから、犯人と被害者との間で現実に「財物」たる現金の授受(占有移転)があったのと同視できるというのが、その理由です(大塚裕史「基本刑法Ⅱ」第2版288頁)。これについては、松澤伸教授の論説が参考になると思います(「論説 振込め詐欺を巡る諸問題 松澤伸」)。 これに対し、還付金詐欺について、大阪高判平成28・7・13では、電子計算機使用詐欺罪(未遂)の成立が認め […]
未遂犯の成立要件については、①㋐「犯罪の実行に着手」したことと、㋑構成要件的結果が発生しなかったことだけで足りるとする見解のほか、②「行為自体の危険」と「結果としての危険」を区別した上で、㋐「犯罪の実行に着手」したこと、㋑構成要件的結果に至る具体的危険が発生したこと、及び㋒構成要件的結果が発生しなかったことと整理する見解もあります(高橋則夫「刑法総論」386頁)。 ②の見解からは、未遂犯の成立には、「犯罪の実行に着手」したことにより構成要件的結果に至る具体的危険が発生したこと(㋑)という意味で、因果関係が必要となります。 平成30年司法試験刑法の採点実感で「仮に未遂犯においても結果の発生を必要 […]
間接正犯は、本来的には、正犯性の問題です(大塚裕史「基本刑法Ⅰ」第3版309頁、山口厚「刑法総論」第3版67頁以下、高橋則夫「刑法総論第3版422頁」)。山口厚「CRIMINAL LAW刑法」第3版40頁では、「直接正犯と間接正犯とは、(正犯の)構成要件該当性が認められる事例での、内部的な事実上の区別にすぎない。ここで、外形的には実行行為がないのに、いかなる場合に、自手実行がある場合と同視しうるのかが問題となるのである」とされています。つまり、甲が乙に指示をして乙に万引きをさせたという事例では、甲又は乙のいずれかを正犯とする窃盗罪の構成要件該当性が認められることまでは確定しており(したがって、 […]
謀議時点から共同者間の認識が罪名レベルでずれている場合には、罪名レベルで故意の内容が異なる者どうしの合意により「共謀」が成立するのかという形で、共同正犯の罪名従属性が問題となります。共同正犯の罪名従属性は、罪名レベルで故意の内容が異なる共同者間に共同正犯が成立するのか、という問題です。このように、共同正犯の罪名充足性は、直接的には、結果(V死亡)と故意(乙の傷害の故意)のずれではなく、共同者間の故意のずれ(甲が殺人の故意を有する一方で、乙が傷害の故意しか有しないこと)を問題にしています。謀議時点から共同者間の認識が罪名レベルでずれている場合には、共同正犯の成否の検討過程にける出発点に位置づけら […]
実行行為とは、広義には客観的構成要件に該当する行為全般を意味し(強盗罪における「強取」、詐欺罪における交付行為を受けること等も含まれる)、狭義には強盗罪の「暴行又は脅迫」や詐欺罪における「欺」罔行為等を意味します。 承継的共同正犯は、後行者について、実行行為終了前に「共謀に基づき実行行為の一部を実行した」ことを根拠として、一部実行全部責任という効果としていかなる範囲で先行者の行為とそれにより惹起された結果を承継するか(=加功前の先行者の行為とそれにより惹起された結果も含めて共同正犯としての責任を負わせることができるか)という議論です(高橋則夫「刑法総論」第3版460頁)。なので、ここでいう「実 […]
私も、法人による窃盗罪における占有については、「占有の主体をA社とするなど、占有についての理解が不足しているのではないかと思われる答案もあった」という平成27年司法試験の採点実感を契機として、かなり調べた記憶があります。 佐伯仁志・道垣内弘人「刑法と民法の対話」初版159頁では、「「自己のためにする意思」は窃盗罪の占有には必要なく、他人のためにする占有も含まれ、他方で、代理占有、間接占有、占有改定のような観念的な占有は、窃盗罪の占有には含まれない」とされています。民法の占有が認められるためには、直接占有・間接占有のいずれにおいても、「自己のためにする意思」(民法180条)が必要です。民法上、会 […]
最一小判平成30・3・22の山口厚裁判官の補足意見は、クロロホルム事件・最一小決平成16・3・22・百Ⅰ64を参照した上で、①実行行為との密接性と②既遂結果発生の客観的な危険性の双方を満たす行為に着手した時点に未遂犯における「実行に着手」が認められると述べています。そして、①と②の関係性について、「相互に関連させながらも、それらが重畳的に求められている趣旨を踏まえて検討することが必要である。特に重要なのは、無限定な未遂罪処罰を避け、処罰範囲を適切かつ明確に画定するという観点から、上記の「密接性」を判断することである」と述べているため、①と②を一応区別しています。 もっとも、①と②とは、相互に関 […]
まず、認識していた客体である乙に対する殺人未遂罪が成立することについて、簡潔に認定します。ここでは、抽象的法定付合説と具体的法定付合説の対立も、数故意犯説と一故意犯説の対立も書きません。 次に、認識していなかった客体である丙に対する殺人未遂罪の成否を検討します。ここでは、抽象的法定付合説と具体的法定付合説の対立を論じ、抽象的法定付合説に立つ場合にはさらに数故意犯説と一故意犯説の対立も論じます。なお、双方未遂事例でも、後者の論点を書きます。例えば、最三小判昭和53・7・28・百Ⅰ42は、甲が警察官乙の拳銃を強取する目的で、改造けん銃を発砲したところ、弾丸が乙・丙双方に命中したものの、いずれも死亡 […]
身分は客観的構成要件要素ですから(大塚裕史ほか「基本刑法Ⅰ」92頁)、身分の連帯的作用・個別的作用を定めた65条1項・2項は、少なくとも構成要件該当性の段階で論じることになります。 例えば、「他人の物」を「占有する」甲と非占有者乙とが、単純横領罪について共謀し(乙は甲の身分について認識あり)、当該「他人の物」に対する「横領」を実行したという事案であれば、初めに、甲について単純横領罪が成立すること(後述の通り、乙との共同正犯となること)を認定します。次に、乙に単純横領罪の共同正犯が成立するかを検討し、その際、①単純横領罪についての共謀の成立、②①の共謀に基づく「横領」の実行、③65条1項・2項の […]
加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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