加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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平成30年司法試験設問設問2 本件領収書の伝聞例外としては、323条⇒321条1項3号という流れで検討するべきか

平成30年司法試験設問2の出題趣旨・採点実感では、本件領収書の伝聞例外として、323条2号・3号について一切言及がありません。「条解 刑事訴訟法」などでも被告人作成の書面であっても323条の要件を満たせば322条は適用されないとされていますし、平成20年司法試験設問1でも被告人の元交際相手が作成した日記の伝聞例外として323条3号⇒321条1項3号という流れで検討することが求められています。基本書等でも、領収書の323条2号・3号該当性に関する記述があります(原則として、該当性が否定されますが)ので、本件領収書についても323条2号・3号⇒322条という流れで検討するべきではないかと疑問に思いました。

領収書であっても、323条3号に該当することがありますし(川出敏裕「判例講座  刑事訴訟法  捜査・証拠篇」初版406頁)、領収書の323条2号・3号該当性について学説・裁判例があることからしても、仮に323条2号・3号該当性が否定される場合であっても、同号該当性が窺われる事案では、323条2号・3号該当性から検討し、これを否定した上で322条(被告人作成)又は321条1項3号(被害者・第三者作成)の該当性の検討に入るべきです。例えば、平成20年司法試験設問2では、被告人の元交際相手がある程度の継続性・規則性をもって作成した私的日記について、323条3号✖⇒321条1項3号という流れで検討することが求められています。

にもかかわらず、平成30年司法試験の出題趣旨・採点実感において本件領収書の伝聞例外として322条1項しか挙げられていないのは、ある程度の継続性・規則性をもって作成されているという事情がないため、323条2号・3号該当性を認める余地がない(同号該当性を窺わせる事情がない)からであると考えられます。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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