加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

目的審査と手段適合性審査における立法事実の使い方

加藤ゼミナールにおいて憲法をさっそく受講しております。第一回目の講義を受けて復習を済ませたのですが、わからない点がありましたので質問させていただきます。
第一回目の講義において、「厳格審査基準のとき目的についても立法事実を根拠として心証形成する」とのことであるが具体的にはどんな感じで書くのか、例1と2を読んでもよく理解ができていません。
講義内の説明において手段適合性の前提要件となる立法事実と立法目的のレベルにおいて論ずるべき立法事実との峻別をしていましたが、「画像→プライバシー侵害→犯罪惹起」という具体的な場合においてはわかりましたものの、イマイチ抽象化ができておらず、どの事実を立法目的における判断において利用し、どの事実を手段適合性の前提要件として利用するのかがはっきり整理がつかない状況です。
また、手段適合性の場合と違って、目的について立法事実を元にした心証形成について論ずる際は「観念上の想定」にとどまらなければ立法目的は認められ、この場合「科学的な証明」レベルの立法事実は必要ないのでしょうか。
的はずれなことを言っているかも知れませんが、よろしかったらご教示お願いします。

例えば、平成23年司法試験の事案であれば、立法目的(規制目的)はプライバシー保護にあり、保護されるべプライバシーの重要性や必要不可欠性は、「Z機能画像によるライバシー侵害→犯罪被害等」によって基礎づけられることになります。厳格審査又は中間審査の基準では、「Z機能画像によるライバシー侵害→犯罪被害等」という因果関係について立法事実による支持がないのであれば、「Z機能画像によるライバシー侵害→犯罪被害等」という因果関係がないと扱われることになりますから、法が保護しようとしている「Z機能画像によって侵害されるプライバシー」は、それが侵害されても単なる不快感・不安感等にとどまり、現実的な被害を伴うものではないとして、その重要性や必要不可欠性が否定されることになります。

「Z機能画像→プライバシー侵害」という因果関係は、規制対象であるZ機能画像が保護法益であるプライバシーを侵害するという因果関係を意味しますから、これは手段適合性の前提要件で問題となります。厳格審査又は中間審査の基準では、この因果関係についても立法事実による支持が必要とされます。

令和1年司法試験(例1の事案)のように、目的審査と手段適合性の審査とで使う立法事実が同じになる場面もあります。目的審査では、防止しようとしている「社会的混乱」の中身を明らかにするために虚偽表現によって相当規模の混乱が生じた過去があるという記述を立法事実として使い、手段適合性の前提要件(虚偽表現が社会的混乱をもたらすという因果関係)の審査でも、虚偽表現によって相当規模の混乱が生じた過去があるという記述を「虚偽表現によって社会的混乱が生じた過去がある」という意味で立法事実として使います。

目的審査でも手段審査でも、厳格審査の基準であれば立法事実の客観性としては「科学的な証明」レベルのことが要求され、中間審査の基準であれば「社会共通の認識」や「相当の蓋然性」といったレベルのことが要求されるにとどまります。

2021年05月25日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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