質問コーナー「
民事訴訟法 」
27件の質問
司法試験では、①原則として、司法試験が実施される日に施行されている法令に基づいて出題されることになっており、②司法試験六法に搭載される法令は、原則として、令和5年1月1日現在において、既に公布され、かつ、試験日以前に施行されることが確定しているものです。 改正民事訴訟法の全面施行は令和7年中であり、試験日以前に施行されることが確定している改正法は一部にとどまりますから、施行が令和7年中とされているオンライン送達などは、令和5年司法試験の出題範囲外であり、かつ、令和5年司法試験六法にも搭載されません。 以下は、法務省のウェブサイトにおける「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」で掲載されてい […]
基礎問題演習講座第17問は、敷金返還請求権の存在確認を求める訴えの確認の利益に関する問題です。 敷金返還請求権の存在確認を求める訴えは、明渡時に発生する具体的な敷金返還請求権を確認対象とする場合には、将来の権利又は法律関係を確認対象とすることになるため、原則として確認対象の適格性を欠くことになります。この場合、明渡時に発生する具体的な敷金返還請求権を確認対象としたほうが確認訴訟が有する紛争の直接かつ抜本的な解決の機能が果たされることになるのではないかという観点から、例外的に確認対象の適切性が認められるか否かを論じることになり、その際に、設問の誘導部分に言及することになります。 これに対し、条件 […]
民事訴訟法の採点実感における「受験者が民事訴訟の体系的な理解と基礎的な知識の精確な取得のために体系書や条文を繰り返し精読するという地道な作業をおろそかにし…」という記述に引きずられて取り敢えず基本書の読み込みをするというのは、勉強の方向性を見誤っていると思います。 民事訴訟法に限ったことではありませんが、過去問の演習・復習を進める過程で徐々に試験傾向(出題の範囲、深度、角度など)が分かり、過去問を解くために必要とされる「知識の範囲、深度、角度」と「方法論」に気が付き、それらの習得を明確に意識したインプット・アウトプットをするべきです。これが王道です。 試験傾向から過去問で必要とされる知識と方法 […]
既判力による後訴における主張の遮断については、①前訴確定判決の既判力により基準時における○○という権利の存在(又は不存在)が確定されている、②①を踏まえて既判力が後訴に作用するか、③作用するとして後訴における主張は①の既判力が生じている判断内容に矛盾抵触するものとして遮断されるか、という流れで論じます。 ①では、基準時がどの時点なのかを明らかにする必要はありません。 ②でも、作用を判断する際にはどの時点の権利関係なのかということは見ないので、基準時がどの時点なのかを明らかにする必要はありません(例えば、前訴確定判決により基準時である令和4年10月1日におけるXの甲土地所有権の存在が確定されてい […]
既判力が後訴に作用するか否かと、既判力の主観的範囲とは、別次元の問題です。 既判力の拘束を受ける後訴当事者の主張が排斥されるのは、後訴に作用する既判力が生じている前訴判決の判断内容と抵触する場合に限られるため、仮に既判力が後訴に作用しないのであれば、既判力の主観的範囲内にある後訴当事者の主張を既判力によって排斥する余地がないからです。 したがって、①既判力が後訴に作用することと、②既判力が後訴の当事者に及ぶ(後訴の当事者が既判力の主観的範囲内にある)こと、及び③後訴の当事者の主張が既判力が生じている前訴判決の判断内容と抵触するものに当たることの3点を満たす場合にはじめて、後訴の当事者の主張が既 […]
論文対策としての演習範囲は、インプットしただけで答案を書けるかどうかにもよります。例えば、演習を経験したことのある論点でなければ答案を書くことができないというタイプの方は、その分だけ、演習するべき範囲が広くなります。これに対し、演習を経験していない論点についても答案を書くことができるタイプの方であれば、出題可能性の高い論点、答案の書き方にコツを要する論点に限って演習をすれば足ります。 前者のタイプであれば、旧司法試験過去問を網羅的にやったほうがいいので、総まくりで取り上げられてない問題もやるのが望ましいです。これに対し、後者よりのタイプであれば、総まくりテキストで取り上げている旧司法試験過去問 […]
旧司法試験平成4年第2問(3)は、甲が乙に対する貸金債権を被保全債権として乙の丙に対する売買代金債権を被代位権利とする債権者代位訴訟を提起した事案において、乙が貸金債権の成立を争いつつ甲丙間の債権者代位訴訟に当事者として参加することの可否が問われています。 まず、改正民法下では債権者代位権が行使されても債務者の被代位権利についての処分権限は制限されませんが(民法423条の5前段)、甲が債権者代位訴訟において売買代金を甲に支払うように請求している(民法423条の3前段)のであれば、丙が甲と乙のいずれか一方に弁済をすれば他方の請求が認められなくなる(民法423条の3後段参照)という意味で、甲の請求 […]
裁判上の自白の撤回禁止効の根拠論については、①「証明不要効→審判排除効→撤回禁止効」という理解(平成23年司法試験の出題趣旨・採点実感、勅使川原「読解民事訴訟法」50頁以下)と、②「審判排除効→撤回禁止効→証明不要効」という理解(勅使川原「読解民事訴訟法」48頁)があります。 権利自白の撤回禁止効をはじめとして、自白の撤回禁止効又は審判排除効が問われている場合には、①の理解で書いた方がいいです。実際、権利自白の撤回禁止効が出題された平成23年司法試験設問1でも、①の理解を前提として、撤回禁止効の根拠である証明不要効及び審判排除効が権利自白にも妥当するかという観点から、権利自白の撤回禁止効を肯定 […]
既判力の作用の有無(訴訟物どうしの関係)と既判力の主観的範囲(当事者どうしの関係)は、別次元の問題です。既判力が後訴に作用するが、後訴に作用する既判力は後訴の当事者には及ばない(拡張されない)という結論はあり得ます。 平成28年司法試験設問3は、権利能力なき社団Xが本件不動産についての総有権確認訴訟を抵当権設定登記名義人Yに対して提起するとともに、提訴非同調者たる構成員Zを被告に回しており、X勝訴判決が確定した後に、YがZを被告として抵当権の無効を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟を提起したという事案に関するものです。 課題②では既判力の作用及び既判力の遮断効が問われているところ、前 […]
確かに、基本書で一物一権主義を根拠とする矛盾関係の肯定例として挙げられているのは、甲が乙を被告としてA土地所有権の確認訴訟を提起し、認容判決確定後、乙が甲を被告としてA土地所有権の確認訴訟を提起したというケースです。 しかし、一物一権主義の下、A土地について甲の単独所有権と乙の単独所有権が併存することはあり得ませんから、甲のA土地についての単独所有権の一行使態様であるA土地の明渡請求権と乙のA土地についての単独所有権の一行使態様であるA土地の明渡請求権も併存し得ないとして、矛盾関係を肯定することになると思われます。藤田広美「解析民事訴訟法」第2版374頁でも、旧司法試験平成17年第2問設問2に […]
記載された説(司法試験委員会の立場)とよってした説(司法研修所の立場)の違いは、処分証書に当たるというためには、①要証事実たる法律上の行為が当該文書に記載されていることに加えて、②文書の成立の真正が認められることまで必要であるかという点にあります。記載された説では①だけで処分証書であると認定することができるのに対し、よってした説では①に加えて②まで認められないと処分証書であると認定することができないわけです。 事例で考える民事事実認定(法曹界、2014年)36頁では、㋐「処分証書については、形式的証拠力が認められれば、特段の事情を検討することなく、作成者がその文書に記載されている意思表示その他 […]
その理解で正しいです。私も、同じ考えです。 114条1項に基づく既判力が後訴に作用するかを判断する際に「後訴の訴訟物」との比較対象として「前訴の訴訟物」が挙げられるのは、114条1項に基づく既判力(後訴に作用するかが問題となっている既判力)が生じているのが「前訴の訴訟物」だからです。なので、114条2項に基づく既判力が後訴に作用するかを判断する際には、「後訴の訴訟物」との比較対象は「前訴の訴訟物」ではなく、114条2項の既判力が生じている「相殺の抗弁に供された自働債権」となります。 上記のことからすると、既判力に準ずる効力が後訴に作用するかは、既判力に準ずる効力が生じている「主文中で判断が示さ […]
XのYに対する土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求(第1訴訟)⇒建物退去明渡しを命ずる判決が確定⇒XのYに対する土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求(第2訴訟)という事案では、第2訴訟において、Xは強制執行の方法として建物収去を求めるための主張立証をし、Yは強制執行の方法を建物退去にとどめるための主張立証をすることになるという意味で、既判力に準ずる効力が生じている建物退去という強制執行の方法が第2訴訟で前提問題とされることになります。強制執行の方法についてXとYの主張立証が展開されるという意味で、前提問題であると理解しているので、請求原因か抗弁かという捉え方をする必要はないと思います。 そ […]
民事訴訟法115条1項3号でいう「口頭弁論終結後の承継人」は、口頭弁論終結後、すなわち既判力の基準時の後に、①「訴訟物たる権利または義務自体の主体となった者」及び②「訴訟物たる権利関係またはこれを先決関係とする権利関係について当事者適格を取得した者」を意味します(高橋宏志「重点講義 民事訴訟法 上」第2版補訂版690頁)。 ①・②の場合に「口頭弁論終結後の承継人」に該当することについては、判例・学説上争いはありません。学説上争いがあるのは、①・②の場合に「口頭弁論終結後の承継人」に該当することをどのようにして理論的に説明するのかという、理論的な説明の仕方です。これについては、「当事者適格の移転 […]
私の見解は以下の通りです。 まず、①前訴:原告A・被告B、後訴:原告A・被告C(敗訴したBからの承継人)という事案では、BとCとを同一視した上で、前訴訴訟物と後訴訴訟物とを比較することにより、両者間に同一・先決・矛盾の関係があるかどうかを判断します。BとCとを同一視しないと、訴訟物間の同一・先決・矛盾の関係を肯定することができない事案も多々あるからです。 次に、②上記の判断手法を用いても訴訟物間の同一・先決・矛盾の関係を肯定することができない事案では、「訴訟物間の同一・先決・矛盾の関係の有無により既判力の作用を判断する」という判断枠組みを放棄することになります。基本書等では、既判力の主観的範囲 […]
平成29年から令和1年までの司法試験の民事訴訟法論文は、旧司法試験過去問との関連性が非常に強かったです。平成29年設問2・3は旧司法試験平成15年第2問、平成30年設問1は旧司法試験過去問平成22年第1問、令和1年設問1は昭和62年第1問、令和1年設問2は旧司法試験過去問昭和61年第2問の類題です。 もちろん、いずれの年度においても、司法試験過去問が参考になる問題もあるのですが、難しい問題(受験生間で差がつきやすい問題)で旧司法試験過去問が元ネタにされている傾向があります。 そのため、仮に旧司法試験過去問を元ネタにする出題がされた場合、旧司法試験過去問をやっていたかどうかでかなり差がつきます( […]
民事訴訟法115条1項3号でいう「口頭弁論終結後の承継人」は、口頭弁論終結後、すなわち既判力の基準時の後に、①「訴訟物たる権利または義務自体の主体となった者」及び②「訴訟物たる権利関係またはこれを先決関係とする権利関係について当事者適格を取得した者」を意味します(高橋宏志「重点講義 民事訴訟法 上」第2版補訂版690頁)。 ①・②の場合に「口頭弁論終結後の承継人」に該当することについては、判例・学説上争いはありません。学説上争いがあるのは、①・②の場合に「口頭弁論終結後の承継人」に該当することをどのようにして理論的に説明するのかという、理論的な説明の仕方です。これについては、「当事者適格の移転 […]
前訴で敗訴した前訴被告が前訴確定判決の不正取得を理由として不法行為に基づく損害賠償を求めて後訴を提起する場合について、後訴を制限する方法としては、①前訴確定判決の既判力が後訴に作用するとしたうえで、後訴における前訴被告の主張のうち前訴確定判決の主文中の内容と矛盾するものを排斥することで、請求を棄却するというものと、②前訴確定判決の既判力が後訴に作用することを否定しつつ、請求認容のために必要とされる請求原因として、本来的要件(故意過失、権利利益侵害、損害、因果関係)に加え「特別の事情」も要求する(請求原因を加重する)というものがあります。 勅使川原和彦「読解民事訴訟法」初版143頁・166~16 […]
前訴で敗訴した前訴被告が前訴確定判決の不正取得を理由として不法行為に基づく損害賠償を求めて後訴を提起する場合について、後訴を制限する方法としては、①前訴確定判決の既判力が後訴に作用するとしたうえで、後訴における前訴被告の主張のうち前訴確定判決の主文中の内容と矛盾するものを排斥することで、請求を棄却するというものと、②前訴確定判決の既判力が後訴に作用することを否定しつつ、請求認容のために必要とされる請求原因として、㋐本来的要件(故意過失、権利利益侵害、損害、因果関係)に加え㋑「特別の事情」も要求する(請求原因を加重する)というものがあります。最高裁は②の立場であり、②・㋑について、勅使川原和彦「 […]
権利抗弁と事実抗弁の区別については、①権利抗弁は「権利者による訴訟上での権利行使の意思表示」を必要とするものであるとする見解(髙橋宏志「重点講義 民事訴訟法 上」第2版補訂版450~451頁、「民事訴訟法判例百選」事件51解説2(2))と、②権利抗弁は「権利者による権利行使の意思表示」を必要とするものであるとして、権利行使の意思表示の必要性を「訴訟上」におけるものに限定しない見解があります(和田吉弘「基礎からわかる民事訴訟法」初版263~264頁、三木浩一ほか「リーガルクエスト民事訴訟法」第3版225~226頁)。秒速・総まくり及び秒速・過去問攻略講座で採用している延期的・停止的抗弁権か永 […]

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年 新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
答案を書くための 行政法集中演習」
(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
25年」行政法(法学書院)