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平成26年司法試験「商法」設問3 借入れの効果帰属を否定した場合、貸付金の回収不能は甲社の「損害」に当たらないのではないか  

平成26年司法試験会社法についての質問です。
設問3では、取締役・代表取締役として適法に選任・選定されていないEが甲社の代表取締役として乙社に対する2億円の貸し付けを実行したところ、乙社から貸付け係る金員を回収できないことが確実になったという事実関係を前提として、D及びEの貸付金相当額の損害賠償責任の成否が問われています。
設問2において、Hからの2億円の「借入れ」の効果が甲社に帰属しないとの結論をとった場合、設問3で2億円の回収不能が甲社の「損害」であるとすると、論理矛盾になるように思えます。もっとも、出題趣旨では、2億円の回収不能が甲社の「損害」であることを前提にしているように思えます。
私の理解に誤りがあるのでしょうか。

商法では設問間の論理的整合性まで問われており、過去には、行為の有効・無効と会社損害の有無・内容との論理的整合性を出題もあったため、非常に良い問題意識であると思います。

確かに、設問2において、Hからの2億円の借入れの効果が甲社に帰属しないとの結論を採用した場合、2億円の借入金(本件貸付けの原資)は甲社の財産を形成していないということになるはずです。そうすると、甲社による乙社に対する貸し付けは、甲社の資金を用いて行われたものではないという評価になりそうです。

しかし、甲社は、Hから自分の手元に2億円が来た以上、Hに対して2億円の不当利得返還義務(民法703条)を負うことになると思われます。そうすると、この2億円を乙社に貸し付けたところ、回収不能になった場合には、Hに対する不当利得返還義務の原資にするべき2億円が無くなったということになりますから、甲社に2億円の「損害」が生じたと理解することになるのだと思います。

参考にして頂けますと幸いです。

2020年11月27日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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