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順次共謀を認めることの実益

平成28年司法試験の出題趣旨・採点実感では、暴力団組織である某組の組長である甲が同組の組員である乙に対してV方における住居侵入強盗について指示をし、これを了承した乙が一人でV方に侵入した上でVに対して強盗罪における「暴行」を行い、その後、乙の弟分である丙が乙との間でVに対する強盗について現場共謀し、乙の暴行により反抗を抑圧されたVから現金500万円を強取したという事案について、「甲と丙との間に共謀が成立するのかについても、いわゆる順次共謀の考え方(判例として最大判昭和33年5月28日刑集12巻8号1718頁等がある。)に従って論述することが求められる。」(出題趣旨)、「甲について共犯関係からの離脱を認めないとした場合、甲丙間に共謀(順次共謀)が成立するかについては、その結論はさておき、相当数の答案で論述されていた。受験生においては、順次共謀の考え方(判例として最大判昭和33年5月28日刑集12巻8号1718頁等がある。)を含め、刑法上の基本的な概念については,その理解をより一層深めてもらいたい。」(採点実感)とされています。順次共謀とは、どういった場面で、何のために用いられるのでしょうか。

練馬事件・最大判昭和33・5・28・百Ⅰ75は、「数人の共謀共同正犯が成立するためには、その数人が同一場所で会し、かつその数人間に一個の共謀の成立することを必要とするものでなく、同一の犯罪について、甲と乙が共謀し、次いで乙と丙が共謀するというようにして、数人の間に順次共謀が行われた場合は、これらの者すべての間に当該犯行の共謀が行われたと解するのを相当とする。」と判示しています。これにより、同一犯罪について、数人の間に順次共謀が行われた場合、共謀者全員の間に共謀が成立したものと評価される。

平成28年司法試験の事案は、甲による共同正犯関係からの離脱や丙についての承継的共同正犯の成否等、順次共謀以外の論点も絡むため、以下では、「甲と乙がV方における住居侵入強盗について共謀し、その後、乙と丙がV方における住居侵入強盗について共謀し、丙だけでV方における住居侵入強盗を実行した」という事例を前提として説明します。

上記事案では、甲丙間に直接の意思連絡がないものの、順次共謀肯定説からは、甲乙間の意思連絡と乙丙間の意思連絡により、「甲乙丙三者間における1つの共謀」が成立することになります。そのため、甲は、丙だけにより実行されたV方における住居侵入強盗についても、「自己の共謀に基づく犯罪」として、共謀共同正犯として責任を負うことになります。

これに対し、順次共謀否定説からは、甲乙間の共謀と乙丙間の共謀しか認められないことになります。そうすると、甲にとっては、丙だけにより実行されたV方における住居侵入強盗は「自己の共謀に基づく犯罪」とはいえません。甲にとっては、甲乙との間における共謀はあるが、共謀に基づく実行行為を欠くことになるわけです。なお、乙については、丙だけにより実行されたV方における住居侵入強盗も「自己の共謀に基づく犯罪」といえるため、丙との間における共謀共同正犯が成立することになります。

上記の事例を、丙ではなく乙だけで住居侵入強盗を実行したという内容に修正した場合には、順次共謀否定説からも、甲・乙・丙のいずれについても住居侵入罪・強盗罪の共同正犯が成立します。甲にとっては、乙だけにより実行されたV方における住居侵入強盗は「甲乙間の共謀に基づく犯罪」といえますし、丙にとっても、上記住居侵入強盗は「乙丙間の共謀に基づく犯罪」といえるからです。

2020年09月11日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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