加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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平成29年司法試験設問1 弁論主義第1テーゼに関する一般論についてどこまで書くべきか

平成29年司法試験設問1のように、当事者双方が主張していない主要事実との関係で弁論主義第1テーゼ違反が問われている事案では、弁論主義第1テーゼに関する一般論についてどこまで書くべきでしょうか。

平成29年司法試験設問1の採点実感では、裁判所が当事者XYのいずれからも主張されていない「AがYの代理人としてXと売買契約を締結したという事実」という主要事実を判決の基礎にすることの可否が問われている問題について(※この事実が本当に主要事実なのかについては、こちらを参照)、①「一般的に、民事訴訟において、裁判の基礎となる資料の収集を当事者の責任とする原則(いわゆる弁論主義)が妥当」すること、②「その一環として、裁判所は当事者が主張しない事実を判決の基礎にしてはならないとの原則(いわゆる主張原則)が妥当する」こと、及び③「主張原則の対象となる事実は少なくとも主要事実を含むと解されている」ことを「論ずる必要がある」とする一方で、④間接事実には主張原則が妥当しないことと、⑤弁論主義第2テーゼ・第3テーゼについては言及する必要はないとされています。

個人的には、平成24年司法試験設問1(2)の採点実感で主要事実の定義が示されていることと、平成19年司法試験設問2のヒアリングで「社会的な生の事実が主要事実なのか、それとも法的に構成された事実が主要事実なのか」という点も踏まえることが求められていることから、⑥主要事実の定義まで示すのがベストであると考えています。主要事実との関係で弁論主義第1テーゼが問われている問題では、要件事実を踏まえて判決の基礎にすることの可否が問われている生の事実が主要事実に当たることを説明する過程も重視されているからです(平成24年司法試験設問1(2)採点実感、平成29年司法試験設問1採点実感参照)。それから、上記の過程が重視されているため、当該生の事実が主要事実に当たることを説明する前提として、要件事実を明らかにすることも重要です(平成29年司法試験設問1採点実感参照)。

④について補足します。主要事実との関係で弁論主義第1テーゼが問われている問題では、弁論主義第1テーゼが適用される事実の範囲が主要事実に限定されるかという論点は顕在化しません(この論点が顕在化するのは、裁判所が判決の基礎にすることの可否が問われている事実が間接事実又は補助事実である場合です)。したがって、弁論主義第1テーゼが適用される事実の範囲については、④の通り、「少なくとも主要事実を含むと解されている」とだけ書けば足ります。だからこそ、同種事案に関する平成25年司法試験設問3(2)の採点実感では、「相変わらず、・・第1テーゼが間接事実には適用がないこと及びその理由(自由心証による事実認定を窮屈にする云々)まで長々と論じるものがあるが、やはり得点につながらない上、丸暗記した論証パターンを無反省に書き散らした答案として、印象も極めてよくない。」批判されています。

なお、民事訴訟法で書くべき一般論の範囲の見分け方については、こちらの回答も参考になると思います。

2020年09月10日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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