加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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適用違憲の論じ方

お世話になっております。
予備試験レベルの憲法では、法令違憲と適用違憲で記述について区別を意識すべきことは何かあるのでしょうか?
法令違憲の問題については処理手順がマニュアル化されているため、おそらく問題はないと思います。しかし、R1(神戸高専事件判例類似)のような適用違憲を論じる問題において、当事者の従前の状態といった個別事情の組み込み方が理解できていないように思われます。両者において、決定的に違うものはなんでしょうか?

法令違憲と適用違憲における基本的な違いとして、前者では立法事実を前提として違憲審査を行う(したがって、当該事案における具体的事実たる司法事実を直接に考慮することができない)一方で、後者における当てはめでは司法事実を直接に考慮するという点が挙げられます。

もう1つの違いが、正当化審査に関する判断枠組みです。

適用違憲審査においても、目的手段審査を行うことは可能であり、令和1年予備試験のような事案では目的手段審査を使うことが望ましいです。

もっとも、例えば、適用されている法令の処分要件の解釈論として、違憲的適用部分を洗い出す形で判断枠組みを定立する際に、目的手段審査を用いないで、「~という事情がない場合には、違憲である」という感じで処分要件に関する規範を定立した上で、当てはめをするべき場面もあります。

この場合、法令適用の目的が根拠法令の立法目的に沿った合憲的なものであることを前提として、手段審査に相当する部分だけを問題にしているというイメージです。理論上は、目的と手段の双方の憲法適合性が問題となるが、手段の憲法適合性に関する問題だけを顕在化させて論じるということです。

処分要件に関する規範定立をする際には、通常の法令の解釈によって導かれる規範を定立するのではなく、処分要件の解釈に憲法的価値(人権の重要性や規制の強度など)を取り込むことで、通常の法令解釈の場合によりも処分要件を狭く解釈するということを意識しましょう。仮に、通常の法令の解釈によって導かれる規範を定立するにとどまると、その規範に該当するか否かの判断は、法令の適用行為の「法令適合性審査」になってしまい、「憲法適合性審査」という憲法論にならないからです。

参考にして頂けますと幸いです。

2023年06月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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