加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

債務者は債権者代位訴訟に共同訴訟参加できるか、できるとして実益があるか

いつもお世話になっております。
債務者が債権者代位訴訟に訴訟参加する際の参加形態について質問がございます。
債務者が被保全債権の存在を争いつつ参加する場合の参加形態について、共同訴訟参加と独立当事者参加のいずれの要件も満たしている場合に、「債務者はいずれの参加形態でも参加することができる」と結論付けることは誤りなのでしょうか。
旧司法試験平成4年度第2問小問3において、「共同訴訟参加の要件も満たすが、本問では独立当事者参加を選択すべきである」との解説を読んで気になったため、質問させて頂きました。
ご回答頂けますと幸いです。
よろしくお願いいたします。

旧司法試験平成4年第2問(3)は、甲が乙に対する貸金債権を被保全債権として乙の丙に対する売買代金債権を被代位権利とする債権者代位訴訟を提起した事案において、乙が貸金債権の成立を争いつつ甲丙間の債権者代位訴訟に当事者として参加することの可否が問われています。

まず、改正民法下では債権者代位権が行使されても債務者の被代位権利についての処分権限は制限されませんが(民法423条の5前段)、甲が債権者代位訴訟において売買代金を甲に支払うように請求している(民法423条の3前段)のであれば、丙が甲と乙のいずれか一方に弁済をすれば他方の請求が認められなくなる(民法423条の3後段参照)という意味で、甲の請求と乙の請求とが請求の趣旨のレベルで(判決内容の実現可能性というレベルで)論理的に両立しないことになるため、「訴訟の目的の全部又は一部が自己の権利であることを主張する」という権利主張参加の要件を満たします。

次に、上記の通り処分権限の制限がないことから乙には債権者代位訴訟における原告適格が認められる上、甲が受けた判決効が乙に拡張される関係にもある(民事訴訟法115条1項2号)ため、共同訴訟参加の要件も満たします。

したがって、乙は、甲丙間の債権者代位訴訟に独立当事者参加することも共同訴訟参加することもできます。

もっとも、乙は、債権者代位訴訟の原告側に共同訴訟参加しても、貸金債権の不存在を争うことはできませんし、仮に甲が自己への直接支払いを求めている場合には乙は自己にとって不利益な判決を目指した訴訟に協力することになるため、乙のニーズに適合しませんから、乙は共同訴訟参加ではなく独立当事者参加するべきである、という結論になります。

2021年04月15日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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