明日から、令和2年予備試験論文式が始まります。
今年の予備試験受験生の方々は、短答試験、論文試験及び口述試験の3つが全て後ろにずれ、しかも、論文試験の合格発表日が令和3年司法試験の実施日の4カ月前、口述試験の合格発表日が令和3年司法試験の実施日の3カ月前であるため、令和3年司法試験の受験まで視野に入れると非常に不安定な状態に置かれることになります。
令和3年司法試験の司法試験対策をどのタイミングで開始するべきか、選択科目の対策が間に合うかといったことについては、予備試験論文を終えてから考えましょう。論文試験終了後、予備試験論文を受けた手応えに応じて、今後の勉強法について考えましょう。必要であれば、本ブログの「質問コーナー」や「お問い合わせ」もご利用いただければと思います。
以下では、論文全科目に共通する留意事項と、科目ごとの留意事項についてお話しいたします(一般教養科目及び実務基礎科目については、割愛させて頂きます)。
論文全科目に共通する重要事項
論文試験で留意するべきことは多岐に渡りますが、特に優先順位が高いものが以下の6つです。
この6つは、最低限、守って頂きたいと考えております。
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- 自信をもって臨む
自信がないと、問題文を読んだ後のファーストインプレッションを信じることができず、深読みしすぎてしまう危険があります。
論点Aが問題になっているという心象を頂いたものの、この心象を信じることができず深読みしすぎた結果、問われていない論点Bを書いてしまうなど。
自分を追い込むのは、試験前日までです。
試験当日は、これまで予備試験に向けて勉強をしてきた自分を信じて、自信を持って問題を解いて欲しいと思います。
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- 設問の指示・誘導に従う
大きな問いと小さな問いの関係、論述の形式、論述の方向性などについて、ちゃんと確認し、従う必要があります。
これを全科目で出来るだけでも、相対評価においてだいぶ上に行くことができます。
例えば、行政法において「~の処分は適法か。適法とする法律論及び違法とする法律論として考えられるものを示して答えなさい。」という設問形式になっているのであれば、適法論と違法論を論じた上で私見まで論じる必要があります。「~の処分は適法か」という大きな問いに解答する方法について指示をしているのが、「適法とする法律論及び違法とする法律論として考えられるものを示して答えなさい。」という小さな問いです。小さな問いに対する解答だけで終わることのないよう、注意しましょう。
論述の方向性についても注意する必要があります。例えば、行政法で「原告Xは、~の処分が違法であると主張したい。Xがするべき主張を検討しなさい」とある場合には、原告側の訴状を起案するというイメージです。「違法である」との結論にする必要があります。
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- 現場思考問題では、元ネタを探るのではなく、問題文と条文と法的三段論法に忠実になる
現場思考問題では、頭の中で元ネタになっているであろう判例・裁判例や学者論文、予備校答練の問題を検索するのではなく、まずは問題文に立ち返り、何についてどう論じることが求められているのかについて確認します。
次に、使えそうな条文を探し、解釈の対象になりそうな文言を見つけたら、知識と思考力・文章力を総動員して、「条文の趣旨⇒趣旨を反映した解釈による規範定立⇒規範適用による当てはめ」という形式に従って論じます。
現場思考問題では、論証の理由付けとしては、条文の趣旨を使うことが多いと思います。
条文の趣旨を知らない場合には、この条文がなければどういった弊害があるのか等をイメージして、自力で趣旨を導きましょう。
趣旨や規範について正確筋に従ったことを書けるかどうかではなく、「条文の趣旨⇒趣旨を反映した解釈による規範定立⇒規範適用による当てはめ」という形式で書けるかどうかが大事です。
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- 特定の科目・問題の出来不出来ではなく、9科目全体・答案全体の出来を重視する
まず、答案の科目で「失敗した(かもしれない)」と思うことがあったとしても、引きずらないようにしましょう。それ以降の科目の試験中にも前の科目のことを気にしていると、集中力が低下して、普段通りの答案を書くことができない危険もあります。また、それ以降の科目で高得点を出して挽回しようとして無理に背伸びをしても、普段通りの答案を書くことができない危険もあります。例えば、分量を増やすために答案構成の時間を短縮した結果、解答の入り口で間違えてしまうなど。前の科目における不出来を、それ以降の科目に波及させないようにする必要があります。
次に、科目単位で答案全体の出来を重視するという姿勢も重要です。例えば、何を書けばいいのか分からない設問で立ち止まりすぎた結果、何を書けばいいのかが分かる設問について書く時間が無くなってしまうという事態に陥らないよう、分からない設問に時間を書けすぎないという勇気が必要です。また、書けそうな設問に時間を書けすぎてしまい、他の設問に時間を書けることができなくなるという事態を避けるために、書けそうな設問で書きすぎないという勇気を持つことも必要です。
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- 減点方式ではなく加点方式である
予備試験論文でも、加点方式が採用されている上、文章力・思考力も重視されていると思われるため、正解筋から外れた論述をすることを恐れて何も書かないよりも、外れても構わないからそこそこ正確な法知識を使ってそれっぽい抽象論を構築して当てはめを書いたほうが点が入ります。なので、問題文のヒントに気が付いたら、どう法律構成すればいいのかが分からなくても、法知識と文章力・思考力を総動員して条文を出発点として何らかの抽象論を構築し、当てはめに入りましょう。
また、規範を忘れてしまったという場合でも、規範定立を飛ばさないで、不正確でも構わないので規範を書いたほうが良いです。規範定立をすれば、法的三段論法に従った答案の形式を守ることができますし、採点者に対して事実評価の前提となっている法的観点も伝わるので、一定の加点を見込めます。
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- 取捨選択をする際には大きめの配点項目を優先的に拾う
取捨選択をする際には、大きめの配点項目を優先的に拾うべきです。
配点項目は、大・中・小に分類することができます。刑法であれば、大:罪名、中:理論体系・犯罪成立要件・論点、小:事実の摘示・評価となります。
大きめの配点項目を落とした場合、その分だけ大きく失点することになりますから、出来るだけ、小さめの配点項目を捨てたり簡潔に切り上げることで大きめの配点項目を網羅できるようにする必要があります。
論文試験は、限られた時間をどのように使うことで効率的に配点項目を網羅することができるかという、点取りゲームっぽい側面が強いです。
憲法
- 設問の指示に従う
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- 問題文の指示・誘導に食らいつく
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- 違憲審査の枠組みを崩さない
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- 違憲審査基準の定立では、原則・相場を無視しない
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- 違憲審査基準の適用では、基準ごとの正しい意味に従う・イメージを文章化する
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- 一番重要なことは、問題文のヒントに食らいつき、違憲審査の枠組みに落とし込む形で問題文のヒントを法的に構成し、その内容を文章化して答案に反映することです。例えば、令和1年予備試験憲法では、裁量論で書くべきか、三段階審査論で書くべきか、三段階審査論で書くとして目的手段審査をするべきかなど、「違憲審査の枠組み」レベルのことで悩むと思います。しかし、採点上、そこは重視されていません。令和1年予備試験憲法で「違憲審査の枠組み」の選択が採点に影響するのは、「本事例において、自分にとって書き易い」枠組みを選択することができたかという点です。「本事例において、自分にとって書き難い」枠組みを選択してしまったことにより、問題文のヒントを答案に反映することができなくなった結果として、事実の摘示・評価という小さな配点項目での失点を積み重ねていくことになるという形で、低評価になるわけです。Twitterでは、令和1年予備試験憲法では「違憲審査の枠組み」が大事だといった趣旨の発言を目にしましたが、仮に「違憲審査の枠組み」自体で差がつくと考えているのであれば、本質を見誤っているといわざるを得ません。元ネタとされているエホバの証人剣道実技受講拒否事件最高裁判決については、憲法判断を下していると評価できるのかについて、学者間で意見が割れているほどです。「違憲・合憲」の判断が「正面」から問われた場合における「違憲審査の枠組み」については、学説上、定まっていません。なので、「違憲審査の枠組み」自体で差はつきません。表現規制の典型事案など異なり、「違憲審査の枠組み」が定まっていないからです。ここで大事なことは、①「違憲・合憲」という結論を導くことができる「違憲審査の枠組み」を採用することと、②採用した「違憲審査の枠組み」を前提として、問題文のヒントに食らいつき、違憲審査の枠組みに落とし込む形で問題文のヒントを法的に構成し、その内容を文章化して答案に反映することの2点です。
行政法
- 解答の形式・方向性に関する指示に注意
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- 行政裁量又は要件の規範定立等、法律構成を示す。事実の摘示・評価は法律構成という皿の上でする
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- 分からない問題でも事実の摘示・評価に先立ち法律構成を示す
民法
- 訴訟物又は請求の根拠から考える。請求要件・反論の法的構成・論点が明らかになる
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- 主張・反論の要件事実的分析が論点等の抽出に役立つ
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- 充足しない要件で検討を終える。但し、要件認定の論理的順序を守る
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- 現場思考問題では、原則的結論⇒修正の必要性(原則的結論が妥当でないという価値判断)⇒修正のための理論構成という書き方が役立つことが多い
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- 改正民法からバンバン出題されても焦らない。改正民法からの出題による負担は、皆同じ
会社法
- 最後まで書き切る
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- 条文番号の指摘は必須だが、過剰な文言引用は不要。形式よりも中身優先
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- 特定部分の丁寧さよりも答案全体の網羅性優先。論証はぎりぎりまで短くして構わない。とにかく検討事項の網羅性を重視する
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- 分からない問題・現場思考問題では、条文⇒趣旨⇒規範⇒当てはめという形式を守る
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- 作図が抽出に役立つことあり
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- 利益相反取引、一人会社・一人株主間の利益相反取引、株主全員の同意、特別利害関係株主による議決権行使に注意
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- 原則として判例で書く
民事訴訟法
- 理論体系に従って考える。訴訟物・事実、判決の主文(訴訟物・責任)・理由(114条2項とそれ以外)等
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- マイナー分野等、分からない問題でこそ、問題文のヒント・条文・法解釈に忠実になる
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- 現場思考問題では、原理原則等に関する知識を総動員して理由・規範を捻りだす
刑法
- 出理論体系を守る
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- 出来るだけ構成要件要素を網羅する・規範を定立する
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- 出来るだけ論点は条文の文言に引き付けて論じる
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- 予備試験の刑法は他論点型の傾向にあるから、時間がなければ論証の理由付けを飛ばして規範だけ書く
刑事訴訟法
- 事実の摘示・評価を区別
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- 事実群の評価まで書くのがベスト
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- 限界事例では結論はどちらでも構わない。不利な事実にも言及する等、結論を導く過程が大事
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- 規範自体や規範適用を歪めてまで適法にする必要はない
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- 推認過程の説明が大事。特に伝聞
令和2年予備試験論文と総まくり論証集の対応関係(100%)
司法試験・予備試験における選択科目対策(選択科目の選び方・勉強の仕方)
令和2年予備試験論文の参考答案・解説
令和2年司法試験論文の参考答案・雑感
講義のご紹介
令和6年司法試験 有料講座の合格者数356名
加藤ゼミナールでは、令和6年司法試験において、有料講座の受講者様から356名の合格者を輩出することができました!
令和4年司法試験 110名
令和5年司法試験 212名
令和6年司法試験 356名 2年で3.2倍増!
毎年、順調に有料講座の合格者数を伸ばすことが出来ています。
加藤ゼミナールの講師・スタッフ一同、より多くの方々の合格をサポートすることができるよう、邁進してまいります。
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加藤ゼミナール
加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。
講師紹介
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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