加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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強盗殺人罪の成否の検討過程における暴行要件と殺人の実行行為の違い

お世話になっております。
令和2年司法試験刑法について質問させていただきます。
設問3では2項強盗殺人罪の実行の着手が問題となりますが、この検討を強盗の手段たる「暴行」要件の中で検討するのは誤りでしょうか。
実行の着手について、独立したナンバリングで検討すべきか、「暴行」要件の中で検討すべきか、先生のお考えを伺いたいです。

2項強盗殺人罪では、①「強盗」要件との関係で236条2項の強盗罪を侵したことが必要とされ、②これが認められた場合に初めて、殺人罪の実行行為又は「実行に着手」が問題となります。

①では、単に2項強盗罪における実行行為である「暴行又は脅迫」が認められれば足りるのですから、ここでは殺人の実行行為又は「実行に着手」まで認定する必要はありません。したがって、①と②は別次元の要件であり、①は②に先行して認定される要件であるという位置づけになります。

もっとも、①について、②の結論を先取りする形で認定する場合もあります。それが、令和2年司法試験設問3の事案において、Aに睡眠薬を飲ませた第1行為について、㋐「Aの錯誤に基づく無効な同意による薬剤の作用による有形力の行使」とみることで2項強盗罪の実行行為である「暴行」に当たるするのではなく、㋑「究極の反抗抑圧手段である被害者の殺害は実質的に暴行を包含している」とみることで2項強盗罪の実行行為である「暴行」に当たるする構成を採用する場合です。

㋑の構成に立つ場合、①について、②の結論を先取りする形で認定することになります。とはいえ、この場合であっても、①ではあくまでも②の結論を先取りするだけなので、「強盗」に当たることを認定した後に、「暴行」要件とは別の要件として、殺人罪の「実行に着手」の有無について、早すぎた構成要件の実現に関する最高裁平成16年決定の判断枠組みを踏まえて論じることになります。

2021年04月25日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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