質問コーナー「 憲法 」
48件の質問

過度の広汎性の原則が問題となる事案でも、いきなり合憲限定解釈の可否から検討するのではなく、「合憲限定解釈をしない場合を前提とした過度の広汎性の有無」→「合憲限定解釈による過度の広汎性の払拭の可否」という流れで検討することになります。 そして、過度の広汎性の原則の場合も、合憲限定解釈をする際には、明確性の原則の場合における合憲限定解釈と同じ要件が適用されます。つまり、①解釈の結果が規定中の合憲的適用部分と違憲的適用部分を明確に切り分けるものであることと、②一般国民の理解において①の解釈の結果を規定から読み取れることが必要となります。 もっとも、明確性の原則と過度の広汎性の原則とでは、問題意識が異 […]

2023年03月22日

違憲審査基準の定立過程で考慮し得る「制約の態様」の範囲については、予め厳密に決めることは困難です。類型的なものは違憲審査基準の定立過程で考慮し、具体性のあるものは手段必要性(場合によっては、手段相当性)で問題にするという、アバウトな棲み分けしかできないと思います。 例えば、違憲審査基準の定立過程で罰則の存在に言及することについて、令和2年司法試験(職業の自由を規制する法令)の採点実感では、「罰則があるので緩やかな基準を採れないという答案があったが、審査基準は権利に対する制約の態様、強さで定立されるべきである。罰則の有無は目的達成手段の審査において考慮されるべき事柄であると思われる。」と説明され […]

2023年03月22日

法令違憲審査の場面では、違憲審査基準の厳格度は、それと逆の相関の関係に立つ立法裁量を尊重する要請の度合いを明らかにすることにより決定され、当該法令に関する立法裁量を尊重する要請の度合いを判定する際の典型的な考慮要素が人権の性質(厳密には、重要性ではなく、重要性も含んだより広い概念としての「人権の性質」です。)と制約の態様(厳密には、制約の強度ではなく、制約の強度も含んだより広い概念としての「制約の態様」です。)です。 確かに、制約されている人権と相対する法益の重要性やその法益が侵害される危険性を理由として、人権の重要性が低いと評価して、違憲審査基準の厳格度を下げることはできません。要するに、保 […]

2023年03月10日

職業規制に関する違憲審査基準の定立過程では、制約の強度と制約の目的の2点を(主として)考慮するというのが一般的な理解です(例えば、「憲法論点教室」(第2版)154頁以下、「憲法判例の射程」(初版)135頁以下)。 確かに、令和2年司法試験の採点実感には、「2 違憲審査について (2)多くの答案は、審査基準を設定するに際し、①制約されている権利の重要性、②制約の強度、③制約の目的(消極目的か積極目的か)を検討した上で基準の設定を行っていたが、①から③までの検討と具体的な審査基準とのつながりが不明確な答案が少なくなかった。」との記述があります。 しかし、この記述は、職業規制である規制①と移動規制で […]

2023年02月28日

令和4年司法試験の憲法では三者間形式が出題されましたが、今回の三者間形式の問題は、大学側の合憲主張を出発点としてこれに対する研究者側の反論を踏まえて自説を展開させるものであり、原告・被告人の違憲主張を出発点として違憲主張をフルスケールで展開させる平成29年までの三者間形式とは異なります。 また、令和4年に三者間形式が出題されたからといって、来年以降の三者間形式が続くとは限りません。出題者が、問題との相性を踏まえて、法律意見書形式よりも上記の三者間形式の方が問答を検討しやすいと考えて今年は上記の三者間形式にしただけという可能性も考えられますので。 さらに、自説ベースの法律意見書形式は、自説→論点 […]

2022年10月14日

まず、本問の屋外広告物規制は、屋外広告物の掲示を原則として禁止した上で禁止違反について罰則の対象にするというものであり、事後規制の典型例であると考えます。仮にこれが事前規制になるのであれば、刑罰法規は全て事前規制になってしまいます。また、「特別規制区域の歴史的な環境を向上させるものと認められる」として許可を与えられた場合には例外的に広告物を掲示できるという例外ルールだけに着目して許可制だから事前規制であるとする説明には、違和感があります。 次に、表現内容規制の実質は、ある内容の表現をその伝達的効果から生じる害悪の除去を目的として規制することにあります(芦辺「憲法額Ⅲ403頁」)。本問の屋外広告 […]

2021年08月28日

私は、原則として、違憲審査基準を定立する際に(制約認定と違憲審査基準定立との間で)、「〇〇の権利も、「公共の福祉」(12条後段、13条後段)による制約に服する」ということは書かなくていいと思います。 もっとも、個別的人権規定(条項)で「公共の福祉」が掲げられている人権(職業の自由、財産権など)については、当該個別的人権規定で掲げられている「公共の福祉」を引用するのが望ましいと思います。

2021年08月07日

憲法演習サブノート210問にざっと目を通してみましたが、答案例どころか答案構成例すら示されていないですし、答案の最初から最後に至るまでの過程、すなわち、答案全体の流れや答案で使うべき判断枠組みが分かりやすく示されているわけでもありません。 憲法の論文対策として大事なことは、①「保障→制約→違憲審査基準の定立(主として人権の重要性と制約の態様を考慮)→目的手段審査による当てはめ」という違憲審査の基本形をはじめとする「事案類型ごとの違憲審査枠組み」を身につけること、②事案類型ごとに違憲審査枠組みで照らしながら問題文を読み、判例学説・問題文のヒント・その場で考えたことを選択した違憲審査枠組みという「 […]

2021年07月17日

北方ジャーナル事件大法廷判決は、①表現行為全般を対象として、事前抑制は「厳格かつ明確な要件のもとにおいてのみ許容されうる」と述べ、さらに、②公共的事項に関する表現行為を対象とする事前抑制については、「原則として許されない」と述べることで、さらに違憲審査の厳格度を上げています。 そうすると、公共的事項に関しない表現行為については、公共的事項に関する表現行為に比肩するだけの要保護性がある場合を除き、①までしか妥当しませんから、「表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるとき」という判断枠組みは妥当し […]

2021年06月01日

例えば、平成23年司法試験の事案であれば、立法目的(規制目的)はプライバシー保護にあり、保護されるべプライバシーの重要性や必要不可欠性は、「Z機能画像によるライバシー侵害→犯罪被害等」によって基礎づけられることになります。厳格審査又は中間審査の基準では、「Z機能画像によるライバシー侵害→犯罪被害等」という因果関係について立法事実による支持がないのであれば、「Z機能画像によるライバシー侵害→犯罪被害等」という因果関係がないと扱われることになりますから、法が保護しようとしている「Z機能画像によって侵害されるプライバシー」は、それが侵害されても単なる不快感・不安感等にとどまり、現実的な被害を伴うもの […]

2021年05月25日

民法については、沖野ほか「民法演習サブノート210」がお薦めです。民法の演習書では、網羅性を重視するべきです。なお、ロープラクティス民法だと、情報量が多するぎるため、回しきれないと思います。 憲法については、司法試験過去問と予備試験過去問(人権からの出題に限る)をやっておけば十分です。この2つだけでもかなりの量になります。憲法では、とにかく、過去問を通じて問題文の読み方と答案の書き方をマスターすることが大事ですから、演習書をやる余裕があるのであれば、その時間を過去問を繰り返すことに回しましょう。憲法の場合、演習書をやっても、たいした学習効果を得ることはできないと思います。 参考にして頂けますと […]

2021年05月07日

適用違憲審査でも、理論上は、法令違憲審査と同様、目的と手段の双方が問題になります。もっとも、通常は法令の適用行為の目的と法令自体の目的とは一致しますから、手段の問題だけが顕在化するのが通常です。仮に法令の適用行為の目的と法令自体の目的とが一致する場合において、法令の適用行為の目的が違憲であるならば、そもそも法令自体が目的審査で違憲になるわけですから、法令の適用行為の目的の違憲性は法令の適用行為に固有の問題ではないことになります。 これまでの司法試験では、法令の適用行為の目的と法令自体の目的とがずれている事案は一度も出題されていませんから、適用違憲審査が出題された場合は、法令の適用行為の目的と法 […]

2021年04月29日

平等権侵害における違憲審査基準の原則形態(又は相場)は、判例と学説によって異なるように思えます。少なくとも、これまでの最高裁判例のなかで、厳格審査の基準を採用したものはありませんから、判例は、平等権侵害における違憲審査基準の厳格度の上限を中間審査の基準、原則形態を合理性の基準としていえると考えられます。 これに対し、学説においては、平等権侵害における違憲審査基準の厳格度の上限を厳格審査の基準、原則形態を中間審査の基準としていえると考えられます。原則形態が中間審査の基準であると断定するのは難しいですが、どちらかと問われれば原則形態は中間審査の基準よりである、という理解になると思います。

2021年04月28日

確かに、判例の事件名にも配点があります。例えば、「判例に言及する場合には、単に事件名や結論を提示するのみでは十分とは言い難い。」とする平成23年司法試験の採点実感、「本設問のように当然言及してしかるべき関連判例が存在する事案については、当該判例を明示し、その論旨を踏まえて自らの見解を示すことは必須である。」とする令和2年司法試験の採点実感からも、事件名にも配点があることが窺われます。 しかし、一番大事なことは、保障→制約→人権の性質と規制の態様”等”を考慮して違憲審査基準を定立→当てはめ(目的手段審査)という違憲審査の基本的な枠組みを前提として、利益衡量論に立っている判 […]

2021年04月23日
いつもお世話になっております。 憲法について質問させて頂ければと思います。 集会の自由について、近年のいわゆる意見書型の出題形式で出題された場合、つまり問題文に司法事実が記載されておらず法律案段階で憲法上の問題点を検討する問題では、どのような構成が良いのでしょうか。 平成25年の出題のように、集会の申請があって不許可処分が出されたような場合、基本的な回答筋は、泉佐野市民会館事件の限定解釈規範(ないし、それを緩和した規範)を出して、「危険」の有無を具体的事情を使って当てはめるということになると思います。 しかし、これはあくまでも適用違憲の審査の話だとすれば、意見書型(法令違憲のみ)の問題では、通常の表現の自由の場合と同様に目的手段審査をするということになるのでしょうか。 その場合、泉佐野市民会館事件の判示は答案上、活用できるのでしょうか。 私としては、「集会の自由といえば泉佐野市民会館事件」のイメージがあり、集会の自由でこれを参照しないのは怖いと感じます。しかし、集会の自由が問題になっている判例は適用上の解釈を問題としたもので、意見書型(法令違憲のみ)の問題の答案と相性が悪いように思えます。あるとすれば、目的手段審査における手段必要性の部分で、限定解釈が可能であるとして、過剰な部分は違憲とする(つまり、「明らかに差し迫った危険があるとき」などを法令の要件にすべき、と意見する)といった感じになるのかな、とも考えておりますが、構成として適切でしょうか。 お教え頂ければ幸いです。よろしくお願いいたします。

泉佐野市民会見事件では、上告理由として、①本件条例7条1号及び3号自体の違憲性と②これらに基づく本件不許可処分の憲法21条1項違反等が主張されており、最高裁は、①については、不許可事由である3号について「明らかな差し迫った危険」による限定解釈(憲法適合的解釈なのか、合憲限定解釈なのかは踏み込みません)をすることにより、①の主張を排斥しているため(木下ほか「精読憲法判例[人権編]初版418頁)、「明らかな差し迫った危険」は法令違憲審査と無関係ではありません。 私だったから、法令違憲審査において、保障→制約→人権の性質と規制の態様を考慮して違憲審査基準を定立→当てはめ(目的手段審査)という違憲審査 […]

2021年04月23日

例えば、思想信条を理由とする採用拒否事例であれば、採用の無効を観念することができないため(仮に無効を観念することができたとしても、無効=採用ではないから、無効を論じる意味がない)、不法行為責任を追及することなり、間接適用説を論じた上で、「他人の権利…を侵害」という要件(違法性とも呼ばれる要件です)について、「他人の権利」である労働者側の思想良心の自由と会社側の採用の自由(憲法22条1項、29条1項)との調和を図るために、ある程度厳格に判断することになります。「他人の権利…を侵害」の要件の解釈・適用を通じて、対立している私人どうしの権利の調整を図るわけです。 団体の人権と構成員の人権とが衝突する […]

2021年03月16日

孔子廟訴訟(最大判令和3年2月24日)については、目的効果基準と総合衡量型の枠組みの棲み分けについてどういった立場に立っているのかの理解が難しく、まだ教授の先生方の理解も示されていないため、仮に令和3年司法試験・予備試験で政教分離原則が出題されたとしても、本判決を踏まえた論述をすることは求められていないと思います。そのため、令和3年司法試験・予備試験対策としては、論文対策として勉強をする必要性は高くないです。当てはめの仕方を確認するくらいで足りると思います。 本判決の解説としては、伊藤建先生の解説が大変参考になると思いますので、リンクを張らせて頂きますね(こちらをクリック)。

2021年02月26日

財産権侵害については、「人権の性質と制約の態様を考慮して違憲審査基準の厳格度を決定する⇒違憲審査基準の適用による目的手段審査」という枠組みで論じるべきではありません。 平成29年予備試験の出題趣旨では、財産権侵害のうち具体的財産権の侵害が問題となる事案について、「本件条例が、憲法第29条第1項で保障される財産権を侵害する違憲なものであるかを論じる…際、本件条例の趣旨・目的と、それを達成するための手段の双方について、森林法違憲判決(最高裁昭和62年4月22日大法廷判決、民集41巻3号408頁)及び証券取引法判決(最高裁平成14年2月13日大法廷判決 民集56巻2号331頁)などを参照しながら 検 […]

2021年02月26日

論文試験において「君が代」起立斉唱職務命令拒否事件について論じる場合、判例の判旨を学説上の違憲審査基準論に引き直して、保障⇒制約⇒違憲審査基準論の定立・適用という流れに従って論じることになると思われます。 同事件で言及されている公務員の全体の奉仕者性は、公務員の政治活動の禁止に関する猿払事件・堀越事件や公務員の労働基本権の制限に関する全農林警職法事件等で言及されている公務員の全体の奉仕者性と同様、公務員の人権に対する制約の根拠に位置づけられます。 違憲審査基準の厳格度は、職業規制等の一部の場面を除き、人権の性質と制約の態様を考慮して判断されます。思想良心の自由に対する制約の場合、原則通り、人権 […]

2021年02月20日

近年の司法試験の出題趣旨・採点実感では、学説が違憲審査基準論を採用している領域については、「保障⇒制約⇒違憲審査基準の定立・適用」という枠組みに従って論じることが重視されています。したがって、学説が違憲審査基準論を採用している領域については、上記の枠組みに従って論じることになります。 違憲審査基準論を定立しないで答案を書くのは、かなり稀であり、学説が違憲審査基準論を採用していない領域に限られます。したがって、基本的には、学説が違憲審査基準論を採用していない領域の問題であるか否かにより判断することになります。

2021年02月19日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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