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平成24年司法試験設問1のように、逮捕現場である建造物内でそこに設置されたロッカーを無令状捜索したという場合には、「逮捕の現場」要件は、①捜索実施主体である捜査官が実在する場所に関する問題(建造物のどこで捜索を実施したかという問題)とともに、②捜索をしたロッカーも「逮捕の現場」に含まれるかという問題として論じられることになります。つまり、①無令状捜索を実施する捜査官は逮捕の場所と同一管理権が及ぶ空間にいなければならないことに加え、②同一管理権が及ぶ空間にあるロッカーも同一管理権が及ぶものでなければならない、ということです。これに対し、建造物内に置かれている物を拾って捜索したというのであれば、① […]
捜査の継続時間(例えば、録音・録画の時間)については、当該捜査の性質に照らして想定されているものであれば類型的判断において考慮することができるが、結果的にこれくらい継続したという個別事案における結果にすぎないものであれば類型的判断において考慮することはできない、というのが正確な理解であると思います。 もっとも、会話の秘密録音が問題となった平成27年司法試験設問1に関する出題趣旨では、「【捜査②】は、通常の人の聴覚では室外から聞き取ることのできない乙方居室内の音声を、本件機器を用いて増幅することにより隣室から聞き取り可能とした上で、これを約10時間にわたり聴取・録音するというものであり、外部から […]
領収書であっても、323条3号に該当することがありますし(川出敏裕「判例講座 刑事訴訟法 捜査・証拠篇」初版406頁)、領収書の323条2号・3号該当性について学説・裁判例があることからしても、仮に323条2号・3号該当性が否定される場合であっても、同号該当性が窺われる事案では、323条2号・3号該当性から検討し、これを否定した上で322条(被告人作成)又は321条1項3号(被害者・第三者作成)の該当性の検討に入るべきです。例えば、平成20年司法試験設問2では、被告人の元交際相手がある程度の継続性・規則性をもって作成した私的日記について、323条3号✖⇒321条1項3号という流れで検討する […]
平成30年司法試験設問2の採点実感では、本件メモについて、「「内容の真実性が問題となる」という表現の意味をなお正確に理解できていないため、本件メモの全体を非伝聞証拠とした答案も少数ながら見られた。本件メモによる立証の対象には、甲が発言したとおりにV宅の耐震金具に不具合があることなど(Vが記載した甲の発言の内容の真実性)は含まれていないが、そのことは、Vの供述を記載したものとしての本件メモの伝聞証拠該当性を否定するものではない。他方、甲の発言の真実性が問題となるとして、再伝聞証拠とする答案も散見されたが、これも、「内容の真実性が問題となる」との表現の意味及び本件メモによる立証の対象を正しく理解し […]
現行犯逮捕の犯人明白性の認定過程において禁止される供述証拠の使い方は、例えば、「甲がVを刺すところを見た」旨の目撃者Wの供述からダイレクトに甲の犯人明白性を認定するというものです。つまり、W供述を直接証拠として使うことはできません。 許容される使い方は、「犯人は~という特徴でした」という目撃者Wの供述(犯人の特徴に関する供述)により、逮捕者が直接認識した被疑者の特徴(逮捕者が直接認識した客観的状況)に、「犯人の特徴とこれくらい一致している」という意味を与えるというものです。逮捕者が直接認識しているのは被疑者の特徴だけですから、これだけでは、被疑者と犯人を結び付けることができません。そこで、逮捕 […]
要証事実を考える際に、①供述の存在自体又は供述者の供述時の心理状態を要証事実にすることで非伝聞とすることができるかから検討し、そのような推認過程を前提にすると「伝聞法則の趣旨に抵触する」又は「証拠としておよそ意味を持たない」ことになるのであれば、②次に、供述の内容たる事実を要証事実にすることで伝聞とするという流れで考えるのは、思考順序の1つとしてはあり得るかもしれません。 もっとも、検察官請求証拠をどのように使って主要事実を証明するのか(=いかなる推認過程を前提として検察官請求証拠の要証事実を設定するのか)については、第一次的には検察官の立証趣旨に従って判断されます(最二小決平成17・9・27 […]
要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題になるかどうかは、書面については、それが作成者の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成されたものであるかどうかではなく、要証事実が作成者において知覚・記憶した上で紙に表現・叙述した事実であるかどうかにより判断されます。 例えば、㋐被告事件はA・B2名の共謀によるVに対する住居侵入窃盗、A・Bはいずれも犯行関与を否認している、㋑Aの自宅から本件住居侵入窃盗の犯行態様を符合する記載のあるメモ用紙が発見され、本件メモ用紙の記載はBの筆跡であることが判明した、㋒本件メモ用紙の記載は本件住居侵入の犯行態様と偶然とはいえないほど細部にわたって一致している、㋓検察 […]
最一小判昭和51・11・18・百21は、「本件・・恐喝被疑事件が暴力団であるO組に所属し又はこれと親交のある被疑者らによりその事実を背景として行われたというものであること」を考慮することで、捜索差押許可状における「本件に関係のある・・暴力団を標章する状、バッチ、メモ等」という記載について、「O組の性格、被疑者らと同組との関係、事件の組織的背景などを解明するために必要な証拠として掲げられたものであることが、十分に認められる。」として背景事情に関する証拠まで含む形で広く解釈しています。そのため、事件の背景事情がさほど意味を持たない事案であれば、「本件に関係のある」について背景事情に関する証拠を含む […]
伝聞・非伝聞の区別を検討する過程では、立証趣旨に従って、当該証拠(書面等)をいかなる主要事実を証明するために(=証拠と主要事実の対応関係)どう使うのか(推認過程)を確定することで、当該推認過程における証拠の直接の立証事項を要証事実として把握することになります。もっとも、要証事実を設定する際に前提とする推認過程は、経験則に適った合理的なものでなければいけません。ここでは、信用性テストを経ない供述証拠による不確かな推認による事実認定の誤りを防止するという伝聞法則の趣旨(これは、証拠⇒事実という証明の過程に関するもの)が、要証事実設定のために推認過程を組み立てる場面(事実⇒事実という推認の過程)にも […]
ご質問中のASKの回答(現:質問コーナーに反映済み)は、「甲がVを刺した」旨のWの公判廷外供述(供述調書等)について、要証事実(=直接の立証事項)を「甲がVを刺した」旨のWの供述が存在すること(=間接事実)と捉え、Wの供述の存在自体(=間接事実)から存在するWの供述の内容通りに甲がVを刺したという主要事実を推認するという形で、非伝聞として使用することは、信用性テストを経ない供述証拠による不確かな推認による事実認定の誤りを防止するという伝聞法則の趣旨に抵触するため、許されないというものです(詳細は、こちら)。 公判廷外供述(証拠)から供述の存在自体という間接事実を直接立証し、立証された供述の存在 […]
先行する手続に重大な違法が認められる一方で直接の証拠収集手続には重大な違法が認められないという事案における第一次証拠の証拠能力の判断方法には、①違法性承継論で処理する見解(最二小判昭和61・4・25・百91)と、②先行手続に重大な違法があることを前提に、先行手続と第一次証拠との間に将来の違法捜査抑止の観点からの証拠排除の相当性を肯定できるだけの関連性があるかどうかを検討する川出説(川出敏裕「判例講座刑事訴訟法 捜査・証拠篇」初版462頁)とがあります。なお、大津事件のように、先行手続に重大な違法が認められる一方で直接の証拠収集手続には重大な違法が認められない事案において、第一次証拠に基づいて […]
令状捜索の要件と条文の文言の対応関係については、学者の先生方により整理の仕方が異なります。 川出敏裕「判例講座刑事訴訟法 捜査・証拠篇」初版114~115頁では、令状捜索の実体的要件を①捜索の理由(㋐特定の被疑事件の嫌疑の存在、㋑捜索対象に差押目的物が存在する蓋然性)及び②捜索の必要性(㋒狭義の必要性の存在、㋓狭義の必要性と被処分者の不利益の均衡)に整理した上で、いずれも憲法35条1項の「正当な理由」に対応する要件であるとしています。その上で、②は憲法35条1項を前提とした刑事訴訟法218条1項における「犯罪を捜査するについて必要があるとき」にも対応するとしています。 宇藤崇ほか「リーガルク […]
例えば、T社事務所を捜索場所とする捜索令状であれば、T社事務所内の物がT社事務所という「場所」に包摂されるというためには、当該物にT社事務所に帰属するT社の管理権が及んでいる必要があります。もっとも、T社の管理権を現実に行使している(担っている)のは社長甲ですから、「当該物にT社事務所に帰属するT社の管理権が及んでいるか」の判断では、代表者甲がT社の社長として当該物を管理している(管理権を及ぼしている)のかを問題とすることになります。 なお、社長甲には、①甲個人という地位と、②T社社長という地位の2つがありますから、厳密には、甲が管理していることをもってT社の管理権が及んでいると認定するには、 […]
上記の理解で問題ありません。 まず、別件逮捕・勾留の適法性については、本件基準説・別件基準説・実体喪失説のいずれを採用する場合であっても、別件について逮捕・勾留の要件を満たすかどうかから検討することになります。本件基準説・実体喪失説も、別件について逮捕・勾留の要件を満たしていることが適法性の十分条件ではないとするだけであり、別件について逮捕・勾留の要件を満たすことは適法性の必要条件です。別件について逮捕・勾留の要件を満たす場合に初めて、本件基準説・実体喪失説に固有の判断基準が発動することになります。令和1年司法試験設問1の採点実感でも、本件基準説について「本件基準説の考え方は、逮捕・勾留の要件 […]
確かに、乙の犯行関与を認めることを内容とする甲の供述調書(検面調書・員面調書)には、これと矛盾する乙の犯行関与を否認する乙の供述の信用性を減殺する力が認められる余地があります。しかし、この場合、乙の犯行関与に関する他者の矛盾供述を乙の否認供述の信用性を弾劾するために使うことになりますから、328条の「証拠」を自己矛盾供述に限定する判例の立場(最三小判平成18・11・7・百87)からは、328条の適用は認められません。甲の供述調書を乙の否認供述の信用性を減殺するための弾劾証拠として使用する場合には、甲の公判廷外供述の内容たる事実(乙が犯行に関与した事実)が真実であることを前提とすることになります […]
要件充足性に属する論点については、条文の文言又はその解釈により導かれる要件(条文の文言に対応する要件)に引き付けて論じることになります。例えば、実行共同正犯の成立要件に属する論点については、実行共同正犯における「二人以上共同して犯罪を実行した」(文言)=「共謀+共謀に基づく実行行為」(条文の文言に対応する要件)と整理するのであれば、「共謀」又は「共謀に基づく実行行為」のいずれかに引き付けることになります。 もっとも、論点には、要件充足性に属するものだけでなく、要件を充足した場合の法律効果の内容に属するものもあります。法律効果の内容に属する論点については、条文の文言に引き付けることも可能ではある […]
最一小決平成18・2・14日(平成18年度重要判例解説・事件7)は、窃取したクレジットカードの名義人氏名等を冒用してこれらをクレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力送信して電子マネーの利用権を取得した行為について、「被告人は、本件クレジットカードの名義人による電子マネーの購入申込みがないにもかかわらず、本件電子計算機に同カードに係る番号等を入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え・・た」として、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めています。本判決については、クレジットカードの名義人と利用者の同一性が1項詐欺罪における法益関係的錯誤の対象事項(交付の判 […]
判例は、公務執行妨害罪における「公務」について、「ひろく公務員が取り扱う各種各様の事務のすべてが含まれる」と解しています(最一小判昭和53・6・29)。他方で、判例は、威力業務妨害罪における「業務」について、強制力を行使する権力的公務以外の公務が含まれると解しています(最一小決昭和62・3・12)。そうすると、強制力を行使する権力的公務以外の公務については、公務執行妨害罪と威力業務妨害罪の双方で保護されます。したがって、行為者が権力的公務以外の公務に従事する公務員に対して「暴行又は脅迫」を行い、これが「威力」にも当たるという場合には、公務執行妨害罪と威力業務妨害罪の二罪が成立し、科刑上、観念的 […]
確かに、判例は、Eのように適法な選任手続を経ない登記簿上の取締役について、「その不実の登記事項が株式会社の取締役への就任であり、かつ、その就任の登記につき取締役とされた本人が承諾を与えたのであれば、同人もまた不実の登記の出現に加功したものというべく、したがつて、同人に対する関係においても、当該事項の登記を申請した商人に対する関係におけると同様、善意の第三者を保護する必要があるから、同条の規定を類推適用して、取締役として就任の登記をされた当該本人も、同人に故意または過失があるかぎり、当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗することができないものと解するのを相当とする。」として、旧商法1 […]
信頼の原則において問題となる信頼は、他人が適切な行動に出ること(他人が不適切な行動にでないこと)に対する信頼です。典型的なのが、行為者の不注意と他人の法令違反行為(例えば、被害者の交通法規違反など)とが相まって結果発生をもたらした場合です(最二小判昭和42・10・13・百Ⅰ54)。また、医療事故事案であれば、医療従事者の不注意と他の医療従事者による院内ルール(患者の同一性の重複確認など)への違反とが相まって結果発生をもたらした場合にも信頼の原則が問題となります(最二小決平成19・3・26・「平成19年度重要判例解説」事件2)。 だいぶざっくりとした判断基準ではありますが、行為者の不注意と相まっ […]
加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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