質問コーナー

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明確性の原則と過度の広汎性の原則の関係

お世話になっております。基礎問題演習講座の憲法を受講させていただいている者です。
明確性の原則と過度広汎性の原則について質問させていただきたく存じます。
明確性の原則については、徳島市公安条例事件判決の規範と合憲限定解釈の可否(基礎問題演習講座第16問目の型)と理解しております。そして過度広範性の原則については、広島市暴走族追放条例事件から、合憲限定解釈の可否によって判断すると理解しております。
まず、上記の理解で正しいでしょうか。
次に上記理解に基づくと、明確性の原則と過度の公汎性の原則の両方が問題となる場合、合憲限定解釈の判断部分が重なるため、論文の型は基礎問題演習講座第16問目と結局は同様の型になるという理解で正しいでしょうか。
お忙しい中大変恐縮ですが、ご回答いただけますと幸いです。

過度の広汎性の原則が問題となる事案でも、いきなり合憲限定解釈の可否から検討するのではなく、「合憲限定解釈をしない場合を前提とした過度の広汎性の有無」→「合憲限定解釈による過度の広汎性の払拭の可否」という流れで検討することになります。

そして、過度の広汎性の原則の場合も、合憲限定解釈をする際には、明確性の原則の場合における合憲限定解釈と同じ要件が適用されます。つまり、①解釈の結果が規定中の合憲的適用部分と違憲的適用部分を明確に切り分けるものであることと、②一般国民の理解において①の解釈の結果を規定から読み取れることが必要となります。

もっとも、明確性の原則と過度の広汎性の原則とでは、問題意識が異なるため、合憲限定解釈により排斥しようとしている違憲的適用部分が異なります。明確性の原則の場合には、不明確とされる部分が違憲的適用部分であるのに対し、過度の広汎性の原則の場合には、過度に広汎とされる部分が違憲的適用部分となります。両者は、部分的に重なることはあり得るものの、完全に一致するわけではありません。

したがって、明確性の原則と過度の公汎性の原則の両方が問題となる場合、合憲限定解釈の要件は同じであるものの、その要件を適用する際に問題とするべき違憲的適用部分が異なるため、合憲限定解釈の判断部分が完全に重なることにはなりません。例えば、明確性の原則における合憲限定解釈の判断の過程・結果が、過度の広汎性の原則における合憲限定解釈の判断の過程・結論を包摂するみたいなことにもなりませんので、両者を区別して検討することになります。

参考にして頂けますと幸いでございます。

2023年03月22日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
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・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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