加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

司法試験プレテスト設問1 現行犯逮捕→緊急逮捕→勾留請求の事案における論点の展開

いつもお世話になっております。秒速・総まくり2021を受講している者です。刑事訴訟法47頁で取り上げられている司法試験プレテスト設問1について質問がございます。
この問題では、①現行犯逮捕の適法性を検討した後、②総まくり46頁の[論点4]「違法逮捕後の再逮捕」を検討し、②において現行犯逮捕の違法が極めて重大であるとして再逮捕(緊急逮捕)の適法性も否定された場合、③その後の勾留請求については、㋐逮捕前置主義に反するから却下されるべきであるとだけか書けばいいのでしょうか。それとも、㋑総まくり50頁[論点8]「違法逮捕に引き続く勾留請求」として論じ、その当てはめで、緊急逮捕自体の違法の重大性を検討するべきでしょうか。

※ ご質問の内容を整理させて頂きました(管理人:加藤喬)

①現行犯逮捕の適法性を検討し、違法であると結論付けた後に、②違法逮捕後の再逮捕(総まくり47頁[論点4])として緊急逮捕の可否を検討します。②において、現行犯逮捕の時点で緊急逮捕の実体的要件を満たしていたと評価される場合には、緊急逮捕は再逮捕であることを理由として否定されることにはなりません。あとは、③緊急逮捕の時点で緊急逮捕の要件を充足するかを軽く検討し、これを満たすとの結論になったのであれば、緊急逮捕は適法であるといえますから、勾留請求は逮捕前置主義の要請を満たすことになります。したがって、④違法逮捕後の勾留請求の可否(総まくり50頁[論点8])は顕在化しません。これが、2006.No.307「法学教室 特集 新司法試験プレテスト(必須科目)」47~50頁における長沼教授の解説です。

これに対し、②において、現行犯逮捕の時点で緊急逮捕の実体的要件を満たしていなかったと評価される場合には、再逮捕(緊急逮捕)は違法となります。この場合、③違法逮捕に引き続く勾留請求の可否[論点8]の論証を展開する余地があります。違法逮捕に引き続く勾留請求が逮捕に重大な違法がなければ許容されると理解されているのは、「逮捕が違法であっても、その期間中の捜査により身体拘束の必要性が減少するため、拘束期間中の短い逮捕中にできる限り捜査を尽くさせることで不要な勾留を回避するという逮捕前置主義の趣旨が満たされるのが通常である」からです。現行犯逮捕後の緊急逮捕中に実際に捜査をしていたのであれば、上記「 」の理由付けが妥当するため、緊急逮捕に重大な違法がなければ勾留請求を認めるべきであるという立場を前提として、緊急逮捕の違法の重大性を検討することになります。これに対し、本問では、検察官は、現行犯逮捕が違法であると判断し、逮捕前置主義への抵触を避けるための手段として緊急逮捕しているだけであり、緊急逮捕中に勾留期間短縮に繋がると評価できるだけの捜査を行っているとはいえないと考えるのであれば、上記「 」の理由付けが妥当しないため、上記「 」を理由とする論証を展開するのは不適切です。したがって、上記「 」の理由付けが妥当しないとして、緊急逮捕の違法が重大でなくとも勾留請求は認められないと結論付けるべきです。

2020年11月28日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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