加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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「強制の処分」該当性の類型的判断において捜査の継続時間まで考慮することができるか

「強制の処分」該当性の判断では、類型的判断であるという性質上、個別事情を考慮することができないといわれていますが、平成27年司法試験設問1の会話録音における録音時間といった捜査の継続時間を考慮することも、個別事情を考慮するものとして類型的判断という性質に反することになるのでしょうか。

捜査の継続時間(例えば、録音・録画の時間)については、当該捜査の性質に照らして想定されているものであれば類型的判断において考慮することができるが、結果的にこれくらい継続したという個別事案における結果にすぎないものであれば類型的判断において考慮することはできない、というのが正確な理解であると思います。

もっとも、会話の秘密録音が問題となった平成27年司法試験設問1に関する出題趣旨では、「【捜査②】は、通常の人の聴覚では室外から聞き取ることのできない乙方居室内の音声を、本件機器を用いて増幅することにより隣室から聞き取り可能とした上で、これを約10時間にわたり聴取・録音するというものであり、外部から聞き取られることのない個人の私生活領域内における会話等の音声を乙の承諾なくして聴取・録音しているものであることから、乙の「住居」に対する捜索から保護されるべき個人のプライバシーと基本的に同様の権利の侵害が認められ、その侵害の程度も重いと評価できる。【捜査②】が強制処分か任意処分かの区別を検討するに当たっては、この点に関する具体的事実を考慮しつつ、丁寧な検討と説得的な論述をなすことが求められる。」(下線は私が付したもの)とあるように、捜査②の「強制の処分」該当性の判断において録音時間が10時間に及んだことにも言及することが求めているので、捜査の継続時間は強制処分該当性の判断で考慮するというのが司法試験対策として無難であると考えています。そもそも、これまでの出題趣旨・採点実感を読むと、司法試験委員会では、強制処分該当性の類型的判断ということ自体があまり重視されていないように思えます。類型的判断であることを気にしすぎた結果、「強制の処分」該当性の配点項目として掲げられている事実の一部を落とすことにならないようにするためにも、「強制の処分」該当性における類型的判断で考慮することができるかどうかを悩む事情が出てきたら、「強制の処分」該当性でも考慮したほうが良いです。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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