加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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遺伝子治療臨床研究の自由の重要性を否定できるか

基礎問題演習テキスト憲法15問について。
研究の危険性を強調して「学問の自由」の重要性を否定することができないのはなぜでしょうか?
未知の危険もありますが、得られる可能性がある利益が多数人の生命という重要な利益だからでしょうか?
また、研究の危険性を強調して「学問の自由」の重要性を否定することもできるのでしょうか?

基礎問題演習講座「憲法」第15問は、平成21年司法試験憲法の類題であり、遺伝子治療臨床研究の自由がテーマになっています。

遺伝子治療臨床研究の自由は、問題文にもありますように、未知の危険性を秘めています。

しかし、反対利益の重要性に着目して人権の重要性を否定して違憲審査基準を下げるという論理は採用するべきではありません。平成30年司法試験憲法の採点実感でも、「立法目的が重要だから審査基準が緩和されるのかについては十分な議論が必要であり、その点を意識した論述が必要である。」として、一般的な見解ではない旨が指摘されています。

核兵器開発研究などのように、その研究が人間の生命・身体の安全を害すること自体を目的としているのであれば、研究の目的(ひいては得られるであろう成果)に着目して人権の重要性を否定することは可能ですが、遺伝子治療臨床研究は難病の治癒を目的とするものですから、未知の危険性が伴う着目して人権の重要性を否定することには無理があります。

未知の危険性を伴う遺伝子治療臨床研究の自由に限らず、精神的自由については、よほどのことがない限り、人権の重要性を否定するべきではありません。例えば、令和1年司法試験憲法の採点実感では、虚偽表現の自由についてさえ、「表現の自由の重要性の理由として論ずるべき事項を取り上げ、虚偽表現はそれに該当しないので表現の自由の対象とならないという論述があったが、出題の趣旨にもあるように、虚偽表現について、安易に表現の自由の保障範囲から外したり、低価値言論として制約を簡単に認めたりすることには慎重な姿勢が必要である。」として、安易に人権の重要性を否定することについて批判されています。

2023年12月26日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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