質問コーナー「 刑法 」
50件の質問

特に出題可能性の高いものを10個厳選するのであれば、以下の通りです。 故意行為を利用した間接正犯事例における故意ある補助的道具に関する学説対立 方法の錯誤における抽象的法定符合説と具体的法定符合説の対立 併発結果の事例における一故意犯説と数故意犯説の対立 被害者の承諾及び自殺関与罪・同意殺人罪における法益関係的錯誤説と条件関係的錯誤説(重大な錯誤説)の対立 原因において自由な行為の理論における学説対立 共同正犯の抽象的事実の錯誤における犯罪共同説と行為共同説の対立 承継的共同正犯に関する学説対立 共同正犯関係からの離脱において物理的因果性だけが残存する場合おける学説対立(離脱肯定説、離脱否定説 […]

2021年05月10日

中止犯の任意性に関する主観説は「行為者ができると思ったのに止めたのか、それともできないと思って止めたのか」を基準にする見解であり、客観説は「行為者の認識した事情が経験上一般に犯行の障害となるようなものか否か」を基準とする見解です(山口厚「刑法総論」第3版301頁)。 客観説も、全ての事情について「経験上一般に犯行の障害となるようなものか否か」を問題にするのではなく、「行為者の認識した事情」について「経験上一般に犯行の障害となるようなものか否か」を問題にする見解であるため、主観説と客観説とで結論が異なるケースはさほど多くありません。 とはいえ、行為者が、経験上一般に犯行の障害となるような事情につ […]

2021年05月03日

間接正犯類似説は、原因行為を実行行為と捉える見解ですから、ご質問の事例だと、原因行為である飲酒行為を殺人罪の実行行為と捉えることになります(大塚裕史ほか「基本刑法Ⅰ」第3版226頁)。 そして、間接正犯類似説では、実行行為である原因行為時と結果行為時において殺人罪の故意が必要とされます(大塚裕史ほか「基本刑法Ⅰ」第3版227頁。これを、二重の故意といいます)。ご質問の事例では、飲酒行為の時点では暴行又は傷害の故意しかないのですから、二重の故意の問題に言及するまでもなく、実行行為時における殺人罪の故意がないとして、殺人未遂罪の成立が否定され、原因行為と被害者重症との間の因果関係が認められるのであ […]

2021年04月25日

2項強盗殺人罪では、①「強盗」要件との関係で236条2項の強盗罪を侵したことが必要とされ、②これが認められた場合に初めて、殺人罪の実行行為又は「実行に着手」が問題となります。 ①では、単に2項強盗罪における実行行為である「暴行又は脅迫」が認められれば足りるのですから、ここでは殺人の実行行為又は「実行に着手」まで認定する必要はありません。したがって、①と②は別次元の要件であり、①は②に先行して認定される要件であるという位置づけになります。 もっとも、①について、②の結論を先取りする形で認定する場合もあります。それが、令和2年司法試験設問3の事案において、Aに睡眠薬を飲ませた第1行為について、㋐「 […]

2021年04月25日

ご質問について、平成25年司法試験の事案を簡単なものに修正した上で、説明いたします。 暴力団組長である甲は、末端組員である乙に対して、自動車内にVが監禁されている事実及び自らのV殺害計画を秘したまま、自動車を燃やして処分するように指示した。 乙は、了承の上、事情を知らないまま、自動車の走行を開始した。 乙は、途中で、自動車内にVが監禁されている事実を知り、これにより甲のV殺害計画にも気が付いた。 乙は、組長甲からの命令であることに加え、Vに対して個人的な恨みを持っていたことから、自動車を燃やしてVを殺害しようと決意し、自動車の走行を継続した。 乙は、目的地に到着し、自動車に放火して、Vを焼き殺 […]

2021年04月06日

まず、「甲に殺人既遂罪が成立しないという結論の根拠となり得る具体的な事実として…考えられるものを3つ挙げた上で、上記の結論を導く理由を事実ごとに簡潔に述べなさい」という設問は、①「甲に殺人既遂罪が成立しないという結論の根拠となり得る具体的な事実として…考えられるものを3つ挙げ」ることと、②「上記の結論を導く理由を事実ごとに簡潔に述べなさい」の2つに分けることができます。 ①事実については、簡潔にではなく、具体的に摘示する必要があります。 これに対し、②「理由」である理論面及び当てはめは、「簡潔」に書けば足ります。具体的には、問題提起に属することを書くというイメージです。規範を導く理由付けを書い […]

2021年04月06日

確かに、全体的考察により一個の過剰防衛の成立余地を認める判例・通説については、「違法阻却段階での全体的考察は、構成要件段階におけるそれの反映ということになる」(平成21年重要判例解説刑法2解説2)との理解もありますから、この理解を前提にするならば、過剰防衛の一体性に関する[論点2]は第1行為と第2行為の双方を対象とした客観的構成要件該当性の最初の段階で先出しして論じ、その結果が責任段階における過剰防衛の成否と連動することになる、と考えることになります。 しかし、試験対策としては、上記の書き方は避けるべきです。[論点2]が出題された平成23年司法試験の出題趣旨・採点実感でも、上記のような書き方は […]

2021年03月30日

同時傷害事例のうち後行者について承継的共同正犯の成否が問題となるのは、傷害結果が①「後行者の共謀加担前における先行者の暴行」と②「後行者の共謀加担後における先行者又は後行者の暴行」のいずれから生じたのが不明である場合です。 仮に①により傷害結果が生じている場合には、先行者の暴行①と傷害結果との間に問題なく因果関係が認められるため、傷害結果が先行者に帰責されます。②により傷害結果が生じている場合には、先行者の暴行②により傷害結果が生じているときは問題なく先行者に傷害結果が帰責され、後行者の暴行②により傷害結果が生じているときは一部実行全部責任の原則(60条)により先行者にも傷害結果が帰責されます […]

2021年02月21日

真正身分犯は、身分があることによって初めて犯罪行為となるものであり、不真正身分犯とは、身分がなくても犯罪行為となるが身分の存在により刑が加重・減軽されるものです(山口厚「刑法総論」第3版343頁)。 そして、「強盗」身分を有しない者による殺人行為にも殺人罪(199条)が成立することから、強盗殺人罪については、「強盗」身分がなくても犯罪が成立するが、「強盗」身分の存在により刑が加重されるとして、不真正不作為犯として理解することになるのだと思います。

2021年02月14日

刑法では、大きな学説対立として行為無価値論と結果無価値論の対立があり、そのうち行為無価値論(総まくりテキスト・論証集の立場)は、「故意」について、構成要件的故意と責任故意の2つに分類します。 構成要件的故意は、客観的構成要件該当事実の認識・認容を意味します。「構成要件的故意」と表現されることもあれば、単に「故意」と表現されることもあります。 責任故意は、違法性阻却事由を基礎づける事実を認識していないこと(例えば、誤想防衛に当たらないことなど)と、違法性の意識の可能性があること(事実の錯誤説)を構成要素とするものです。責任故意については、構成要件的故意と区別するために、単に「故意」と表現すること […]

2021年02月04日

1.例えば、甲がVに暴行を加えて傷害を負わせ、反抗を抑圧されたVから財物を奪取したという事案(単独犯事例)では、「強取」を認定しなくても、犯罪の成否に影響はありません。もっとも、一応、「強取」についても軽く認定するべきです。犯罪の成否に影響しないとはいえ、強盗致傷罪において強盗自体が既遂に達しているか否かは、量刑事情(のうち犯情に関する事実)として重要だからです。強盗自体が既遂に達している場合における強盗致傷罪の起訴状でも、公訴事実として「強取」まで記載するのが通常です(司法研修所検察教官室「検察講義案」平成24年版235頁)。 2.次に、甲がVに暴行を加えて傷害を負わせ、Vの犯行を抑圧した後 […]

2021年01月18日

信頼の原則の適用を肯定する場合には、信頼の原則が適用された場合における結果回避義務の内容を前提として結果回避可能性を検討することになりますが、これは、結果回避義務違反のところで信頼の原則の適用により結果回避義務が軽減されるという結論を先取りしているにすぎませんから、ご指摘の通り、信頼の原則の論証・当てはめは結果回避義務違反のところで書くことになります。 そうすると、信頼の原則の論証・当てはめをする前に、信頼の原則の適用により結果回避義務が軽減されていることを前提として結果回避可能性を検討していることになるので、結果回避可能性のところでは信頼の原則の適用により結果回避義務が軽減されることを前提と […]

2020年12月31日

不動産を客体とする詐欺罪については、①登記名義の移転により不動産の処分可能性を取得した場合には1項詐欺罪が成立し、②不動産の事実的支配を取得したにとどまる場合には、不動産の事実的支配の利益(居住の利益)を客体として2項詐欺罪が成立する、と理解されています(高橋各論310~311頁、山口各論246頁)。 移転罪における占有は事実的支配に限られているにもかかわらず、不動産の占有については、移転罪においても、事実的支配を内容とする占有ではなく、登記名義による法律的支配を内容とする占有として理解されているわけです。厳密には、「移転罪においては、不動産については、登記名義の保有をもって事実的支配ありとす […]

2020年12月25日

ご指摘の通り、Aに対する発砲は、Aによる「急迫不正の侵害」に対する防衛行為として行われたものですから、正当防衛が成立します。 お詫びの上、テキストの記述を、「数故意犯説からは、Aに対する殺人の故意が認められる。もっとも、Aに対する発砲には、Aによる「急迫不正の侵害」に対して行われたものとして正当防衛が成立するから、Aに対する殺人未遂罪は成立しない。」に訂正させて頂きます。 先ほど、資格スクエアの管理画面から正誤表の更新もさせて頂きました。 教えて頂きありがとうございます。引き続き宜しくお願い致します。

2020年12月21日

共同正犯者間の抽象的事実の錯誤の事例において、③故意又は客観的構成要件該当性に属する抽象的事実の錯誤は「個々の共謀者と実現された犯罪とのズレ」に関する論点であるのに対し、④罪名従属性(共同正犯の本質)は「共謀者間での故意のズレ」に関する論点です。 平成27年司法試験では、甲が乙との間で業務上横領罪について共謀し、窃盗罪を実現したという事案です。模範答案では、業務上占有者と共謀した非身分者には単純横領罪の認識ではなく業務上横領罪の認識を認める見解に立った上で、乙の③錯誤論について「重い罪の認識で軽い罪を実現した場面」として、乙について実現事実である窃盗罪の故意を認めることができるかを問題にしてい […]

2020年12月16日

重要事項性⇒挙動等により「欺」いたといえるか、という流れで論じても、理論的に「誤っている」という評価にはならないと思います。 挙動による欺罔(又は不作為による欺罔)⇒重要事項性という流れで検討する傾向にあるし、甲が〇〇について偽っている⇒甲が偽った〇〇は重要事項性を満たすか思考過程が自然であるため、挙動による欺罔(又は不作為による欺罔)⇒重要事項性という流れで書いたほうが良いということです。 もっとも、重要事項性が認められる一方で挙動による欺罔も不作為による欺罔も認められないという事案では、論点を落としを避けるために、重要事項性から先に書いたほうが良いです(※重要事項性の当てはめと挙動による欺 […]

2020年12月11日

心神喪失は、責任の阻却という形で犯罪の成立を否定するものであるのに対し、心神耗弱は、責任減少を根拠として犯罪が成立した場合における必要的減軽を導くものにすぎませんから、①構成要件該当性⇒②違法性⇒③責任⇒④処罰阻却事由⇒⑤減軽の有無という刑法の理論体系の一番最後(⑤)で顕在化するものです。 したがって、心神耗弱の場合は、犯罪が成立することを認定した上で、原因において自由な行為について論じることになります。

2020年12月01日

確かに、最高裁平成28年決定は、「2人以上の暴行のいずれかと死亡との間に因果関係が肯定される場合」における刑法207条の適用の可否について明示的に言及するにとどまり、「2人以上の暴行のいずれかと傷害との間に因果関係が肯定される場合」における刑法207条の適用の可否については明示的に言及していません。 しかし、暴行による傷害致死の事案では、暴行と死亡との間に死因となった傷害が介在しているため、傷害致死罪に刑法207条を適用する前提として、死亡結果の原因である傷害について刑法207条の適用要件を満たす必要があります。 したがって、「2人以上の暴行のいずれかと死亡との間に因果関係が肯定される場合」に […]

2020年12月01日

確かに、詐欺罪は財産犯ですから、財産的損害が発生する蓋然性がない事情については重要事項性を認めることはできません。 しかし、財産的損害=経済的損害ではありません。財産的損害とは、経済的損害を包摂する、経済的損害よりも広い概念です。 したがって、経済的損害が発生する蓋然性がなくても、財産的損害が発生する蓋然性があるのであれば、重要事項性を認める余地があります。例えば、「財物」については「財産的価値が不可欠」であるものの、それは①「金銭的価値ないし経済的価値」に限られず、②「所有者・管理者の主観的価値」、さらには③「他人の手に渡ると悪用されるおそれがあることから自分の手元に置く利益(消極的利益)」 […]

2020年11月30日

乙には、「上口唇切創」の原因である暴行に係る暴行罪の共同正犯は成立しません。 「上口唇切創」が乙の共謀加担前の暴行と共謀加担後の暴行のいずれによって生じたものかを特定できていないということは、「上口唇切創」の原因となった暴行が㋐乙の共謀加担前に行われたのか㋑乙の共謀加担後に甲乙間の共謀に基づき行われたのかを特定できないということです。つまり、㋐の可能性が残るということです。 ㋑の場合、「上口唇切創」の原因となった暴行を甲と乙のいずれが行っていても、一部実行全部責任の原則(刑法60条)により、甲乙間に暴行罪の共同正犯が成立します。これに対し、㋐の場合、甲に暴行罪の単独正犯が成立するにとどまり、乙 […]

2020年11月28日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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