加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

0

既判力に準ずる効力が後訴に作用するかについては、何と何を比較して判断するべきか

お世話になっております。
民事訴訟法の「既判力に準ずる効力」について質問があります。
前訴確定判決の既判力(114条1項)が後訴に作用するかは、前訴と後訴の訴訟物とが同一、先決又は矛盾の関係にあるかにより判断することになるかと思います。では、前訴確定判決の「既判力に準ずる効力」が後訴に作用するかについては、何と何をどのように比較して判断すればいいのでしょうか。
私としては、「既判力に準ずる効力」が生じている判断事項と後訴の訴訟物とを比較して、同一、先決又は矛盾の関係にあるかにより判断することになると考えております。
しかし、この点について解説している文献を発見できず、気になっております。
お教え頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

その理解で正しいです。私も、同じ考えです。

114条1項に基づく既判力が後訴に作用するかを判断する際に「後訴の訴訟物」との比較対象として「前訴の訴訟物」が挙げられるのは、114条1項に基づく既判力(後訴に作用するかが問題となっている既判力)が生じているのが「前訴の訴訟物」だからです。なので、114条2項に基づく既判力が後訴に作用するかを判断する際には、「後訴の訴訟物」との比較対象は「前訴の訴訟物」ではなく、114条2項の既判力が生じている「相殺の抗弁に供された自働債権」となります。

上記のことからすると、既判力に準ずる効力が後訴に作用するかは、既判力に準ずる効力が生じている「主文中で判断が示された責任に関する事項」と「後訴の訴訟物」とを比較して同一、先決又は矛盾の関係に立つか否かにより判断することになります。

例えば、平成29年司法試験設問3では、XのYに対する売買契約に基づく本件絵画引渡請求(予備的請求)に対して「Yは、Xから200万円の支払いを受けるのと引き換えに、Xに対して、本件絵画を引き渡せ」との引換給付判決が下され、それが確定した後に、YがXに対して代金200万円の支払いを求めて給付訴訟を提起したという事案において、「代金額200万円」という部分を含む引換給付の旨について既判力に準ずる効力が生じます。そして、既判力に準ずる効力が生じている「代金200万円」という点は、後訴の訴訟物である売買代金支払請求権との間で同一又は先決の関係に立ちますから、同一又は先決の関係を理由として、「代金200万円」という点について生じている既判力に準ずる効力が後訴に作用することになり、その結果、Yが前訴基準時前の事由を主張して「代金200万円」という判断内容を争うことが禁止されます(既判力に準ずる効力の消極的作用)。

2021年03月21日
講義のご紹介
もっと見る

コメントする

コメントを残す

コメントをするには会員登録(無料)が必要です
※スパムコメントを防ぐため、コメントの掲載には管理者の承認が行われます。
※記事が削除された場合も、投稿したコメントは削除されます。ご了承ください。

加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

kato portrait
加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
質問コーナーのカテゴリ
ブログ記事のカテゴリ