加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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平成27年司法試験設問2 人間の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成された書面であれば、要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題になるものとして伝聞証拠に当たるのか

平成27年司法試験設問2の出題趣旨・採点実感では、甲・乙・丙3名が、甲・乙・丙3名の共謀によるVに対する詐欺未遂を公訴事実として起訴され、甲・乙と丙の弁論が分離されたという事案において、検察官により乙丙間の共謀を立証するために証拠調べ請求された本件文書・本件メモのうち、本件メモについては、非伝聞になるとされています。本件メモについて、本件文書と異なり、伝聞証拠であるとされるのは、本件文書が乙が知覚・記憶を経ないで作成したものであるのに対し、本件メモが乙が丙による指示を知覚・記憶した上で作成したものだからでしょうか。

要証事実との関係で公判廷外供述の内容の真実性が問題になるかどうかは、書面については、それが作成者の知覚・記憶・表現・叙述を経て作成されたものであるかどうかではなく、要証事実が作成者において知覚・記憶した上で紙に表現・叙述した事実であるかどうかにより判断されます。

例えば、㋐被告事件はA・B2名の共謀によるVに対する住居侵入窃盗、A・Bはいずれも犯行関与を否認している、㋑Aの自宅から本件住居侵入窃盗の犯行態様を符合する記載のあるメモ用紙が発見され、本件メモ用紙の記載はBの筆跡であることが判明した、㋒本件メモ用紙の記載は本件住居侵入の犯行態様と偶然とはいえないほど細部にわたって一致している、㋓検察官がAB間の共謀を立証するために本件の取調べを請求したという事案では、本件メモ用紙の要証事実は、「そのような記載の本件メモ用紙が存在すること」という間接事実です。本件メモ用紙は、AとBが住居侵入窃盗の計画について話し合い、Bが話し合いの結果(話し合いにより決定された計画)をメモ用紙にメモしたものであると意味で、Bの知覚・記憶・表現・叙述を経て作成されています。にもかかわらず、要証事実との関係でB(さらにはA)の公判廷外供述の内容の真実性が問題にならないとして非伝聞であるとされるのは、本件メモ用紙の要証事実である「そのような記載のメモ用紙が存在すること」という間接事実がB(さらにはA)が知覚・記憶して本件メモ用紙に表現・叙述した事実ではないからです。

平成27年司法試験設問2における本件メモの要証事実は、「丙から乙に対してそこに記載されたような指示がなされたこと」という間接事実であり(平成27年司法試験・採点実感)、これは乙が丙から指示された内容を知覚・記憶した上で紙に表現・叙述した事実に当たります。だからこそ、要証事実との関係で乙の公判廷外供述の内容の真実性が問題になるとして伝聞証拠に当たることになります。

2020年09月14日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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