質問コーナー「 商法 」
21件の質問

例えば、取締役会設置会社では、取締役は、監督機関たる取締役会の構成員として(362条2項2号)、他の取締役による違法行為等の差止めを求めることができます。したがって、根拠条文は、362条2項2号です。 伊藤・大杉「リーガルクエスト会社法」第4版250頁でも、「取締役・執行役が任務を怠り、会社に損害を生じさせる事態は、事前に防止できることにこしたことはない。監督・監査(362条2項2号・381条1項・399条の2第3項1号・404条2項1号)には、そのような行為の事前防止も含まれる」とあります。

2021年06月09日

1つは、市販演習書を使った、条文・手続・論点と典型事例の対応関係を把握するという方法です。演習書としては、「ロープラクティス会社法」(商事法務)がちょうどいいと思います。「事例で考える会社法」(有斐閣)は網羅性が低い上に問題が難しいので、条文・手続・論点と典型事例の対応関係を把握するための演習書には不向きです。「会社法事例演習教材」(有斐閣)は問題数が多すぎて回し切れないと思います。 もう1つが、会社同士の関係、株主・役員の構成、公開・非公開等といった事実関係を「図」の形にして把握するという方法です。こうした事実関係を「図」として一目で確認することにより、初めて検討事項に気が付けることもありま […]

2021年06月09日

会社法論文対策としては条文の学習も必要ですが、短答過去問をやるのは非効率だと思います。 論文試験と短答試験とでは、出題の範囲・深さに違いがあるからです。 メリハリをつけるためにリークエ等の薄めの基本書における掲載の有無を目安にしつつ、条文を素読する(基本書を読み、条文が出てきたらその都度、六法で条文を確認する)とともに、必要に応じて周辺条文にまで素読範囲を広げるという方法が適切であると考えます。

2021年05月26日

①会社法106条本文は、民法の共有の規定に対する「特別の定め」(民法264条但書)として、準共有株式の権利行使については、権利行使者の指定及びその通知が必要であるとのルールを定めており、②会社法106条但書は、①のルールに対する例外として、「株式会社が…同意した場合は、この限りではない」と定めています。 ①における権利行使者の指定については、共有物の管理行為(民法252条本文)として、持分価額の過半数で決定することができると解されています(最判H9.1.28・百11)。 仮に会社法が①のルールを定めていない場合、準共有株式の権利行使については、民法264条本文の適用により、民法の共有に関する規 […]

2021年05月10日

人的抗弁の個別性が問題となるのは、以下の2パターンです。 受取人Bが所持人Cからの支払請求に対してAのCに対する人的抗弁を対抗しようとする場合 振出人Aが所持人Cからの支払請求に対してBのCに対する人的抗弁を対抗しようとする場合 1つ目における人的抗弁の例としては、AC間における支払猶予の合意が挙げられます(早川徹「基本講義」第2版141頁)。 2つ目における人的抗弁の例としては、BC間における原因関係の消滅が挙げられます。 1つ目の具体例については、良い間違えをしてろいました。お詫びの上、訂正いたします。

2021年04月30日

名義説の内部では、取締役が自己又は第三者の名義で(つまり、自己が取引当事者となり又は取引相手方を代理・代表して)取引をしたかについて、形式的に判断する見解と実質的に判断する見解とがあります。形式的に判断する見解は、直接取引としての規制範囲の明確化(あるいは、直接取引と間接取引の区別の明確化)を理由とします(例えば、髙橋美加ほか「会社法」第3版204~205頁)。 そして、「甲社取締役Bが甲社を代表して甲社取締役Aが全株を保有する乙社との間で取引をした、甲社の取締役はA・B、乙社の取締役はCのみ」という事案では、形式的に判断する見解からは、形式的には、甲社「取締役」が甲社の取引の相手方ではない上 […]

2021年04月23日

令和1年会社法改正のうち、論文試験に関係しそうなものは、以下の通りです。これらが司法試験過去問に直接又は間接的に及ぼす影響はないと判断しております。予備試験過去問についてはまだ確認しておりません。 ①株主総会参考書類等に関する電子提供措置(325条の2以下) ②議案要領通知請求権に関する株主1人当たりの提出可能議案の個数制限(305条4項) ③代理権を証明する書面・議決権行使書面・書面投票における電磁的記録に記録された事項の閲覧・謄写請求に関する拒否事由と請求理由の明示義務の法定( 310 条 7 項後段、 311 条 4 項、312 条 5 項) ④成年被後見人・被保佐人であることを取締役の […]

2021年03月04日

ご指摘の通り、平成27年司法試験の出題趣旨・採点実感では、会社法356条1項1号所定の「取引」は「個々の取引行為」を意味するとされています。したがって、「甲社の取締役Aが競合他社である乙社の代表取締役に就任し、その後、乙社の代表取締役として競業取引を行った」という事案では、Aが乙社の代表取締役として行った個々の取引行為について競業取引該当性及び競業取引規制違反の成否を検討することになります。 仮に甲社が、Aが乙社の代表取締役に就任する際に包括的承認をしていた場合、その包括的承認は、Aが乙社の代表取締役に就任すること自体についての承認ではなく、Aが乙社の代表取締役として今後行うことが予定されてい […]

2021年02月10日

例えば、吸収合併については、原則として株主総会の特別決議による承認を要しますが(783条1項、795条1項、309条2項12号)、いきなり株主総会の特別決議にかけるのではなく、吸収合併契約の内容を決定した上で、代表取締役が会社を代表として吸収合併契約を締結し、その後で吸収合併契約を株主総会の特別決議にかけることになります。従って、取締役会設置会社では、①「その他の重要な業務執行」として取締役会の決議により吸収合併契約の内容を決定した上で(362条4項柱書)、②代表取締役が株主総会の特別決議による承認を停止条件として吸収合併契約を締結(748条)し、その後、③吸収合併契約を株主総会の特別決議にか […]

2021年01月21日

商法では設問間の論理的整合性まで問われており、過去には、行為の有効・無効と会社損害の有無・内容との論理的整合性を出題もあったため、非常に良い問題意識であると思います。 確かに、設問2において、Hからの2億円の借入れの効果が甲社に帰属しないとの結論を採用した場合、2億円の借入金(本件貸付けの原資)は甲社の財産を形成していないということになるはずです。そうすると、甲社による乙社に対する貸し付けは、甲社の資金を用いて行われたものではないという評価になりそうです。 しかし、甲社は、Hから自分の手元に2億円が来た以上、Hに対して2億円の不当利得返還義務(民法703条)を負うことになると思われます。そうす […]

2020年11月27日

平成28年司法試験設問3の出題趣旨では、内部統制システムの構築・運用に関する任務懈怠責任(会社法423条1項)が問題となった事案において、「設問3においては、取締役は、株式会社に対し、その任務を怠ったこと(任務懈怠)によって生じた損害を賠償する責任を負うこと(会社法第423条第1項)や、任務懈怠責任は、取締役の株式会社に対する債務不履行責任の性質を有するため、任務懈怠、会社の損害、任務懈怠と損害との間の因果関係に加え、取締役の帰責事由が必要であること(会社法第428条第1項参照)について理解していることが前提となる。」とあります。したがって、任務懈怠とは別に帰責事由まで認定することが、理想的な […]

2020年10月27日
会社法106条但書の適用について質問がございます。 例えば、甲社の株式を100株を有するXが死亡し、相続により、当該100株がXの子であるY・Zの準共有になったとします。その後、Yが権利行使者の指定・通知(会社法106条本文)を経ることなく、甲社の同意(会社法106条但書)を経た上で、100株すべてについて権利行使をしたという場合には、当該権利行使は違法になると思います。これは、髙橋美加ほか「会社法 Corporate Law」第2版89頁における「判例(前掲最判平成27年2月19日・・略・・)は、準共有者による準共有株式の全部(当該準共有者の持分[法定相続分]だけではない)の議決権行使について、原則として、全準共有者の持分の過半数が同意していない場合には、たとえ会社の同意があるときでも当該権利行使は違法であると解している。」という記述中の括弧書きからも分かりました。 では、上記記述の事例と異なり、Yが50株についてのみ権利行使をしたというように、株式の準共有者が自己の持分の限度で権利行使をする場合であっても、最高裁平成27年判決(最一小判平成27・2・19・百12)の射程が及び、会社の同意があっても、権利行使者が持分の過半数を有していなければ、権利行使が許容されないのでしょうか。

最高裁平成27年判決が示したルールは、会社の同意(会社法106条但書)がある場合には、会社法106条本文の適用が除外されるため権利行使者の指定・通知(最高裁平成9年判決によれば持分の過半数の決定により指定できる)は不要であるが、民法251条及び252条が適用されるため、権利行使が管理行為にとどまるときには持分の過半数の決定(民法252条本文)、株式の処分又は株式の内容の変更に当たるなど特段の事情があるときは全員の同意(民法251条)が必要である、というものです。 したがって、Yによる議決権行使は、それが管理行為にとどまるときであっても、過半数の決定(民法252条本文)を経ていない以上、Yの持分 […]

2020年10月15日

まずは、組織再編全般です。問題としては、10-1、10-2、11-1、11-2です。これらは必須です。 次に、株式による資金調達のうち、1-1、1-2、1-3、1-4です。社債に関する1-5は飛ばして構いません。 それから、自己株式の取得・処分も出題可能性が高いですから、5-1、5-2、5-3も重要です。 そして、司法試験では株主総会絡みの問題が最も出題頻度が高いですから、6-1、6-2、6-3です。 最後に、一応、8-1、8-2、9-3もやっておきましょう。 なお、5-1、5-2、5-3、9-3、10-1、10-2、11-1及び11-2以外の問題については、深い・細かいことまでやる必要はなく […]

2020年09月25日

確かに、判例は、Eのように適法な選任手続を経ない登記簿上の取締役について、「その不実の登記事項が株式会社の取締役への就任であり、かつ、その就任の登記につき取締役とされた本人が承諾を与えたのであれば、同人もまた不実の登記の出現に加功したものというべく、したがつて、同人に対する関係においても、当該事項の登記を申請した商人に対する関係におけると同様、善意の第三者を保護する必要があるから、同条の規定を類推適用して、取締役として就任の登記をされた当該本人も、同人に故意または過失があるかぎり、当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗することができないものと解するのを相当とする。」として、旧商法1 […]

2020年09月13日

例えば、甲社が、甲社取締役Aを株式引受人として有利発行をした場合(払込金額を時価10万円の1/2である5万円として、100株発行した場合)、形式的には、「株式会社」甲社の「取締役」Aが「自己・・のために」「株式会社」甲社と「取引」する場合として、直接利益相反取引(356条1項2号)に当たりそうです。 しかし、株式発行は経済的出捐を伴わない資金調達手段ですから、上記の有利発行では、時価1000万円の不動産を500万円で売却する廉価売買と異なり、会社が1000万円の経済的出捐を伴う一方でその対価として500万円しか利得することができないという利益状況にはなりません。 有利発行により経済的不利益を被 […]

2020年09月09日

例えば、甲社が、時価10万円の株式を、払込金額を1株10万円として合計1000株発行したところ、9000万円について払込みが仮装されたという事案では、払込みの効力について無効説に立ち、かつ、株式発行の効力について有効説に立つのであれば、甲社が時価10万円の株式1000株を1株当たりの払込金額1万円で発行したのと同じ利益状況になります。その分だけ、既存株主の株式の経済的価値が希釈されることになります。 しかし、199条3項の文言からしても、有利発行に当たるかは、事前に募集事項として定められた199条「第1項第2号の払込金額」と公正な発行価額とを比較して判断されることになります。そうすると、払込み […]

2020年09月09日

不公正発行の新株発行の無効原因該当性が問題となった平成19年・25年司法試験の出題趣旨・採点実感では、差止事由に関する210条2号は引用されておりません。もっとも、田中亘「会社法」第2版505頁では「著しく不公正な方法(210条2号参照)による新株発行であっても、新株発行の無効原因にはならないとする・・」、伊藤靖史ほか「事例で考える会社法」第2版276頁では「著しく不公正な方法による募集株式の発行(210条2号)は、判例によれば‥無効原因とならない・・」とあります。そのため、210条2号を引用・参照しても構いませんし、むしろ、そのほうが正確であるとも思えます。直接引用するのが不安であれば、田中 […]

2020年09月09日

退任登記未了の登記簿上の取締役の対第三者責任が問題となった事案について、最一小判昭和62・4・16・百72は、①「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえてした場合を除いては、辞任登記が未了であることによりその者が取締役であると信じて当該株式会社と取引した第三者に対しても、商法・・266条ノ3第1項前段に基づく損害賠償責任を負わない」と述べた上で、②旧商法14条(現:会社法908条2項類推適用)に言及しています。 ①は、「株式会社の取締役を辞任した者は、辞任したにもかかわらずなお積極的に取締役として対外的又は内部的な行為をあえて […]

2020年09月08日

まず、合併承認決議に著しく不当な対価による吸収合併が可決されたことを「著しく不当な決議」とする3号取消事由があることと、合併無効原因との関係についてです。3号取消事由が認められる場合、合併対価が著しく不当であること(=「著しく不当な決議」を基礎づける)に加え、「特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによって」当該議案が可決されたというプラスアルファの事情も認められます。そうすると、合併承認決議に3号取消事由があることが合併無効原因に該当すると理解しても、合併対価が著しく不当であること自体を合併無効原因としていることにはなりませんから、合併対価が著しく不当であることが合併無効原因に該当し […]

2020年09月08日

直接取引における「ために」についての名義説の内部でも、誰の名義であるのかをどこまで実質的に判断するかについて見解の対立があります。会社の承認を経ない直接取引の効力は絶対的無効であるため、相手方の取引安全を図るためには、誰の名義であるかを形式的に判断するべきという要請が働きます。この要請を重視して、誰の名義であるかは形式的に判断するべきであり、具体的には、取締役本人が会社との取引の相手方となる場合、取締役が取引相手方を代表又は代理する場合だけが直接取引に該当すると理解する見解もあります(髙橋ほか「会社法」第2版195頁参照)。この見解からは、⓪・①・②だけが直接取引に該当し、③・⑤・⑥・⑦・⑧に […]

2020年09月08日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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