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要証事実を設定する場合における答案の流れ

要証事実を設定する場合、①まず初めに、供述の存在自体又は供述者の供述時の心理状態を要証事実にすることで非伝聞とすることができるかから検討し、そのような要証事実の設定が許されないのであれば、②次に、供述の内容たる事実を要証事実にすることで伝聞とする、という流れで答案を書けばよろしいでしょうか。

要証事実を考える際に、①供述の存在自体又は供述者の供述時の心理状態を要証事実にすることで非伝聞とすることができるかから検討し、そのような推認過程を前提にすると「伝聞法則の趣旨に抵触する」又は「証拠としておよそ意味を持たない」ことになるのであれば、②次に、供述の内容たる事実を要証事実にすることで伝聞とするという流れで考えるのは、思考順序の1つとしてはあり得るかもしれません。

もっとも、検察官請求証拠をどのように使って主要事実を証明するのか(=いかなる推認過程を前提として検察官請求証拠の要証事実を設定するのか)については、第一次的には検察官の立証趣旨に従って判断されます(最二小決平成17・9・27・百83)。そのため、①⇒②という思考順序が意味を持つのは、㋐検察官の立証趣旨が主要事実を指している場合だけです(この場合、証拠から主要事実に至る推認過程については立証趣旨による縛りがないため)。

㋑検察官の立証趣旨が「本件メモの存在・記載」、「甲が本件メモを作成した時点における甲の意思・計画」というように、①の推認過程を前提としたものである場合には、「検察官請求証拠の要証事実は検察官の立証趣旨に従って判断する」という原則ルールと「立証趣旨を前提とした推認過程ではおよそ証拠として無意味になる場合には立証趣旨に従わないで推認過程を組み直し、組み直した推認過程を前提として要証事実を設定することができる」という例外ルールが適用される結果として、①の推認過程を前提とした要証事実の設定の可否から検討し、例外ルールの適用により検察官の立証趣旨を前提とした要証事実の設定ができない場合には、②の推認過程を前提として要証事実を設定する、ということになります(最二小決平成17・9・27・百83)。①⇒②という思考手順に従った結果として①⇒②という流れで検討しているのではなく、判例の原則ルール・例外ルールを適用した結果として、①⇒②という流れで検討しているだけである。

それから、㋒例えば、平成30年司法試験設問2における被害者の犯行内容に関する供述調書のように、①の推認過程を前提とした要証事実の設定がおよそ想定されていないような場合については、いきなり②から書いて構いませんし、むしろそうするべきです。

2020年09月14日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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