加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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競業取引該当性を検討するべき「取引」の意味

いつもお世話になっております。
会社法の競業取引について質問がございます。
江頭会社法(第7版)439頁によれば、取締役が競業他社の代表取締役に就任する行為自体は「取引」該当性が否定されるものの、実務上、取締役が競業他社の代表取締役になる場合には包括的に承認を受けるのが通例であるとの記載があります。
そこで、例えば「取締役が、競合他社の代表取締役に就任し、その後、競業取引を行った」という事例を考える際には、①(就任後の)「個々の取引」を捉えて競業避止義務違反の有無を検討するのが良いのか、それとも、②代表取締役への「就任」自体を捉えて競業避止義務違反の有無を検討するのが良いのか、どちらでしょうか。
平成27年司法試験で出題された「事実上の主宰者」の論点を踏まえれば、①のように、就任後の「個々の取引」を捉えて競業避止義務違反の有無を検討すべきでしょうか。
ご教示いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。

ご指摘の通り、平成27年司法試験の出題趣旨・採点実感では、会社法356条1項1号所定の「取引」は「個々の取引行為」を意味するとされています。したがって、「甲社の取締役Aが競合他社である乙社の代表取締役に就任し、その後、乙社の代表取締役として競業取引を行った」という事案では、Aが乙社の代表取締役として行った個々の取引行為について競業取引該当性及び競業取引規制違反の成否を検討することになります。

仮に甲社が、Aが乙社の代表取締役に就任する際に包括的承認をしていた場合、その包括的承認は、Aが乙社の代表取締役に就任すること自体についての承認ではなく、Aが乙社の代表取締役として今後行うことが予定されている個々の取引行為について一括承認したものであると理解することになります。

2021年02月10日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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