加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

質問コーナー

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ロックアウトの正当性を検討するべき場面、ロックアウトの効果の人的範囲

いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
ロックアウトについて2点質問がございます。
①1つ目は、ロックアウトの正当性を検討すべき場面についてです。
例えばH25司法第2問のように問題文に露骨に事情が挙がっており、使用者が建物を閉鎖している状況下でロックアウトの正当性が問題になるのは理解できます。
しかし、例えばH28司法第2問のように一部ストがなされ、客観的には整備職の従業員に従事可能な業務があったにもかかわらず使用者が労働者の意に反して休業を命じた場合にも、使用者が労務受領を拒否している点ではロックアウトといえ、その正当性を検討すべきとはならないのでしょうか?(もっとも、H25と異なり検討に足る事情がほとんど無いので問題にならないことは分かるのですが、論理的には有り得る筋なのではないかと思った次第です)
②2つ目に、仮に一部ストに対抗した使用者によるロックアウトに正当性が認められる場合、「使用者は賃金支払義務を免れる」(丸島水門事件)結果、非組合員に対しても休業手当支払義務を免れることになるのでしょうか?
一部ストによって労務に従事不可能となっても非組合員には休業手当は支払われるのがノース・ウェスト航空事件の理解だと思うのですが、この原則は一部ストに対する正当なロックアウトの結果、非組合員労働者が労務に従事不可能となった場合でも妥当するのでしょうか?
長文になってしまい大変恐縮ですが、何卒宜しくお願い致します。

①ロックアウトの正当性を検討すべき場面

使用者のロックアウトは、使用者が労働争議において労働者側に圧力をかけるために、なお労働が可能・有価値である状況下で行われるものであり、典型的には、労働者側の争議行為の終了後に行われるものです。例えば、平成25年司法試験第2問でも、Y社がホテル建物を閉鎖して営業休止し、X1らの就労を拒否したのは、X1らの2日間にわたるストライキの終了直後です。

他方で、ストライキ中の賃金・休業手当が問題となった平成28年司法試験第2問では、Y社は、ストライキ中に、ストライキにより運行できなくなるバス車両の所属する営業所においてバス車両の点検・整備をする必要がなくなるために、その労働が不能・無価値となることを理由として、同営業所に所属する整備職の従業員に対して休業を命じているにすぎませんから、これは使用者のロックアウトに当たるものではありません。

なお、「詳解 労働法」第2版(著:水町勇一郎)1174頁では、「争議行為不参加者(一部スト)の賃金請求権…とロックアウトにおける賃金請求権との局面の違いは、労働者側の争議行為により他組合員・非組合員の労働も不能・無価値になっている中での労務受領拒否(前者。原則賃金請求権消滅)か、なお労働が可能・有価値のなかでの労務受領拒否(後者。原則賃金請求権存続)かにある。」とあります。

②仮に一部ストに対抗した使用者によるロックアウトに正当性が認められる場合、「使用者は賃金支払義務を免れる」(丸島水門事件)結果、非組合員に対しても休業手当支払義務を免れることになるのか

使用者のロックアウト権とは、「労働者側の争議行為によりかえって労使間の勢力の均衡が破れ、使用者側が著しく不利な圧力を受けることになるような場合」における「労使間の勢力の均衡を回復するための対抗防衛手段」(丸鳥水門事件)ですから、ロックアウト権の効果(賃金支払義務を免れる)が認められる人的範囲は、争議行為を行っている「当該労働組合ないし労働者集団及びその構成員」(労働組合が争議行為を行っている場合であれば、争議行為参加者に限らず、当該労働組合の組合員全般を意味する)に限定されるべきです。丸鳥水門事件判決は、「ロックアウト…の…相当性を認めうる場合には、使用者は、正当な争議行為をしたものとして、右ロッククアウト期間中における対象労働者に対する個別的労働契約上の賃金支払義務をまぬかれるものといわなければならない。」と判示しており、ここでいう「対象労働者」とは、ロックアウトの対象となっている労働者、すなわち「当該労働組合ないし労働者集団及びその構成員」を意味すると考えられます。

「労働法」第12版(著」菅野和夫)998~999頁でも、「ロックアウトが労働争議における労働者の業務阻害行為に対する対抗防衛手段として相当性が認められる場合にも、ロックアウトの相手方は業務阻害行為を行っている当該労働組合ないし労働者集団およびその構成員(またはその援助者)に限定されるべきである。使用者のロックアウト権は労働争議の相手方たる労働組合ないし労働者集団との対抗関係における防御的権利として認められたものだからである。したがって、その法的効果を非組合員や他組合員に及ぼすことは許されないと解される。」とあります。

したがって、ロックアウト権の効果が及ばない非組合員及び他組合員の賃金・休業手当の有無は、ロックアウトの正当性ではなく、民法536条2項(賃金)と労働基準法26条(休業手当)により判断されることになります。

2023年07月07日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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