加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

承継的共同正犯と共謀共同正犯の関係

承継的共同正犯が問題となる事例における後行者は、先行者による先行行為(例えば、強盗罪における「暴行又は脅迫」等)について自手実行していないので、その意味で、後行者については、先行行為との関係では「実行行為を分担していない者」として共謀共同正犯も問題になるのではないかと思いました。なので、承継的共同正犯の肯否を検討した後に、さらに、先行行為との関係で共謀共同正犯の肯否を検討することになるのではないでしょうか。

実行行為とは、広義には客観的構成要件に該当する行為全般を意味し(強盗罪における「強取」、詐欺罪における交付行為を受けること等も含まれる)、狭義には強盗罪の「暴行又は脅迫」や詐欺罪における「欺」罔行為等を意味します。

承継的共同正犯は、後行者について、実行行為終了前に「共謀に基づき実行行為の一部を実行した」ことを根拠として、一部実行全部責任という効果としていかなる範囲で先行者の行為とそれにより惹起された結果を承継するか(=加功前の先行者の行為とそれにより惹起された結果も含めて共同正犯としての責任を負わせることができるか)という議論です(高橋則夫「刑法総論」第3版460頁)。なので、ここでいう「実行行為」は、広義の実行行為に対応するものとして、「構成要件的行為」と呼ばれることもあります(山口厚「刑法総論」第3版368頁参照)。

そうすると、後行者は、共謀及びそれに基づく実行行為の分担という要件を満たしますから、実行共同正犯です。

仮に、後行者が共謀共同正犯に位置づけられるのであれば、承継的共同正犯が出題された平成18年司法試験・平成28年司法試験の出題趣旨・採点実感・ヒアリングにおいて、共謀共同正犯に関する言及があるはずです。にもかかわらず、後行者の罪責として共謀共同正犯に言及する記述は見当たりませんから、司法試験委員会も後行者を実行共同正犯に位置付けていると理解できます。

2020年09月10日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ