質問コーナー「 民事訴訟法 」
5件の質問

個別的な質問で大変恐縮です。先生のご説明を見ても納得ができていない状況です。 H30司法試験民事系第3問設問3のうち(イ)の補助参加の利益についての質問です。 交通事故の被害者Aの共同加害者BCに対する損害賠償請求訴訟においてBに対する請求は一部認容、Cに対する請求は棄却との判決が出た事例で、BがAC間の訴訟に補助参加の利益を有するかが問題となっています。ここで、「AC間の訴訟の実体法上及び訴訟法上の効果がBC間には及ばない」(採点実感)以上、訴訟物限定説からは補助参加の利益を肯定できないとの説明がされています。しかし、BのCに対する求償権の先決問題としてAのCに対する債権の存在が必要となる以上、訴訟物限定説からも利益を肯定できませんか? 仮に「実体法及び訴訟法上の効果が...及ばない」場合には補助参加の利益が否定されるならば、これが肯定されるのは債権者代位訴訟などに極めて限定され、例えば債権者と保証人の間の訴訟において主債務者に訴訟告知をしても参加的効力が生じないとの結論になるように見受けられます。 自分の考えとしては、「訴訟物たる権利関係に法律上の利害関係を有する場合」に補助参加の利益を肯定すると考えるならば訴訟物たる権利関係が参加人と被参加人の間の法律関係の先決関係になれば補助参加の利益を肯定できると考えていました。

元ネタとなっている昭和51年判決(最判S51.3.30)は、①AがBCを共同被告として訴訟提起、②第1審では、Bに対する請求を認容、Cに対する請求を棄却、③BがAC間訴訟についてA側に補助参加する旨を申し出た、という事案において、訴訟物限定説の立場からは、AC間訴訟におけるCの損害賠償責任を否定する判決主文がBのCに対する求償権について事実上不利益な影響を及ぼすとして、判決主文による事実上の直接的影響を理由として、補助参加の利益を認めています。 「AC間の訴訟の実体法上及び訴訟法上の効果がBC間には及ばないということを指摘する必要がある。その上で、Bの補助参加の利益を肯定する場合には、そうであ […]

2023年06月21日

既判力の作用の有無(訴訟物どうしの関係)と既判力の主観的範囲(当事者どうしの関係)は、別次元の問題です。既判力が後訴に作用するが、後訴に作用する既判力は後訴の当事者には及ばない(拡張されない)という結論はあり得ます。 平成28年司法試験設問3は、権利能力なき社団Xが本件不動産についての総有権確認訴訟を抵当権設定登記名義人Yに対して提起するとともに、提訴非同調者たる構成員Zを被告に回しており、X勝訴判決が確定した後に、YがZを被告として抵当権の無効を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求訴訟を提起したという事案に関するものです。 課題②では既判力の作用及び既判力の遮断効が問われているところ、前 […]

2021年04月06日

XのYに対する土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求(第1訴訟)⇒建物退去明渡しを命ずる判決が確定⇒XのYに対する土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求(第2訴訟)という事案では、第2訴訟において、Xは強制執行の方法として建物収去を求めるための主張立証をし、Yは強制執行の方法を建物退去にとどめるための主張立証をすることになるという意味で、既判力に準ずる効力が生じている建物退去という強制執行の方法が第2訴訟で前提問題とされることになります。強制執行の方法についてXとYの主張立証が展開されるという意味で、前提問題であると理解しているので、請求原因か抗弁かという捉え方をする必要はないと思います。 そ […]

2021年01月10日

平成29年司法試験設問1の採点実感では、裁判所が当事者XYのいずれからも主張されていない「AがYの代理人としてXと売買契約を締結したという事実」という主要事実を判決の基礎にすることの可否が問われている問題について(※この事実が本当に主要事実なのかについては、こちらを参照)、①「一般的に、民事訴訟において、裁判の基礎となる資料の収集を当事者の責任とする原則(いわゆる弁論主義)が妥当」すること、②「その一環として、裁判所は当事者が主張しない事実を判決の基礎にしてはならないとの原則(いわゆる主張原則)が妥当する」こと、及び③「主張原則の対象となる事実は少なくとも主要事実を含むと解されている」ことを「 […]

2020年09月10日

ご指摘の通りです。確かに、売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権という訴訟物との関係では、「AがYの代理人としてXと売買契約を締結したという事実」は、有権代理による請求原因事実(AX間の売買契約の締結、Aの顕名、YからAに対する先立つ代理権授与)に直接該当する事実として主要事実に該当することになります。 しかし、設問1では、Xが売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権を追加するための訴えの追加的変更をしていません。そうすると、旧訴訟物理論を前提にすると、本件訴えにおける訴訟物は贈与契約に基づく本件絵画の引渡請求権だけとなります。贈与契約に基づく本件絵画の引渡し請求権という訴訟物における請求原因事実は […]

2020年09月10日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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