加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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手段審査における「効果的で過度でない」という基準について

お世話になっております。
受験界で目下大ブーム(?)の違憲審査基準、「効果的で過度でない」につき…加藤先生とは異なる見解をお持ちの受験指導者が存在するようです。
差し支えなければ…当該人物の見解につき…先生の忌憚のないご意見をお聞かせいただけませんか?
ご回答のほどよろしくお願いいたします。
https://study.web5.jp/230611a.htm
https://santiago-old.hatenablog.jp/entry/2023/06/02/191816
https://kato.blog/column/10599/

私は、手段審査における「効果的で過度でない」という基準は使うべきではないと考えています。理由は次の通りです。

1つ目の理由は、違憲審査基準の厳格度の違いが曖昧になるという点です。

司法試験でも予備試験でも、人権の性質や制約の態様を考慮して違憲審査基準の厳格度を決定するという過程が重視されています。違憲審査基準の厳格度は、典型的には、厳格審査の基準、中間審査の基準(厳格な合理性の基準)及び合理性の基準の3つに分類され、各々の手段審査の内容は異なります。

厳格審査の基準であれば、手段は「必要最小限度」、中間審査の基準であれば、手段は「実質的関連性」と表現され、その要件は「適合性・必要性」の2点で整理され、厳格度に応じて「適合性」と「必要性」における要求水準が異なります(なお、学説には、「適合性・必要性・相当性」の3要件で整理する見解もあります。)。

手段審査に関する「効果的で過度でない」という基準は、おそらく中間審査以上の基準で用いられているのだと思いますが、仮に「効果的で過度でない」という基準を用いると、厳格審査の基準と中間審査の基準における手段審査の厳格度の違いが無くなくおそれがあります。

2つ目の理由は、講学上用いられていない基準を使うべきではないという点です。

講学上、手段審査に関する基準として「効果的で過度でない」という表現は用いられていません。過去の司法試験の出題趣旨・採点実感を読む限り、中間審査以上の基準における手段審査は「適合性・必要性」の2要件で理解されています。

例えば、令和3年司法試験の採点実感では、「手段審査における適合性、必要性を意識して論述する答案が一定数見られ、それらの答案の多くは、規制①が目的達成にどのように役立つのかを具体的に論述できていた。」とあります。

「効果的で過度でない」という基準のほうが「適合性・必要性」に比べて当てはめがしやすいというわけでもないので、わざわざ、司法試験委員会の理解から外れるリスクのある基準を用いる必要はありません。

以上が私の考えです。参考にして頂けますと幸いです。

2023年06月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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