加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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不作為犯の因果関係の構造

不作為犯の因果関係については、①条件関係の有無を認定するために作為による結果回避可能性を検討した上で、②法的因果関係の有無を認定するために不作為の危険の現実化を検討するのでしょうか。それとも、危険の現実化一本で処理しても構わないでしょうか。

不作為犯の因果関係も、①事実的因果関係としての条件関係と、②偶発的な結果を排除して適正な帰責範囲を確定することを目的として行為に帰責される結果の範囲について規範的見地から限定を加えるための概念である法的因果関係の2つからなります(大塚裕史「基本刑法Ⅰ」第3版59頁・66頁・90頁)。

最三小判平成元・12・15・百Ⅰ4は、保護責任者不保致死罪が問題となった事案について、「直ちに被告人が救急医療を要請していれば、・・十中八九・・救命が可能であったというのである。そうすると、・・救命は合理的な疑いを超える程度で確実であったと認められる」として因果関係を認め、保護責任者不保護致死罪の成立を肯定しています。本判決は、結果回避の確実性だけで因果関係を肯定していますが、それは、行為時・行為後の介在事情が存在しない事案であるが故に法的因果関係に固有の問題点が生じない事案であったため、条件関係さえ認められれば法的因果関係の問題を飛ばして因果関係ありと認定することができた事案だったからです。したがって、本判決は不作為犯の因果関係のうち、条件関係に関する判断枠組みを示したものとして理解されることになります(大塚裕史「基本刑法Ⅰ」第3版89頁)。なお、本判決による不作為犯の条件関係の判断枠組みについては、「期待された作為・・がなされていれば・・結果回避が合理的な疑いを超える程度に確実であった」かという結果回避の確実性の有無により判断するものである(大塚裕史「基本刑法Ⅰ」第3版89~90頁)、「ある期待された作為がなされていたならば、高度の蓋然性をもって結果が回避されたであろう」という結果回避の高度の蓋然性の有無により判断するものである(西田典之「刑法総論」第3版121頁)というように理解されています。

不作為犯の法的因果関係の判断枠組みとしても、危険の現実化説が用いられます。もっとも、条件関係と危険の現実化としての法的因果関係の関係については、作為犯・不作為犯に共通するものとして、㋐両者を区別する見解(大塚裕史「基本刑法Ⅰ」第3版90頁)と、㋑後者の判断が前者の判断を当然に包含するとして危険の現実化説一本で条件関係と法的因果関係が判断されるとする見解(山口厚第「刑法総論」第3版61頁)とがあります。試験対策としては、採点者に伝わりやすい形で配点項目を拾うために、原則として、㋐の見解に従って答案を書くべきだと思います。もっとも、理論的には㋑の方が正しいと思うので、介在事情の存在により因果関係が否定される事案では、㋑の見解に従って答案を書き他方が無難であると思います。

2020年09月13日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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