加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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令和3年予備試験憲法の屋外広告物規制は事後規制&表現内容中立規制か?

来年予備試験受験する者です。加藤先生の総まくり講座と論証集を使って勉強しています。今回、令和3年予備試験の憲法の問題を初見で書き、加藤先生のYouTubeチャンネルから解答速報を視聴いたしました。そこで、本問について解決できない疑問が残ったので質問させてください。私は広告物掲示の規制は、事前規制であり表現内容規制であると考え、厳格審査基準を採りました。理由は、看板掲示は原則禁止で市長が許可を与えなければ掲示できないのと、許可の基準が歴史的環境向上というテーマに限定されているからです。本件条例だと、例えば「憲法9条改正反対」という政治的表現内容の看板をc地区に掲示しようとする際に、形状や色が基準を満たしていてもテーマが許可基準に適合せず掲示が許可されない危険があります。だとすれば、事前の表現内容規制といえないでしょうか?この点が、先生の参考答案の論述と大きく食い違っています。もちろん、先生の参考答案の論述には大いに納得しつつも、やはり若干の疑問が残ります。本問で、事前規制、表現内容規制とすべきでない理由があればご教授お願いいたします。

まず、本問の屋外広告物規制は、屋外広告物の掲示を原則として禁止した上で禁止違反について罰則の対象にするというものであり、事後規制の典型例であると考えます。仮にこれが事前規制になるのであれば、刑罰法規は全て事前規制になってしまいます。また、「特別規制区域の歴史的な環境を向上させるものと認められる」として許可を与えられた場合には例外的に広告物を掲示できるという例外ルールだけに着目して許可制だから事前規制であるとする説明には、違和感があります。

次に、表現内容規制の実質は、ある内容の表現をその伝達的効果から生じる害悪の除去を目的として規制することにあります(芦辺「憲法額Ⅲ403頁」)。本問の屋外広告物規制における原則ルールは、特別規制区域という特定の場所における屋外広告物の掲示をその内容にかかわりなく禁止するというものですから、屋外広告物の伝達的効果から生じる害悪の除去を目的とした規制であるとはいえません。上記の例外ルールも、屋外広告物の形状等に着目して許可・不許可を判断するであり、屋外広告物のメッセージの伝達的効果から生じる害悪の有無に着目して許可・不許可を判断するものではありませんから、上記の例外ルールに着目したとしてもやはり表現内容規制であるとはいえません。

ご質問では「例えば「憲法9条改正反対」という政治的表現内容の看板をc地区に掲示しようとする際に、形状や色が基準を満たしていてもテーマが許可基準に適合せず掲示が許可されない危険があります。」とありますが、そのような不許可処分がなされた場合には、処分違憲の検討過程において、不許可処分が表現内容規制に当たると認定することになると思います。

参考にして頂けますと幸いです。

2021年08月28日
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コメント

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    早速のご回答ありがとうございました。大変分かりやすく、疑問が解決しました。問題文の「許可」という文言から、なぜか集団行動の判例などが頭によぎってしまい、混乱してしまいました。また、「本問ではビラ配布の規制は明らかに事後内容中立規制だから、看板はビラと異なる性質の規制として書き分けることが要求されているのではないか」など、余計なことをあれこれ考えすぎてしまったと思います。ありがとうございました。

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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