加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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方法の錯誤における双方未遂事例

甲が乙を殺害しようと思い、乙に向けて拳銃を発砲したところ、弾丸が乙と丙に命中し、いずれも死亡しなかったという事案において、抽象的法定付合説からは、乙に対する殺人未遂罪と丙に対する殺人未遂罪が成立するのでしょうか。乙と丙のいずれか一方が死亡した事案と乙と丙の双方が死亡した事案については勉強したことがあるのですが、乙と丙のいずれも死亡しなかった事案については勉強したことがなかったため、質問させて頂きました。

まず、認識していた客体である乙に対する殺人未遂罪が成立することについて、簡潔に認定します。ここでは、抽象的法定付合説と具体的法定付合説の対立も、数故意犯説と一故意犯説の対立も書きません。

次に、認識していなかった客体である丙に対する殺人未遂罪の成否を検討します。ここでは、抽象的法定付合説と具体的法定付合説の対立を論じ、抽象的法定付合説に立つ場合にはさらに数故意犯説と一故意犯説の対立も論じます。なお、双方未遂事例でも、後者の論点を書きます。例えば、最三小判昭和53・7・28・百Ⅰ42は、甲が警察官乙の拳銃を強取する目的で、改造けん銃を発砲したところ、弾丸が乙・丙双方に命中したものの、いずれも死亡しなかったという事案について、数故意犯説を採用し、乙に対する強盗殺人未遂罪と丙に対する強盗殺人未遂罪の成立を認め、両罪を観念的競合としています(西田典之「刑法総論」第2版223頁)。

2020年09月10日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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