加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

土地所有権に基づく明渡請求訴訟どうしに矛盾関係が認められるか(旧司法試験平成17年第2問)

お世話になっております。民事訴訟法について質問させて頂ければと思います。
前訴で原告甲が被告乙に対してA土地所有権に基づくA土地明渡請求権を訴訟物とするA土地明渡請求訴訟を提起し、請求認容判決が確定し、執行がされた後、乙が甲に対しA土地所有権に基づくA土地明渡請求権を訴訟物とするA土地明渡請求訴訟を提起したとします。
上記の事例で、前訴確定判決の既判力の後訴に対する作用する根拠として、訴訟物の「矛盾関係」があると説明しても宜しいでしょうか。
上記の事例は旧司法試験平成17年第2問の事例なのですが、これについて、予備校の解説でも、「矛盾関係」を理由として既判力の作用を肯定しているものと、既判力の作用を否定した上で信義則によって処理するという2つの説明を目にしたため、気になっております。
私見としましては、勅使河原和彦「読解民事訴訟法」初版142頁以降を見る限り、所有権確認訴訟ならば「一物一権主義を媒介に」矛盾関係があるといえるとしても、所有権に基づく返還請求権が訴訟物となっている場合には「一物一権主義を媒介に」矛盾関係があるとはいえないように思います。しかし、A土地という給付客体の同一性が認められる以上、上記の文献で「同一物について「行ったり来たり」の正反対の請求」と表現されている関係があるともいえ、とすると矛盾関係が肯定できるようにも思え、わからず困っております。
お教え頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。

確かに、基本書で一物一権主義を根拠とする矛盾関係の肯定例として挙げられているのは、甲が乙を被告としてA土地所有権の確認訴訟を提起し、認容判決確定後、乙が甲を被告としてA土地所有権の確認訴訟を提起したというケースです。

しかし、一物一権主義の下、A土地について甲の単独所有権と乙の単独所有権が併存することはあり得ませんから、甲のA土地についての単独所有権の一行使態様であるA土地の明渡請求権と乙のA土地についての単独所有権の一行使態様であるA土地の明渡請求権も併存し得ないとして、矛盾関係を肯定することになると思われます。藤田広美「解析民事訴訟法」第2版374頁でも、旧司法試験平成17年第2問設問2について、「実体法上の一物一権主義を媒介として」との理由から矛盾関係が肯定されています。ここでは、前訴と後訴とを比較する際に、甲のA土地所有権の所在という判決理由中の判断対象(前訴の請求原因事実)を後訴との比較対象として取り上げているのではなく、A土地の単独所有権に基づくものであるという”訴訟物の性質”にまで踏み込んだうえで前訴と後訴の訴訟物どうしを比較しているのです。

なお、和田吉弘「基礎からわかる民事訴訟法」初版432頁では、「AのBに対する所有権に基づく引渡請求とBのAに対する所有権に基づく所有権移転登記請求とは、矛盾関係とならない。…既判力の客観的範囲の問題として、それらの請求の所有権についての判断にはそもそも既判力が生じないとされているからである」とあります。前訴と後訴とがいずれも明渡請求権である本問とはやや異なるケースに関する記述ではあるものの、前訴と後訴の比較の仕方によっては、矛盾関係を否定する(ひいては、既判力の作用を否定する)という考えもあると思います。ちなみに、争点効が問題となった最判S44.6.24(百84)は、前訴の訴訟物が売買契約に基づく明渡請求権(後に提起、先に確定)、後訴の訴訟物が所有権に基づく登記請求権(先に提起、後に確定)という事案に関するものですので、本判決を根拠として所有権に基づく登記請求権どうしは矛盾関係にないと説明することはできません。

試験的には、会議録で特段の誘導がなければ、①既判力の作用を認める余地があることを指摘して既判力による遮断を説明した上で、②既判力の作用を否定する考えもあることを指摘して「仮に既判力が作用しない場合には」と書いてから争点効による処理も論じる(争点効否定説に立つのであれば、信義則まで論じる)というのが、丁寧な書き方であると思われます。

2021年04月03日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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