加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

民事訴訟法で書くべき一般論の範囲/裁判上の自白に関する一般論についてどこまで論じるべきか

平成25年民事訴訟法の出題趣旨では、「設問に対する解答を超えて」一般論を論じることについて、「特に評価の対象とはしない」、「得点に繋がらない上、丸暗記した論証パターンを無反省に書き散らかした答案として、印象も極めてよくない」と書かれています。民事訴訟法における「設問に対する解答を超え」た一般論であるかどうかを判断するための目安みたいなものはありますでしょうか。例えば、裁判上の自白について、定義を書いてから「自己に不利益」や「事実」の範囲についても一般論を書くべきなのかについて、よく分かりません。

平成25年民事訴訟法の採点実感では、「設問に対する解答を超えて」一般論を論じることについて、「特に評価の対象とはしない」とあり、場合によっては「得点に繋がらない上、丸暗記した論証パターンを無反省に書き散らかした答案として、印象も極めてよくない」とまで書かれています。もっとも、ここで想定されている「設問に対する解答を超え」た一般論について、過度に狭く捉えることにならないよう、気を付ける必要があります。①具体的検討(当てはめ)で使わない一般論と、②会話文で示されている問題意識から外れる一般論が、「設問に対する解答を超え」る一般論です。

平成25年司法試験設問1では、過去の法律関係を確認対象とする遺言無効確認の訴えに確認の利益が認められるかが問われています。確認の利益は、確認対象の適否、方法選択の適否、及び即時確定の利益の3点から判断されるものですから、確認の利益が認められるという結論を導くのであれば、全ての要件を満たすことを認定する必要があります。これが大原則です。もっとも、民事訴訟法では、会話文で「何について、どういった観点から論じてほしいのかという」問題意識が示されることが多いです。その場合、会話文で示された問題意識に答えることが、「設問に対する解答」をするということになります。したがって、ある論点について、この観点から論じてほしいということが会話文で示されているのであれば、会話文で示された観点からだけ論じればいいということになります。平成25年司法試験設問1では、会話文で、「遺言無効確認の訴えは、遺言という過去にされた法律行為の効力の確認を求める訴えですが、確認の利益は認められるでしょうか。判例はありますか。」とあります。この会話文により、遺言無効確認の訴えの確認の利益について、「遺言という過去にされた法律行為の効力の確認を求める訴え」であるという点に着目して、確認対象の適否という観点から論じてほしいということが示されていることになります。そのため、確認対象の適否以外については配点がないということになります。だからこそ、出題趣旨では、「過去の法律関係の存否の確認を求める訴えが許されないという原則の根拠に関し、設問に対する解答を超えて確認の利益の一般論(対象選択の適否、手段としての適否等)を論じても、特に評価の対象とはしない」とされているわけです。他科目であれば、論点が顕在化しない要件も含めて全要件を網羅的に検討することが求められる傾向が強いですが、民事訴訟法では、「会話文で示された問題意識についてだけ答えればいいから、その代わり、正面から答えてほしい」というのが、司法試験委員会の要求です。

平成25年司法試験設問3(2)の採点実感では、弁論主義第1テーゼ違反だけが問われている問題について、「相変わらず、弁論主義の根拠、弁論主義の第2テーゼ、第3テーゼ、第1テーゼが間接事実には適用がないこと及びその理由(自由心証による事実認定を窮屈にする云々)まで長々と論じるものがあるが、やはり得点につながらない上、丸暗記した論証パターンを無反省に書き散らした答案として、印象も極めてよくない。」とされています。まず、設問3(2)では、弁論主義第1テーゼ違反だけが問われているのですから、「弁論主義の第2テーゼ、第3テーゼ」の定義等が具体的検討では使わないものとして「設問に対する解答を超え」た一般論に当たることは明らかです。次に、設問3(2)では、設問3(1)で「GがFからの相続による特定財産たる土地乙の所有権の取得を主張する場合に主張するべき請求原因事実たる主要事実」を書いていることを前提として、裁判所が当該請求原因事実を判決の基礎にすることが弁論主義第1テーゼとの関係で許されるかが問われているのですから、「裁判所が判決の基礎にすることの可否」が問われている事実が主要事実であるということは当然の前提です。そのため、弁論主義第1テーゼが適用される事実の範囲が主要事実に限定されるかという論点は顕在化しません(この論点が顕在化するのは、裁判所が判決の基礎にすることの可否が問われている事実が間接事実又は補助事実である場合です)。したがって、弁論主義第1テーゼが適用される事実の範囲については、「少なくとも主要事実を含むと解されている」とだけ書けば足ります(平成29年司法試験設問1に関する採点実感)。だからこそ、「第1テーゼが間接事実には適用がないこと及びその理由(自由心証による事実認定を窮屈にする云々)まで長々と論じる」ことも、「設問に対する解答を超え」た一般論に当たることになります。「弁論主義の根拠」については、「長々と論じる」ことがダメなのであって、書いても印象が悪くなることはないと思います(配点があるかどうかまでは分かりませんが)。

平成28年司法試験設問2では、第1訴訟に対する確認訴訟たる反訴の提起について、会話文で、㋐「検討をするに当たって1点確認をしておきたいのですが、本案の前提として判断される手続的事項については、独自の訴えの利益は認められないという考え方を聞いたことはありませんか。・・以上のことを踏まえた上で、・・訴えの利益が認められるという理由付けを具体的にまとめてみてください。」、及び㋑「反訴として提起するということですから,民事訴訟法第146条第1項所定の要件についての検討も念のために行っておいてください。」という2つの誘導があります。確認訴訟たる反訴の提起について、㋐の問題意識に従って確認の利益を検討することと、㋑146条1項所定の要件の充足性の2つを検討するようにと、論述の観点が限定されているわけです。だからこそ、採点実感では、「・・以上が本設問における問題意識に答える観点から検討すべき内容であるが、実際の答案では、確認の利益についての一般論を展開し、方法選択の適切性、対象選択の適切性、即時確定の利益の有無という3つの観点から分析を試みる答案が極めて多く見られた。もちろん、このような分析の手法の有用性は一般的には認められるところではあるが、本件においては、主たる検討課題は上記のとおりであり、このような多面的な分析を試み、あるいは、その典型的な解決方法に単純に当てはめることでは、昭和28年最判をめぐる問題の説明を図ることは困難であると考えられる。このような一般論が答案に記載されていても、結局、解答として意味がある記載と理解することができなければ、これを評価することはできないものであることを強調しておきたい。また、昭和28年最判との対比を求めているにもかかわらず、昭和28年最判に全く触れずに上記の3つの観点からの分析を行う答案も少なからず見られたが、問題文で示された問題意識に答えておらず、当然ながら低い評価にとどまらざるを得ない。」とされているわけです。

以上の3つの具体例を通じて、「設問に対する解答を超え」る一般論である①具体的検討(当てはめ)で使わない一般論と②会話文で示されている問題意識から外れる一般論について、イメージができたと思います。

最後に、裁判上の自白に関する一般論についてです。これについては、弁論主義第1テーゼの一般論に関する平成29年司法試験設問1の採点実感が参考になると思います。平成29年司法試験設問1の採点実感では、裁判所が当事者XYのいずれからも主張されていない「AがYの代理人としてXと売買契約を締結したという事実」という主要事実を判決の基礎にすることの可否が問われている問題について(※この事実が本当に主要事実なのかについては、こちらを参照)、㋐「一般的に、民事訴訟において、裁判の基礎となる資料の収集を当事者の責任とする原則(いわゆる弁論主義)が妥当」すること、㋑「その一環として、裁判所は当事者が主張しない事実を判決の基礎にしてはならないとの原則(いわゆる主張原則)が妥当する」こと、㋒「主張原則の対象となる事実は少なくとも主要事実を含むと解されている」ことを「論ずる必要がある」とする一方で、㋓間接事実には主張原則が妥当しないことと、㋔弁論主義第2テーゼ・第3テーゼについては言及する必要はないとされています。これを踏まえると、「証拠調べの要否」との関係で主要事実に関する裁判上の自白の成否が問われている問題であれば、㋐裁判上の自白には証明不要効が認められること(179条)、㋑裁判上の自白の定義、㋒ここでいう事実には少なくとも主要事実が含まれること、㋓自己に不利益な事実は相手方が証明責任を負う主要事実を意味することまでが、裁判上の自白に関する一般論として書くことが求められると思われます。他方で、㋔裁判上の自白の撤回禁止効・審判排除効まで書くことは求められないと思われます。

2020年09月10日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ