質問コーナー

既判力の作用と主観的範囲は別次元の問題か?

加藤先生、こんにちは。
民事訴訟法について以下のように質問したいと思います。
既判力の作用と既判力の主観的範囲は別次元に問題であることは理解しているつもりでありますが、令和1年予備試験民事訴訟法設問2の解き方について、自分は既判力の主観的範囲の問題であるとして115条1項4号の類推適用で前訴の既判力はZに拡張され、Zの主張は排斥されるとの結論を出しまして、答案を締めました。
しかし、他の答案を見る限り、既判力の作用をも検討している答案が多くあります。
そこで、自分の疑問として、Zに前訴の既判力が拡張されるとしても、その後に既判力の作用を検討しなければならないかのことです。
ご回答よろしくお願い申し上げます。

既判力が後訴に作用するか否かと、既判力の主観的範囲とは、別次元の問題です。

既判力の拘束を受ける後訴当事者の主張が排斥されるのは、後訴に作用する既判力が生じている前訴判決の判断内容と抵触する場合に限られるため、仮に既判力が後訴に作用しないのであれば、既判力の主観的範囲内にある後訴当事者の主張を既判力によって排斥する余地がないからです。

したがって、①既判力が後訴に作用することと、②既判力が後訴の当事者に及ぶ(後訴の当事者が既判力の主観的範囲内にある)こと、及び③後訴の当事者の主張が既判力が生じている前訴判決の判断内容と抵触するものに当たることの3点を満たす場合にはじめて、後訴の当事者の主張が既判力の消極的作用により排斥されることになります。

よって、既判力の主観的範囲が問題となる事案でも、既判力が後訴に作用するか否かも検討する必要があります。

もっとも、既判力の主観的範囲の拡張場面のうち115条1項3号に限っては、①と②の結論がずれることはないと思います。「口頭弁論終結後(既判力の基準時の後)に、訴訟物たる権利又は義務自体の主体となった者及び訴訟物たる権利関係又はこれを先決関係とする権利関係について当事者適格を取得した者」という「承継人」の定義の中に、訴訟物どうしが既判力が作用する関係にあることが織り込み済みであると考えられるからです。

2021年08月28日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
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 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
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・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
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・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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