質問コーナー「
刑事訴訟法 」
15件の質問
【別紙1】の直接の立証事項たる要証事実は、「調書記載の再現通りの犯罪事実」です。したがって、【別紙1】は直接証拠です。他方で、【別紙2】は、実質証拠ではなく、直接証拠である【別紙1】の信用性を基礎づける補助事実を証明するための補助証拠です。 そうすると、【別紙1】が証拠能力を欠く場合、【別紙1】から独立した証拠価値を持たない【別紙2】の証拠能力を論じる実益はないです。もっとも、司法試験ではそのように考えるべきではなく、【別紙1】の証拠能力の有無にかかわらず、【別紙2】の証拠能力についても検討しましょう。因みに、【別紙1】の証拠能力の肯否と【別紙2】の証拠能力の肯否は別次元のことですから、【別紙 […]
拳銃譲渡に関する甲乙間の会話の使い方としては、①要証事実を甲乙間の会話の内容の真実性を前提としたものにする(甲乙間の会話の内容たる事実を要証事実とする)、②甲乙間でそのような内容の会話がなされたことを要証事実とする、③甲乙間で何らかの会話がなされたことを要証事実とする、という3パターンが想定されます。 ①は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲と乙が拳銃譲渡の合意をした」という主要事実を直接に証明するというものです(直接証拠型)。この場合、要証事実との関係で甲乙の会話の内容の真実性が問題となるため、伝聞証拠です。 ②は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話 […]
まず、①不任意自白の派生的証拠の証拠能力については、初めに自白法則について検討するべきです。虚偽排除説に立つのであれば、ご指摘の通り、自白法則により甲の自白の証拠能力が否定されるからといって当然に甲の自白の獲得手続(先行手続)が違法と評価されるわけではありませんから、派生的証拠について違法収集証拠排除法則の枠組みで論じるのであれば甲の自白の獲得手続が違法と評価されることを別途指摘する必要があります。 次に、②派生的証拠について違法収集証拠排除法則の枠組みで論じる場合、㋐第一次証拠・派生証拠の双方について違法性承継論で一元的に処理する見解(古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版418頁)、㋑第一次 […]
①現行犯逮捕の適法性を検討し、違法であると結論付けた後に、②違法逮捕後の再逮捕(総まくり47頁[論点4])として緊急逮捕の可否を検討します。②において、現行犯逮捕の時点で緊急逮捕の実体的要件を満たしていたと評価される場合には、緊急逮捕は再逮捕であることを理由として否定されることにはなりません。あとは、③緊急逮捕の時点で緊急逮捕の要件を充足するかを軽く検討し、これを満たすとの結論になったのであれば、緊急逮捕は適法であるといえますから、勾留請求は逮捕前置主義の要請を満たすことになります。したがって、④違法逮捕後の勾留請求の可否(総まくり50頁[論点8])は顕在化しません。これが、2006.No.3 […]
令和1年司法試験設問1でいう「逮捕、勾留及びこれに引き続く・・身体拘束」とは、逮捕・勾留(延長後の勾留を含む)及びそれに基づく身体拘束(逮捕、勾留、延長後の勾留という理解でも構いません)を意味しますから、逮捕・勾留とは区別される「取調べ」を含みません。したがって、究極的に問われていることは、「逮捕・勾留(延長後の勾留を含む)及びそれに基づく身体拘束の適法性」であり、「余罪取調べの適法性」は「逮捕・勾留(延長後の勾留を含む)及びそれに基づく身体拘束の適法性」に影響をし得る限度で問題とし得るにとどまります。 だからこそ、令和1年司法試験刑事訴訟法設問1に関する採点実感では、「逮捕・勾留中の被疑者の […]
川出敏裕「判例講座 刑事訴処方 捜査・証拠篇」初版210頁・224頁によれば、接見指定制度の趣旨が接見交通権と捜査の利益の調整にあることから、接見指定の内容が「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」か否かは、①「申出がなされた接見の重要性と、即時又は近接した時点での接見を認めた場合の捜査への支障の程度の双方を考慮し」て判断するべきであるとされています。通常の事案であれば、①の比較衡量の判断枠組みを書き、当てはめに入ります。 もっとも、初回接見の指定の場合については、最三小判平成12・3・24・百34が、①の比較衡量において、初回接見の重要性を強調することで、②「即時又は […]
確かに、理論上は、本件領収書(間接証拠)⇒甲の本件領収書交付時の心理状態(間接事実)⇒詐欺の故意(主要事実)という推認過程も、経験則に適った合理的なものとして成り立ち得るものです。 しかし、要証事実を設定する際に前提とする推認過程(当該証拠から主要事実を証明するための推論の過程)は、原則として、当該証拠の取調べ請求をした当事者が示した立証趣旨に従って考えることになります。これが、原則ルールです(最二小決平成17・9・27・百83)。「立証趣旨を前提とした推認過程ではおよそ証拠として無意味になる場合には立証趣旨に従わないで推認過程を組み直し、組み直した推認過程を前提として要証事実を設定することが […]
平成30年司法試験設問2の採点実感では、本件メモについて、「本件メモについて、まず、本事例で明示された立証趣旨を踏まえつつ、伝聞証拠該当性を論述する必要がある。本件メモは、Vが犯行時に犯人(被告人甲)から聞いたとする欺罔文言を自ら記載した書面(被害状況を記載した供述書)であり、その立証趣旨は、「甲が、平成30年1月10日、Vに対し、本件メモに記載された内容の文言を申し向けたこと」である。そこでは、Vが記載したとおりに、犯人(被告人甲)がVに対して本件メモに記載された内容の文言を言ったことが立証の対象となる(Vの供述の内容の真実性が問題となる)から、本件メモは伝聞証拠に当たる。この点を理解し、適 […]
仮に、本問における任意同行後の取調べの適法性が限界事例問題に属するのであれば、①「強制の処分」該当性を肯定した場合と②「強制処分」該当性を否定した場合の双方を想定した採点表になっているはずです。例えば、配点30点なら、①では「強制の処分」該当性に30点、②では「強制の処分」該当性に10点・任意取調べの限界に20点、という感じです(配点割合等は、あくまでも例にすぎません)。この場合、結論を導く過程が大事なのであり、結論自体はいずれでも構いません。 これに対し、出題者が「強制の処分」該当性を肯定する答案を想定していない事案(該当しないことが明らかである事案)では、「強制の処分」該当性を否定した場合 […]
平成24年司法試験設問1のように、逮捕現場である建造物内でそこに設置されたロッカーを無令状捜索したという場合には、「逮捕の現場」要件は、①捜索実施主体である捜査官が実在する場所に関する問題(建造物のどこで捜索を実施したかという問題)とともに、②捜索をしたロッカーも「逮捕の現場」に含まれるかという問題として論じられることになります。つまり、①無令状捜索を実施する捜査官は逮捕の場所と同一管理権が及ぶ空間にいなければならないことに加え、②同一管理権が及ぶ空間にあるロッカーも同一管理権が及ぶものでなければならない、ということです。これに対し、建造物内に置かれている物を拾って捜索したというのであれば、① […]
領収書であっても、323条3号に該当することがありますし(川出敏裕「判例講座 刑事訴訟法 捜査・証拠篇」初版406頁)、領収書の323条2号・3号該当性について学説・裁判例があることからしても、仮に323条2号・3号該当性が否定される場合であっても、同号該当性が窺われる事案では、323条2号・3号該当性から検討し、これを否定した上で322条(被告人作成)又は321条1項3号(被害者・第三者作成)の該当性の検討に入るべきです。例えば、平成20年司法試験設問2では、被告人の元交際相手がある程度の継続性・規則性をもって作成した私的日記について、323条3号✖⇒321条1項3号という流れで検討する […]
平成30年司法試験設問2の採点実感では、本件メモについて、「「内容の真実性が問題となる」という表現の意味をなお正確に理解できていないため、本件メモの全体を非伝聞証拠とした答案も少数ながら見られた。本件メモによる立証の対象には、甲が発言したとおりにV宅の耐震金具に不具合があることなど(Vが記載した甲の発言の内容の真実性)は含まれていないが、そのことは、Vの供述を記載したものとしての本件メモの伝聞証拠該当性を否定するものではない。他方、甲の発言の真実性が問題となるとして、再伝聞証拠とする答案も散見されたが、これも、「内容の真実性が問題となる」との表現の意味及び本件メモによる立証の対象を正しく理解し […]
要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題になるかどうかは、書面については、それが作成者の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成されたものであるかどうかではなく、要証事実が作成者において知覚・記憶した上で紙に表現・叙述した事実であるかどうかにより判断されます。 例えば、㋐被告事件はA・B2名の共謀によるVに対する住居侵入窃盗、A・Bはいずれも犯行関与を否認している、㋑Aの自宅から本件住居侵入窃盗の犯行態様を符合する記載のあるメモ用紙が発見され、本件メモ用紙の記載はBの筆跡であることが判明した、㋒本件メモ用紙の記載は本件住居侵入の犯行態様と偶然とはいえないほど細部にわたって一致している、㋓検察 […]
例えば、T社事務所を捜索場所とする捜索令状であれば、T社事務所内の物がT社事務所という「場所」に包摂されるというためには、当該物にT社事務所に帰属するT社の管理権が及んでいる必要があります。もっとも、T社の管理権を現実に行使している(担っている)のは社長甲ですから、「当該物にT社事務所に帰属するT社の管理権が及んでいるか」の判断では、代表者甲がT社の社長として当該物を管理している(管理権を及ぼしている)のかを問題とすることになります。 なお、社長甲には、①甲個人という地位と、②T社社長という地位の2つがありますから、厳密には、甲が管理していることをもってT社の管理権が及んでいると認定するには、 […]
確かに、乙の犯行関与を認めることを内容とする甲の供述調書(検面調書・員面調書)には、これと矛盾する乙の犯行関与を否認する乙の供述の信用性を減殺する力が認められる余地があります。しかし、この場合、乙の犯行関与に関する他者の矛盾供述を乙の否認供述の信用性を弾劾するために使うことになりますから、328条の「証拠」を自己矛盾供述に限定する判例の立場(最三小判平成18・11・7・百87)からは、328条の適用は認められません。甲の供述調書を乙の否認供述の信用性を減殺するための弾劾証拠として使用する場合には、甲の公判廷外供述の内容たる事実(乙が犯行に関与した事実)が真実であることを前提とすることになります […]

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年 新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
答案を書くための 行政法集中演習」
(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
25年」行政法(法学書院)