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前訴で敗訴した前訴被告が前訴確定判決の不正取得を理由として不法行為に基づく損害賠償を求めて後訴を提起する場合について、後訴を制限する方法としては、①前訴確定判決の既判力が後訴に作用するとしたうえで、後訴における前訴被告の主張のうち前訴確定判決の主文中の内容と矛盾するものを排斥することで、請求を棄却するというものと、②前訴確定判決の既判力が後訴に作用することを否定しつつ、請求認容のために必要とされる請求原因として、㋐本来的要件(故意過失、権利利益侵害、損害、因果関係)に加え㋑「特別の事情」も要求する(請求原因を加重する)というものがあります。最高裁は②の立場であり、②・㋑について、勅使川原和彦「 […]
権利抗弁と事実抗弁の区別については、①権利抗弁は「権利者による訴訟上での権利行使の意思表示」を必要とするものであるとする見解(髙橋宏志「重点講義 民事訴訟法 上」第2版補訂版450~451頁、「民事訴訟法判例百選」事件51解説2(2))と、②権利抗弁は「権利者による権利行使の意思表示」を必要とするものであるとして、権利行使の意思表示の必要性を「訴訟上」におけるものに限定しない見解があります(和田吉弘「基礎からわかる民事訴訟法」初版263~264頁、三木浩一ほか「リーガルクエスト民事訴訟法」第3版225~226頁)。秒速・総まくり及び秒速・過去問攻略講座で採用している延期的・停止的抗弁権か永 […]
平成29年司法試験設問1の採点実感では、裁判所が当事者XYのいずれからも主張されていない「AがYの代理人としてXと売買契約を締結したという事実」という主要事実を判決の基礎にすることの可否が問われている問題について(※この事実が本当に主要事実なのかについては、こちらを参照)、①「一般的に、民事訴訟において、裁判の基礎となる資料の収集を当事者の責任とする原則(いわゆる弁論主義)が妥当」すること、②「その一環として、裁判所は当事者が主張しない事実を判決の基礎にしてはならないとの原則(いわゆる主張原則)が妥当する」こと、及び③「主張原則の対象となる事実は少なくとも主要事実を含むと解されている」ことを「 […]
平成25年民事訴訟法の採点実感では、「設問に対する解答を超えて」一般論を論じることについて、「特に評価の対象とはしない」とあり、場合によっては「得点に繋がらない上、丸暗記した論証パターンを無反省に書き散らかした答案として、印象も極めてよくない」とまで書かれています。もっとも、ここで想定されている「設問に対する解答を超え」た一般論について、過度に狭く捉えることにならないよう、気を付ける必要があります。①具体的検討(当てはめ)で使わない一般論と、②会話文で示されている問題意識から外れる一般論が、「設問に対する解答を超え」る一般論です。 平成25年司法試験設問1では、過去の法律関係を確認対象とする遺 […]
ご指摘の通りです。確かに、売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権という訴訟物との関係では、「AがYの代理人としてXと売買契約を締結したという事実」は、有権代理による請求原因事実(AX間の売買契約の締結、Aの顕名、YからAに対する先立つ代理権授与)に直接該当する事実として主要事実に該当することになります。 しかし、設問1では、Xが売買契約に基づく本件絵画の引渡請求権を追加するための訴えの追加的変更をしていません。そうすると、旧訴訟物理論を前提にすると、本件訴えにおける訴訟物は贈与契約に基づく本件絵画の引渡請求権だけとなります。贈与契約に基づく本件絵画の引渡し請求権という訴訟物における請求原因事実は […]
まず、請求異議の訴えに前訴確定判決の既判力が作用する形式的根拠として、確定判決についての請求異議の訴えについては、民事執行法35条2項の適用により、異議事由として主張することができることが前訴確定判決の「口頭弁論の終結後に生じたもの」に限られるため、前訴確定判決の既判力が作用することが前提にされているということが挙げられると考えられます。 次に、実質的根拠について、訴訟物どうしが同一関係にあると説明することも可能であると考えられます。請求異議の訴えの訴訟物については、複数の見解があり、現在は、給付判決についての請求異議の訴えについては、これが給付訴訟(前訴)の反対形相であるとして、その訴訟物を […]
平成25年司法試験設問4のように、問題文で既判力を飛ばして信義則を使って検討することが誘導されているといった事情がない限り、既判力から検討することになります。例えば、売買契約に基づく目的物引渡請求訴訟の判決確定後の代金支払請求訴訟における審理判断の制限が問題となった平成29年司法試験設問3に関する出題趣旨では、「本問では、既判力などの制度的効力を否定する場合には、既判力以外の理由、例えば信義則などにより、Xが本件絵画の売買契約の成否及びその代金額を後訴で争えなくなるか否かについて検討することも求められる。」と説明されています。したがって、仮に信義則で処理するのであれば、少なくとも、「既判力によ […]
確かに、「自己に不利益」について証明責任説を採用するならば、「事実」の範囲について、“少なくとも”証明責任を観念することができない間接事実と文書の成立の真正を除く補助事実は含まれないと解釈しないと、「自己に不利益」に関する解釈と「事実」の範囲に関する解釈とが整合しないと思います。逆に、「自己に不利益」について敗訴可能性説を採用するならば、「事実」の範囲について、間接事実・補助事実も含まれると解釈しないと、「自己に不利益」に関する解釈と「事実」の範囲に関する解釈とが整合しないと思います。 しかし、基本書では、「自己に不利益」に関する議論と、「事実」の範囲に関する議論は、連動させることなく、展開さ […]
最二小判平成10・6・12・百80は、外側説を採用したと理解されている最三小判平成6・11・22・百113を引用し(「民事訴訟法判例百選」第5版・事件80解説)、債務の消滅原因を相殺に限定することなく「一個の金銭債権の数量的一部請求・・の当否を判断するためには、おのずから債権の全部について審理判断することが必要になる。・・債権の一部の消滅が認められるときは債権の総額からこれを控除して・・」という外側説を前提とした抽象論(勅使川原和彦「読解 民事訴訟法」初版214頁参照)を述べているため、相殺以外の債務消滅原因についても外側説を採用していると思われます。そうすると、外側説・案分説・内側説の議論 […]
29条については、①同条に該当する団体には、訴訟上の当事者能力のみならず実体法上の権利能力も認められるとする見解(この見解によると、組合には、実体法上の権利能力に基づき団体固有の当事者適格が認められる)と、②同条に該当する団体には訴訟上の当事者能力しか認められず、実体法上の権利能力までは認められないとする見解(この見解によると、団体には訴訟担当者としての当事者適格が認められる)があります(伊藤眞「民事訴訟法」第6版125頁、髙橋宏志「重点講義 民事訴訟法 上」第2版補訂版188頁・12参照)。 ②の見解からは、団体には、構成員全員を権利義務主体とする訴訟担当者として当事者適格が認められるの […]
原告が訴えを提起し、訴状が被告に送達される前に被告として表示された者が死亡していた場合(被告側の死者名義訴訟)、被告を死者として確定する限りにおいては、①当事者の実在を欠くために訴え自体が不適法になる上、②訴状送達の無効により訴訟係属の発生も認められず、③判決も無効になるという理解が一般的であると思われます(伊藤眞「民事訴訟法」第6版118頁、和田吉弘「基礎から考える民事訴訟法」初版89頁)。その上で、④原告を救済するための法律構成としては、訴訟承継の規定(124条1項1号・2項)の類推を選択することになります(伊藤眞「民事訴訟法」第6版118頁、和田吉弘「基礎から考える民事訴訟法」初版89頁 […]
被冒用者の救済手段として再審の訴えを用いる場合、㋐再審事由の存否審理(346条1項、345条2項)⇒㋑存在すれば本案の再審理・裁判という流れを辿り(348条1項)、㋑の段階で原確定判決を不当とすれば、不服の主張の限度で原確定判決を取り消し原確定判決に代わる裁判をすることになります(348条3項)。再審請求に対する終局判決が確定すれば(なお、審級に応じた上訴可能。伊藤眞「民事訴訟法」第6版774頁)、終局判決通りの既判力が生じます。なお、原確定判決の既判力の消滅の効果が確定するのは、再審開始決定が確定した段階です(新堂幸司「新民事訴訟法」第5版948頁)。 これに対し、後訴で判決無効を主張する場 […]
髙橋美加ほか「会社法」第2版314~315頁によると、仮装払込みをめぐる法律関係のうち、株式及び株式発行の効力については、①株式未成立(不存在)とする見解、②株式は引受人の下で一応有効に成立するが、引受人又は悪意・重過失の譲受人の手許にある場合は株式発行の無効原因が認められるとする見解、③株式は引受人の下で有効に成立し、株式発行の無効原因もないとする見解があるとされています。また、伊藤靖史ほか「事例で考える会社法」第2版44~45頁では、㋐平成26年改正により新設された209条2項・3項が仮装払込みに係る株式について失権が生じずに成立することを前提にしているとの理由から、株式は(一応)成立する […]
仮に、本件事業譲渡は120条2項後段の推定規定の適用を介して利益供与に該当するのであれば、設問2では、「会社法上の問題点」として、①利益供与に当たる本件事業譲渡を可決する株主総会特別決議には決議内容の法令違反があるとして無効原因が認められるということを、適法な株主総会特別決議を経ない事業譲渡の効力という論点の前提として論じることになるとともに、②Q社に対する120条3項に基づく返還請求、取締役に対する120条4項に基づく支払請求、③利益供与という法令違反を理由とする任務懈怠に基づく損害賠償請求(423条1項)も論じることになります。 もっとも、問題文では、本件事業譲渡に至った事情として、「Q社 […]
例えば、甲社が、甲社取締役Aを株式引受人として有利発行をした場合(払込金額を時価10万円の1/2である5万円として、100株発行した場合)、形式的には、「株式会社」甲社の「取締役」Aが「自己・・のために」「株式会社」甲社と「取引」する場合として、直接利益相反取引(356条1項2号)に当たりそうです。 しかし、株式発行は経済的出捐を伴わない資金調達手段ですから、上記の有利発行では、時価1000万円の不動産を500万円で売却する廉価売買と異なり、会社が1000万円の経済的出捐を伴う一方でその対価として500万円しか利得することができないという利益状況にはなりません。 有利発行により経済的不利益を被 […]
例えば、甲社が、時価10万円の株式を、払込金額を1株10万円として合計1000株発行したところ、9000万円について払込みが仮装されたという事案では、払込みの効力について無効説に立ち、かつ、株式発行の効力について有効説に立つのであれば、甲社が時価10万円の株式1000株を1株当たりの払込金額1万円で発行したのと同じ利益状況になります。その分だけ、既存株主の株式の経済的価値が希釈されることになります。 しかし、199条3項の文言からしても、有利発行に当たるかは、事前に募集事項として定められた199条「第1項第2号の払込金額」と公正な発行価額とを比較して判断されることになります。そうすると、払込み […]
不公正発行の新株発行の無効原因該当性が問題となった平成19年・25年司法試験の出題趣旨・採点実感では、差止事由に関する210条2号は引用されておりません。もっとも、田中亘「会社法」第2版505頁では「著しく不公正な方法(210条2号参照)による新株発行であっても、新株発行の無効原因にはならないとする・・」、伊藤靖史ほか「事例で考える会社法」第2版276頁では「著しく不公正な方法による募集株式の発行(210条2号)は、判例によれば‥無効原因とならない・・」とあります。そのため、210条2号を引用・参照しても構いませんし、むしろ、そのほうが正確であるとも思えます。直接引用するのが不安であれば、田中 […]
先ほど、令和2年司法試験短答式試験の結果が発表されました(詳細はこちら)。 合格点93点 平均点109.1点(合格者平均点118.1点) 合格者2,793人 問題の難易、及び論文試験に選別機能を果たさせるためには短答不合格者数を抑える必要があることから、合格点は102~104点くらいと予想していましたが、それよりも10点ほど低い合格点となりました。 年々、思考・読解重視の問題が増えていることに伴い知識だけで解ける問題が減っていることと、マスク着用等による受験環境の悪さも、大きな原因になっているのではないかと思います。 短答式試験の合格者が2,793人なので、短答式試験合格後の競争率は2倍 […]
退任登記未了の登記簿上の取締役の対第三者責任が問題となった事案について、最一小判昭和62・4・16・百72は、①「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法・・266条ノ3第1項前段に基づく損害賠償責任を負わない」と述べた上で、②旧商法14条(現:会社法908条2項類推適用)に言及しています。 ①は、「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえて […]
まず、合併承認決議に著しく不当な対価による吸収合併が可決されたことを「著しく不当な決議」とする3号取消事由があることと、合併無効原因との関係についてです。3号取消事由が認められる場合、合併対価が著しく不当であること(=「著しく不当な決議」を基礎づける)に加え、「特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって」当該議案が可決されたというプラスアルファの事情も認められます。そうすると、合併承認決議に3号取消事由があることが合併無効原因に該当すると理解しても、合併対価が著しく不当であること自体を合併無効原因としていることにはなりませんから、合併対価が著しく不当であることが合併無効原因に該当し […]
加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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