加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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初回接見の指定の内容が「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」(刑事訴訟法39条3項但書)であるか否かの判断枠組み

秒速・過去問攻略講座2021を受講させて頂いています。
平成28年司法試験刑事訴訟法設問2において、模範答案では、初回接見が「不当な制限」(39条3項但書)に当たるかについて、「捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能であれば・・即時又は近接した時点での接見を認めるようにするべきである」という規範を示してあてはめているのですが、通常の接見指定の「不当な制限」(39条3項但書)を判断するための比較衡量の規範は示さなくても良いのでしょうか。
また、通常の比較衡量の規範を示した上で、あてはめの中で初回接見の特殊性を踏まえた論述をするという書き方でも大丈夫でしょうか。ご回答どうぞ宜しくお願い致します。

川出敏裕「判例講座   刑事訴処方  捜査・証拠篇」初版210頁・224頁によれば、接見指定制度の趣旨が接見交通権と捜査の利益の調整にあることから、接見指定の内容が「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」か否かは、①「申出がなされた接見の重要性と、即時又は近接した時点での接見を認めた場合の捜査への支障の程度の双方を考慮し」て判断するべきであるとされています。通常の事案であれば、①の比較衡量の判断枠組みを書き、当てはめに入ります。

もっとも、初回接見の指定の場合については、最三小判平成12・3・24・百34が、①の比較衡量において、初回接見の重要性を強調することで、②「即時又は近接した時点での接見を認めても接見の時間を指定すれば捜査に顕著な支障が生じるのを避けることが可能・・なときは、留置施設の管理運営上支障があるなど特段の事情のない限り、・・所要の手続を終えた後において、たとい比較的短時間であっても、時間を指定した上で即時又は近接した時点での接見を認めるようにすべきであ・・る」と述べています。理論面も重視されている刑事訴訟法では、論証として、大きな枠組みである①を書いたうえで、さらに小さな枠組みである②まで書くのが望ましいです。①だと、初回接見の重要性という点が、理論面に反映されないからです。

平成28年司法試験刑事訴訟法は検討事項が極めて多いため、設問ごとに、理論面と当てはめの双方について取捨選択をせざるを得ません。そこで、模範答案では、論証について、①を飛ばして②から書いています。①と②のどちらを優先するべきかは悩ましく、通常であれば上位規範を飛ばして下位規範を書くということはないのですが、初回接見の指定内容については、①を飛ばして②から書いたほうが良いと思います。最三小判平成12・3・24・百34が明言しているのは①ではなく②である上、①を上位規範として紹介している基本書は川出敏裕「判例講座   刑事訴処方  捜査・証拠篇」初版224頁くらいであるため、採点上、①よりも②のほうが重視されていると思われるからです。しかも、①だけを示しても、比較衡量の結果がどうなると「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」に当たるのか(又は当たらないのか)が明らかになりませんから、判断枠組みを示しているにとどまり、厳密な意味では「規範を定立した」とはいえません。

参考にして頂けますと幸いです。

2020年09月29日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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