加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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平成24年司法試験設問1 建造物内でそこに設置されたローカーを無令状捜索する場合における「逮捕の現場」要件の機能

秒速・総まくり2020刑事訴訟法では、逮捕に伴う捜索・差押えの要件である「逮捕の現場」について、平成24年司法試験設問1のように捜索場所内に設置されているローカー等を確認する場合には、捜索の実施場所のみならず、捜索の実施客体をも含んだ要件として機能することになると説明されています。ここでいう実施客体とは、どういった意味で用いられているのでしょうか。

平成24年司法試験設問1のように、逮捕現場である建造物内でそこに設置されたロッカーを無令状捜索したという場合には、「逮捕の現場」要件は、①捜索実施主体である捜査官が実在する場所に関する問題(建造物のどこで捜索を実施したかという問題)とともに、②捜索をしたロッカーも「逮捕の現場」に含まれるかという問題として論じられることになります。つまり、①無令状捜索を実施する捜査官は逮捕の場所と同一管理権が及ぶ空間にいなければならないことに加え、②同一管理権が及ぶ空間にあるロッカーも同一管理権が及ぶものでなければならない、ということです。これに対し、建造物内に置かれている物を拾って捜索したというのであれば、①だけが問題になります。

②実施客体は、捜索対象という意味です。建造物内で、証拠物がないかどうかを探しているという行為は、「物」ではなく、建造物内という「場所」を対象とした捜索です(物を発見して、それを手に取って捜索したという段階で初めて、「物」を対象とする捜索に切り替わります。)。そして、「場所」を対象とする捜索では、捜索の実施主体が捜索対象である当該場所にいるため、捜索の客体(対象)という話は捜索の実施主体の所在を本来的な意味とする「逮捕の現場」という話に包摂されるため、①と別に②が問題になることはないということです。

2020年09月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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