加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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間接正犯事例における被利用者の罪責

総まくり講座を受講させていただいている者です。間接正犯について質問させてください。
講義では、「Xが、Yに万引きをさせた事案」を用いて、Yが正犯のように見えるけれども、実質的にはXが正犯なのではないかという問題意識から、Xの正犯性を検討する旨説明されています。
ここで質問なのですが、この場合においてYの正犯性は問題にならないのでしょうか。「普段からYに激しい暴行をして奴隷のように支配してきたXが、Yに命令して万引きをさせた事案」において、Yは窃盗罪の実行行為を行い、構成要件的故意も不法領得の意思もあるため、Yにも窃盗罪が成立すると思います(Yは成人であることを前提)。
「Yが正犯のように見えるけれども、実質的にはXが正犯なのではないか」という議論は、X「も」正犯なのではないか、という表現が正確でしょうか。つまり、実質的にXが正犯といえたとしても、Yの正犯性が無くなるわけではないという理解で良いでしょうか。初歩的な質問ですが、ご回答よろしくお願いいたします。

間接正犯事例における被利用者の罪責が問題となるのは、典型的には、被利用者にも犯罪の故意がある場合(=故意ある幇助的道具)です。

学説の多くは、利用者に間接正犯が成立する場合に被利用者が直接正犯になるという同時正犯構成を否定していますから、利用者に間接正犯が成立する場合には、実行行為を行う者であっても正犯意思を欠けば正犯ではなく幇助犯にとどまるとして、実行行為を行う幇助犯を認めるべきです。これが判例の立場であると理解されています(大塚裕史「応用刑法Ⅰ」初版385~386頁)。

2024年02月19日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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