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退任登記未了の登記簿上の取締役に対第三者責任を負わせるための理論構成

429条1項に基づく損害賠償責任を追及する場合、辞任登記未了の登記簿上の取締役について、「辞任登記を申請しないで不実の登記を残存させることにつき明示的に承諾を与えていたなどの特段の事情」がないために908条2項類推適用が否定される場合、さらに、事実上の取締役の理論にも言及するべきでしょうか。

退任登記未了の登記簿上の取締役の対第三者責任が問題となった事案について、最一小判昭和62・4・16・百72は、①「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法・・266条ノ3第1項前段に基づく損害賠償責任を負わない」と述べた上で、②旧商法14条(現:会社法908条2項類推適用)に言及しています。

①は、「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合」には、事実上の取締役の理論の適用により、対第三者責任を負うというものです(「会社法判例百選」第3版・事件72解説)。なお、同解説では、①により事実上の取締役の理論を根拠として対第三者責任が肯定されるのは、退任登記未了の取締役が実質的経営者・所有者である場合に限定されるべきであるとされています。

以上を前提にすると、退任登記未了の登記簿上の取締役に対第三者責任を負わせるための理論構成としては、①事実上の取締役の理論(429条1項条類推適用)、②908条2項類推適用(その結果、「役員」とみなされ、429条1項が直接適用される)の2つが考えられます。検討過程における両者の先後関係については、②⇒①と考えるべきです。事実上の取締役の理論は、元々は取締役選任登記すらない者について論じられてきたものだからです。なので、②により対第三者責任が認められる場合には、①を検討する必要はありません。

2020年09月08日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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