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準共有株式の権利行使は、会社法106条但書の同意があり、かつ、権利行使が管理行為にとどまるのであれば、持分の過半数の決定を要することなく、自己の持分の限度で適法になるか

会社法106条但書の適用について質問がございます。
例えば、甲社の株式を100株を有するXが死亡し、相続により、当該100株がXの子であるY・Zの準共有になったとします。その後、Yが権利行使者の指定・通知(会社法106条本文)を経ることなく、甲社の同意(会社法106条但書)を経た上で、100株すべてについて権利行使をしたという場合には、当該権利行使は違法になると思います。これは、髙橋美加ほか「会社法 Corporate Law」第2版89頁における「判例(前掲最判平成27年2月19日・・略・・)は、準共有者による準共有株式の全部(当該準共有者の持分[法定相続分]だけではない)の議決権行使について、原則として、全準共有者の持分の過半数が同意していない場合には、たとえ会社の同意があるときでも当該権利行使は違法であると解している。」という記述中の括弧書きからも分かりました。
では、上記記述の事例と異なり、Yが50株についてのみ権利行使をしたというように、株式の準共有者が自己の持分の限度で権利行使をする場合であっても、最高裁平成27年判決(最一小判平成27・2・19・百12)の射程が及び、会社の同意があっても、権利行使者が持分の過半数を有していなければ、権利行使が許容されないのでしょうか。

最高裁平成27年判決が示したルールは、会社の同意(会社法106条但書)がある場合には、会社法106条本文の適用が除外されるため権利行使者の指定・通知(最高裁平成9年判決によれば持分の過半数の決定により指定できる)は不要であるが、民法251条及び252条が適用されるため、権利行使が管理行為にとどまるときには持分の過半数の決定(民法252条本文)、株式の処分又は株式の内容の変更に当たるなど特段の事情があるときは全員の同意(民法251条)が必要である、というものです。

したがって、Yによる議決権行使は、それが管理行為にとどまるときであっても、過半数の決定(民法252条本文)を経ていない以上、Yの持分の限度ですら違法であることになります。Yが会社法106条本文や民法251条及び251条の規律に服することなく自己の持分について自由に議決権行使をするためには、遺産分割により株式の準共有状態を解除する必要があります。

2020年10月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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