質問コーナー「 刑法 」
6件の質問

まず、本件帳簿は、税務署により税務調査に基づき収集・保管されている文書ではありませんから、「公務所の用に供する文書」に当たらないと思います。警察が捜査のために保管している私文書は公用文書等毀棄罪の客体に当たる解されており、また収税官史が差し押さえた帳簿が本罪の客体に当たるとした判例もありますが(高橋則夫「刑法各論」第3版445頁)、警察や税務署により収集・保管されていないどころか収集・保管の対象として特定すらされていない文書は、本罪の客体に当たらないと思います。仮に当たるとなると、例えば、犯罪捜査で差押対象となる予定である文書がことごとく本罪の客体になってしまいます。 次に、仮に本件帳簿が本罪 […]

2021年09月23日

令和3年司法試験設問1は、甲と丙とが①窃盗罪又は業務上横領罪と②①の隠ぺいするための狂言強盗について意思連絡をした後で、乙と丙が③強盗について意思連絡をし、その後、甲と乙が①窃盗罪又は業務上横領罪を実現した(いずれの犯罪が成立するかは、本件バッグの占有が丙に帰属していたかによる)という事案に関するものです。 本件バッグの占有が丙に帰属していると認定する場合、甲と丙とは、業務上横領罪の共謀に基づいて、業務上横領罪を実行したことになりますから、丙には業務上横領罪の共同正犯が成立し、甲には単純横領罪の共同正犯(※判例の立場からは業務上横領罪の共同正犯)が成立します。 乙については、共謀共同正犯の成立 […]

2021年08月07日

賄賂罪の成否は、単純収賄罪(197条1項前段)であれば、①「公務員」(身分)→②「賄賂」(客体)→③職務関連性(「その職務に関し」)→④「収受」等(実行行為)→⑤故意・職務執行意思、という流れ検討します。 ②「賄賂」の要件は、㋐人の需要・欲望を満たすに足りる一切の利益、㋑公務員の職務行為との間で対価関係を有することの2つからなります。具体的職務権限に属しない行為、密接関連行為、違法・不正な行為、過去の職務、転職前の職務又は将来の職務といった形で④職務執行性が論点になる場合には、②の㋑で④の先取りをすることにならないよう、公務員の”何らかの職務”との間で対価関係があること […]

2021年04月08日

共謀の射程について、「共謀の因果性=共謀の危険の現実化」と理解して論じても構いませんし、事案によってはそのほうが論じやすいこともあります。 上記の理解は、現考査委員である橋爪隆教授の著書である「刑法総論の悩みどころ」(有斐閣)313頁以下で同書の立場として取り上げられています。 共謀と実行行為との間に、共謀なければ実行行為なしという条件関係レベルの繋がりがあるだけでは足りず、規範的見地より共謀の因果性が及ぶ範囲を絞り込むべきであるという考えであり、考えの根底にあることは実行行為・結果間における因果関係論と同じです。

2021年01月17日

不動産を客体とする詐欺罪については、①登記名義の移転により不動産の処分可能性を取得した場合には1項詐欺罪が成立し、②不動産の事実的支配を取得したにとどまる場合には、不動産の事実的支配の利益(居住の利益)を客体として2項詐欺罪が成立する、と理解されています(高橋各論310~311頁、山口各論246頁)。 移転罪における占有は事実的支配に限られているにもかかわらず、不動産の占有については、移転罪においても、事実的支配を内容とする占有ではなく、登記名義による法律的支配を内容とする占有として理解されているわけです。厳密には、「移転罪においては、不動産については、登記名義の保有をもって事実的支配ありとす […]

2020年12月25日

ご指摘の通り、刑法論文では、①犯罪の成否を検討する行為、成否を検討する罪名、論点、答案全体の構成(共犯事例、間接正犯事例で誰の罪責から検討するべきかなど)等を選択・決定する際の思考プロセス、②分野・論点ごとの書き方(共同正犯における抽象的事実の錯誤の処理の流、危険の現実化説の当てはめ方など)が重要であり、これは司法試験と予備試験とで共通することです。 井田良ほか「刑法事例演習教材」は、解説で理論面に重点が置かれている上、答案例もありませんから、①及び②を身につけるためには、あまりに役に立たないと思います。良質な答案例及び口頭解説がない限り、③事案と論点の対応関係(こうした事案でこの論点が顕在化 […]

2020年09月30日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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