質問コーナー「
論文 」
355件の質問
昭和44年12月18日最高裁判決は、「夫婦の一方が右のような日常の家事に関する代理権の範囲を越えて第三者と法律行為をした場合においては、その代理権の存在を基礎として広く一般的に民法110条所定の表見代理の成立を肯定することは、夫婦の財産的独立をそこなうおそれがあつて、相当でないから、夫婦の一方が他の一方に対しその他の何らかの代理権を授与していない以上、当該越権行為の相手方である第三者においてその行為が当該夫婦の日常の家事に関する法律行為の範囲内に属すると信ずるにつき正当の理由のあるときにかぎり、民法110条の趣旨を類推適用して、その第三者の保護をはかれば足りるものと解するのが相当である。」と判 […]
TKCの短答模試で平均-20点であるのは、短答過去問を1週もしていないため、短答固有の知識が身に付いていないとともに、読解思考重視の問題(憲法と刑法に多く、民法ではほぼなし。)の解き方を知らないからであると思います。また、民法と刑法では論文知識だけで解ける問題も少なくないため(特に、刑法は、半分近くが論文知識で解ける問題です。)、論文レベルのインプット出来ていないことも理由の1つであると考えられます。したがって、これから短答過去問をやり込むとともに、試験に向けて論文知識のインプットを進めていく過程で、自然に短答の点数が上がっていくと思います。 論文対策としては、定義・論証を正確に記憶することは […]
不法原因給付物を客体とする盗品等関与罪(刑法256条)の成否については、①不法原因給付物を客体とする前提犯罪(詐欺罪、恐喝罪、横領罪)の成否(256条1項でいう「財産に対する罪に当たる行為」の成否)、②盗品等関与罪の保護法益論との関係(256条1項でいう「物」への該当性)に分けて考え、論文試験では①→②の流れ論じます。 まず、①前提犯罪の成立が否定されれば、「…財産に対する罪に当たる行為によって領得された物」に当たらないため、盗品等関与罪の保護法益論に入るまでもなく、盗品等関与罪不成立という結論になります。 次に、②前提犯罪の成立が肯定されても、不法原因給付物については民法708条本文類推適用 […]
15年ほど前のことになりますが、私が慶應LAWの入試を受けた経験も踏まえると、基礎問の答案をちゃんと再現できるレベルまでは不要であり、A・B+レベルのことで解答筋を外さないことが大事だと思います。 基本的には、①重要な条文選択を誤らない、②重要論点を落とさない(論点の組み合わせも含む)、③それなりに正しい規範を書くという3点が重要であり(刑訴法では、伝聞・非伝聞で結論を誤らない、推認過程でおかしなこと書かないことも大事です)、④論証の理由付け、⑤当てはめのボリューム、正確性では合否は決まらないと思います。 もちろん、「刑事訴訟法320条1 項が、「公判期日における供述に代えて書面を証拠とし、又 […]
虚偽排除説を前提にして説明しますと、不任意自白の証拠能力については、原則として自白法則として論じるだけで足ります。 例えば、約束自白の場合には、自白獲得手続に違法を認めることは困難ですから、その意味においても違法収集証拠排除法則にまで言及する必要はありません。 ただし、①令和2年司法試験設問2のように、設問において自白法則と違法収集証拠排除法則の双方に言及することが求められている場合には、双方に言及する必要があります。 また、②平成27年司法試験設問2のように、不任意自白の派生的証拠の証拠能力が問われている場合には、不任意自白の派生的証拠に関して採用する見解によっては、自白法則だけでなく、違法 […]
司法試験・労働法フルパックを受講して頂き誠にありがとうございます。 特に出題可能性が高いと考える学説対立は以下の通りです。 因果関係における相当因果関係説と危険の現実化説の対立(R2司法) 間接正犯事例の故意なき幇助的道具における学説対立(H21司法) 間接正犯の実行の着手時期における利用者標準説と被利用者標準の対立(H25司法) 殺人罪の不真正不作為犯と保護責任者遺棄致死罪の区別に関する学説対立(H30司法) 被害者の承諾における法益関係的錯誤説と条件関係的錯誤説の対立 実行の着手時期における形式的客観説、従来の実質的客観説、新しい実質的客観説(危険性+密接性)の対立 原因において自由な行為 […]
従来から、労基法37条所定の方法以外の方法による割増賃金の支払の要件について、①通常の労働時間の賃金に当たる部分と労基法37条の定める割増賃金に当たる部分とを判別することができることと(これを「判別可能性」といいます。)、②割増賃金に当たる部分が労基法37条に基づく計算額以上であることの2点であり、①は②の判定可能性を担保する趣旨であると解されています(例えば、水町勇一郎「詳解 労働法」初版685頁)。 日本ケミカル事件判決(最判H30.7.19)は、「労働基準法37条…は、労働基準法37条等に定められた方法により算定された額を下回らない額の割増賃金を支払うことを義務付けるにとどまるものと解 […]
これは授業でも説明していることですが、違法事由に関する問題では必ず、①処分要件レベルのことと②効果レベル(主として効果裁量の有無、裁量権の逸脱濫用)のことに分けた上で、①処分要件については㋐実体的要件と㋑手続的要件の双方を確認します。 もっとも、だからといって常に①‐㋐、①‐㋑、②の全てについて言及するわけではありません。あくまでも問題分析をする際のチェックリストにすぎませんから、①‐㋐、①‐㋑、②のうち本問で問題になると判断したものだけを答案に書きます。 平成24年設問2では、「本件処分の通知書には、その理由として、「Aが、本市市長の確認を受けずに、下水道接続工事を行ったため。」と記載されて […]
刑法でも、論点つぶしになるような構成を選択しているという認識はありませんが、構成によってはいたずらに答案が複雑化することがあるので、こうした事態にはならないように配慮していることはあります。また、解答速報の段階では、理想的な構成に言及した上で、現実解も示すという意味で、敢えて構成を簡略化していることがあります(例えば、令和3年予備試験刑法の解答速報の後半部分など)。 現行の試験では、あり得る構成であれば、選択した構成ごとに配点が設けられていますから、ある構成を選択したことにより消滅する論点が生じたとしても、これにより失点するということにはなりません。仮に、問題文でもろに誘導されている論点が消滅 […]
現行の司法試験論文式は、平成18年から平成23年頃までの応用重視で癖が強い問題とは異なり、比較的オーソドックスな問題が多いです。また、総まくり講座では、司法試験の科目特性を意識した教材作成と授業をしていますので、総まくり講座だけでも司法試験過去問のエッセンスを多く学ぶことができます。 まずは総まくり講座のマーク箇所、論点の記憶を最優先しましょう。現行の司法試験論点式は、現場思考要素が少ない上に癖も強くないので、知識があれば解けますし、逆に知識がなければ解けません(現場思考での誤魔化しが効きにくいです。)。総まくり講座をちゃんと消化すれば、それだけである程度過去問は解けるようになります。 その上 […]
司法試験では、①原則として、司法試験が実施される日に施行されている法令に基づいて出題されることになっており、②司法試験六法に搭載される法令は、原則として、令和5年1月1日現在において、既に公布され、かつ、試験日以前に施行されることが確定しているものです。 改正民事訴訟法の全面施行は令和7年中であり、試験日以前に施行されることが確定している改正法は一部にとどまりますから、施行が令和7年中とされているオンライン送達などは、令和5年司法試験の出題範囲外であり、かつ、令和5年司法試験六法にも搭載されません。 以下は、法務省のウェブサイトにおける「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」で掲載されてい […]
基礎問題演習講座第17問は、敷金返還請求権の存在確認を求める訴えの確認の利益に関する問題です。 敷金返還請求権の存在確認を求める訴えは、明渡時に発生する具体的な敷金返還請求権を確認対象とする場合には、将来の権利又は法律関係を確認対象とすることになるため、原則として確認対象の適格性を欠くことになります。この場合、明渡時に発生する具体的な敷金返還請求権を確認対象としたほうが確認訴訟が有する紛争の直接かつ抜本的な解決の機能が果たされることになるのではないかという観点から、例外的に確認対象の適切性が認められるか否かを論じることになり、その際に、設問の誘導部分に言及することになります。 これに対し、条件 […]
特に会社法では、条文の文言が長いので、全部を引用するのではなく、重要部分に絞って文言を引用する工夫も必要です。 ざっくりとした基準になりますが、本文の事例処理で用いる条文の文言の本質部分についてはなるべく省略しないで引用し、それ以外は必要に応じて一部省略する形で引用してもかまわないと考えています。 個人的に、文言の一部を省略する際に「…」を用いる機会は少ないと思います。例えば、ある条文がA、B、C及びDという4つの要素から構成されている場合に、Aに対応する文言の前半と後半だけを引用して中間部分を省略するという場合くらいしか、「…」を用いる必要はないと思われるからです。前半又は後半だけを省略する […]
過度の広汎性の原則が問題となる事案でも、いきなり合憲限定解釈の可否から検討するのではなく、「合憲限定解釈をしない場合を前提とした過度の広汎性の有無」→「合憲限定解釈による過度の広汎性の払拭の可否」という流れで検討することになります。 そして、過度の広汎性の原則の場合も、合憲限定解釈をする際には、明確性の原則の場合における合憲限定解釈と同じ要件が適用されます。つまり、①解釈の結果が規定中の合憲的適用部分と違憲的適用部分を明確に切り分けるものであることと、②一般国民の理解において①の解釈の結果を規定から読み取れることが必要となります。 もっとも、明確性の原則と過度の広汎性の原則とでは、問題意識が異 […]
善意者からの背信的悪意者も「第三者」(177条)に当たるかという論点は、1⃣転得者である背信的悪意者から第一譲受人に対して物権的請求をする場面と、2⃣善意の第二譲受人が登記未了である場面を念頭に置いた議論であり、3⃣善意の第二譲受人が移転登記を完了している場合に、第一譲受人が転得者に対して物権的請求をする場面を想定した議論ではないと思います。 ご指摘の通り、3⃣のケースでは、善意者からの背信的悪意者が「第三者」に当たるかという論点が問題となることなく、転得者による対抗要件具備による所有権喪失の抗弁(第二譲受人が移転登記を具備したことを理由とするもの)が認められ、第一譲受人の物権的請求が棄却され […]
当てはめでは、問題文の事実を答案に摘示し、それに対する評価を書くことになります。このように、当てはめは、問題文の事実の「摘示」とそれに対する「評価」から構成されています。したがって、事実を摘示するだけでは足りませんし、事実の摘示を飛ばしていきなり評価から書くこともできません。特に、司法試験の刑事系では、設問で「具体的事実を摘示しつつ論じなさい。」というように、事実の摘示について明確な指示があることが多いです。 答案に問題文中の事実を摘示する方法には、①問題文中の事実をほぼそのまま引用する方法と、②(大幅に)意味が変わらない範囲で要約して摘示する方法とがあります。 特に司法試験では、問題文が長い […]
違憲審査基準の定立過程で考慮し得る「制約の態様」の範囲については、予め厳密に決めることは困難です。類型的なものは違憲審査基準の定立過程で考慮し、具体性のあるものは手段必要性(場合によっては、手段相当性)で問題にするという、アバウトな棲み分けしかできないと思います。 例えば、違憲審査基準の定立過程で罰則の存在に言及することについて、令和2年司法試験(職業の自由を規制する法令)の採点実感では、「罰則があるので緩やかな基準を採れないという答案があったが、審査基準は権利に対する制約の態様、強さで定立されるべきである。罰則の有無は目的達成手段の審査において考慮されるべき事柄であると思われる。」と説明され […]
法令違憲審査の場面では、違憲審査基準の厳格度は、それと逆の相関の関係に立つ立法裁量を尊重する要請の度合いを明らかにすることにより決定され、当該法令に関する立法裁量を尊重する要請の度合いを判定する際の典型的な考慮要素が人権の性質(厳密には、重要性ではなく、重要性も含んだより広い概念としての「人権の性質」です。)と制約の態様(厳密には、制約の強度ではなく、制約の強度も含んだより広い概念としての「制約の態様」です。)です。 確かに、制約されている人権と相対する法益の重要性やその法益が侵害される危険性を理由として、人権の重要性が低いと評価して、違憲審査基準の厳格度を下げることはできません。要するに、保 […]
職業規制に関する違憲審査基準の定立過程では、制約の強度と制約の目的の2点を(主として)考慮するというのが一般的な理解です(例えば、「憲法論点教室」(第2版)154頁以下、「憲法判例の射程」(初版)135頁以下)。 確かに、令和2年司法試験の採点実感には、「2 違憲審査について (2)多くの答案は、審査基準を設定するに際し、①制約されている権利の重要性、②制約の強度、③制約の目的(消極目的か積極目的か)を検討した上で基準の設定を行っていたが、①から③までの検討と具体的な審査基準とのつながりが不明確な答案が少なくなかった。」との記述があります。 しかし、この記述は、職業規制である規制①と移動規制で […]
民法では、論点の数が多いため、問題演習経由で出題可能性のある論点を網羅することは不可能に近いです。 したがって、短文事例問題及び過去問によって重要論点について答案形式でしっかりと勉強する一方で、それ以外の論点については論証集をはじめとするインプット教材に典型事例をメモする(論点によっては、法律関係図、論述の流れもメモするのが望ましいです)という方法が確実かつ効率的であるといえます。典型事例をメモする際には、判例がある論点ついては、判例百選で事案や判旨を「典型事例を確認するために必要な限度で」チェックするのが望ましいです。私も受験生の頃にこうした勉強法をとっていました。 参考にして頂けますと幸い […]

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年 新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
答案を書くための 行政法集中演習」
(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
25年」行政法(法学書院)