加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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事業譲渡における手続(株主総会特別決議に加えて取締役会決議まで必要か)

お世話になっております。
会社法における重要な一部の事業譲渡は、それ自体が事業譲渡の規制対象に当たるとともに、「重要な財産の処分」(362条4項1号)にも当り、株式総会の特別決議に加えて取締役会決議まで必要になるのでしょうか。
また、事業の一部の譲渡における譲渡対象が「重要な一部」に該当するかについて譲渡対象の量と質の両面に着目して判断するところ、質については「重要な財産の処分」における「重要」性とリンクして考えることはできるのでしょうか?
宜しくお願い致します。

例えば、吸収合併については、原則として株主総会の特別決議による承認を要しますが(783条1項、795条1項、309条2項12号)、いきなり株主総会の特別決議にかけるのではなく、吸収合併契約の内容を決定した上で、代表取締役が会社を代表として吸収合併契約を締結し、その後で吸収合併契約を株主総会の特別決議にかけることになります。従って、取締役会設置会社では、①「その他の重要な業務執行」として取締役会の決議により吸収合併契約の内容を決定した上で(362条4項柱書)、②代表取締役が株主総会の特別決議による承認を停止条件として吸収合併契約を締結(748条)し、その後、③吸収合併契約を株主総会の特別決議にかけることになります(弥永「リーガルマインド会社法」第14版360頁)。

これと同じで、事業譲渡の場合も、取締役会設置会社では、①「その他の重要な業務執行」として取締役会の決議により事業譲渡契約の内容を決定した上で(362条4項柱書)、②代表取締役が株主総会の特別決議による承認を停止条件として事業譲渡契約を締結し、その後、③事業譲渡契約を株主総会の特別決議にかけることになります(弥永「リーガルマインド会社法」第14版357頁参照)。

2点目のご質問についてですが、「重要な財産の処分」における「重要」性の考慮要素の1つとして、「当該財産の保有目的」が挙げられます。この「当該財産の保有目的」は、事業の一部の譲渡における譲渡対象が「重要な一部」に該当するかの判断における「質」に対応するものです。

2021年01月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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