質問コーナー「 刑事訴訟法 」
32件の質問

逮捕に伴う無令状捜索差押えの実質的根拠に関する学説対立の本質は、無令状捜索差押えの許容範囲を画する際に①「証拠存在の蓋然性の一般的な高さ」に加えて②「証拠保全の緊急の必要性」まで要求するべきかという点です。 ①で足りるとするのが相当説(合理説)、①に加えて②も必要とするのが緊急処分説です。 無令状捜索差押えが許容されるのは、相当説からは①が妥当する範囲、緊急処分説からは①②の双方が妥当する範囲となります。 このように、緊急処分説からは、相当説に比べて、無令状捜索差押えの許容範囲が狭くなります。①を欠くが②が妥当するため無令状捜索差押え可能、という解釈にはなりません。 というように、少なくとも両 […]

2021年05月07日

【別紙1】の直接の立証事項たる要証事実は、「調書記載の再現通りの犯罪事実」です。したがって、【別紙1】は直接証拠です。他方で、【別紙2】は、実質証拠ではなく、直接証拠である【別紙1】の信用性を基礎づける補助事実を証明するための補助証拠です。 そうすると、【別紙1】が証拠能力を欠く場合、【別紙1】から独立した証拠価値を持たない【別紙2】の証拠能力を論じる実益はないです。もっとも、司法試験ではそのように考えるべきではなく、【別紙1】の証拠能力の有無にかかわらず、【別紙2】の証拠能力についても検討しましょう。因みに、【別紙1】の証拠能力の肯否と【別紙2】の証拠能力の肯否は別次元のことですから、【別紙 […]

2021年05月03日

ご指摘の通り、「公訴事実の同一性」は、公訴事実の横の広がりが問題となっている場合(新訴因が事実及び犯罪として旧訴因と両立し得るものとして主張される場合)には単一性により判断され、公訴事実の縦の変化が問題となっている場合(新訴因が事実又は犯罪として旧訴因と両立しないものとして主張される場合)には狭義の同一性により判断されることになります。 例えば、検察官が被告人を住居侵入罪で起訴した後に、侵入先の住居内で窃盗も行っていたとして窃盗罪でも起訴するために訴因に窃盗を追加する場合(これは、狭義の「追加」ですが、広義では「変更」です)には、単一性が問題となり、両者は牽連犯(刑法54条1項前段)として実体 […]

2021年04月28日

所持人の承諾なき所持品検査の限界は、(ⅰ)司法警察活動であれば令状が要する強制処分に至るものであってはならないことと、(ⅱ)必要性と法益侵害性との間の合理的権衡が保たれていることからなります。 米子銀行強盗事件が挙げる要件のうち、①「捜索に至らない」こと及び②「強制にわたらない」ことが(ⅰ)に、③「所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との均衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる」ことが(ⅱ)に対応します。 したがって、③については、天秤の片方に「必要性、緊急性、これによって…保護される公共の利益」を乗せ、もう片方に「所持品検査…によっ […]

2021年02月20日

秒速・総まくり論証集55~56頁[論点2]では、検察官が幇助の事実を訴因として潜在的・黙示的に主張していないと仮定して、縮小認定の可否に先立ち、訴因変更の要否から検討しています。そして、訴因変更の要否については、古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」第2版216頁における「共謀事実も幇助事実も訴因の特定にとって不可欠な事実であり、両者の食い違いは構成要件を異にするもので(共謀共同正犯は、刑法60条による基本的構成要件…の修正形式、幇助は刑法62条による基本的構成要件…の修正形式)、「実質的な食い違い」ということができ(平野・前掲152頁は、裸の事実としては極めて僅かな事実の食い違いでも、それが構成要件 […]

2021年02月07日

合格水準の論述であると思います。「しかしながら…」以降が、偽計自白の任意性を否定した最高裁大法廷判決昭和45・11・25を参考にしたものであることも伝わってきます。 もっとも、「確かに、捜査官が偽計により自白を獲得したこと自体が、自白の証拠能力の否定に結びつくわけではない。」という部分は、理由が全く伝わらないので、削除しても構わないと思います。任意性説の規範に対応した当てはめになっていないと思います。

2021年01月21日

緊急処分説に立つ場合、「逮捕する場合」と「逮捕の現場」のいずれについても、無令状捜索差押えの実質的根拠である①「証拠存在の蓋然性の一般的な高さ」と②「証拠保全の緊急の必要性」が妥当する範囲に限定して解釈することになりますが、あくまでも、「一般的に①・②が認められるのか」という観点から文言を解釈するにととどまります。したがって、「逮捕する場合」と「逮捕の現場」のいずれについても、当該事案において実際に①や②が認められるかということは度外視して解釈及び当てはめをすることになります。 当該事案において実際に①が認められない場合には、捜索の物的範囲が否定されることになります(合理説からも、相当説からも […]

2021年01月21日

補強証拠が必要とされる範囲について、判例は実質説、学説の多くは罪体説に立っていると理解されています(宇藤崇ほか「リーガルクエスト 刑事訴訟法」第2版451~453)。 酒巻匡「刑事訴訟法」初版517頁では「自白偏重により架空の犯罪事実が認定されてしまう危険防止の観点からは、客観的事実のうち犯罪構成要素の主要部分に補強が必要というべきである」とあるように、罪体説は、「架空の犯罪事実が認定されてしまう危険防止」を重視して、念には念をということで、罪体の重要部分のについて補強を必要とする見解です(古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版309頁)。 しかし、罪体の重要部分について補強がなくても、自白の真 […]

2021年01月18日

拳銃譲渡に関する甲乙間の会話の使い方としては、①要証事実を甲乙間の会話の内容の真実性を前提としたものにする(甲乙間の会話の内容たる事実を要証事実とする)、②甲乙間でそのような内容の会話がなされたことを要証事実とする、③甲乙間で何らかの会話がなされたことを要証事実とする、という3パターンが想定されます。 ①は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲と乙が拳銃譲渡の合意をした」という主要事実を直接に証明するというものです(直接証拠型)。この場合、要証事実との関係で甲乙の会話の内容の真実性が問題となるため、伝聞証拠です。 ②は、捜査報告書中の会話部分(証拠)から「甲乙間で拳銃譲渡を窺わせる内容の会話 […]

2020年12月25日

①人権擁護説及び違法排除説からは、不任意自白であるとの結論になった場合、その獲得手続にも違法性があるとの結論になります。これに対し、虚偽排除説からは、自白獲得過程における黙秘権侵害や他の法令違反に着目して不任意性を判断するわけではありませんから、不任意自白であるとの結論になったからといって当然にその獲得手続にも違法性があるとの結論にはなりません。 見解2の具体例と比較してみると分かると思いますが、見解2では虚偽の不起訴約束の場合には黙秘権や供述の自由の間接的侵害が認められるとしていることから、真実の不起訴約束の場合には黙秘権や供述の自由の間接的侵害を認めることは困難です。ちなみに、平成27年司 […]

2020年12月16日
いつも大変お世話になっております。 平成27年司法試験第2問(刑訴)の設問2に関連して、自白法則と排除法則の関係性について、質問がございます。 本件文書及び本件メモの証拠能力について、排除法則によって検討する際、新しい毒樹の果実論(「先行手続き(起点となる手続き)と証拠(第1次的証拠・派生証拠を問わず)との関連性」)を規範にしようと考えました(伊藤裁判官補足意見の毒樹の果実論とは少し異なる規範です)。 本事案では、先行手続たる甲の自白獲得手続と、本件文書及び本件メモとの関連性を検討するかと思います。具体的には、①先行手続に違法があるのか、②先行手続きに違法があるとしても「重大な違法」かどうか、③先行手続に重大な違法があるとしても、証拠(本件文書・本件メモ)との密接関連性があるかどうか、を検討するかと思います。 仮に、自白法則で虚偽排除説を採る場合、上記判断枠組み(①から③)のどこで自白法則を論じることになるのでしょうか?そもそも、虚偽排除説を採る場合は、上記判断枠組みからは外れ、別途自白法則を検討することになるのでしょうか?別途自白法則を検討するとしても、虚偽排除説ですと、先行手続きの違法性には着目していないため、上記判断枠組みには当たらなそうに思います。すると、本事例では、仮に自白法則で虚偽排除説を採るならば、新しい毒樹の果実論ではなく、伊藤裁判官補足意見の毒樹の果実論(第1次的証拠と派生証拠との関連性を検討する見解)を採用すべきなのでしょうか? また、本事例で、新しい毒樹の果実論を採るならば、自白法則は違法排除説を採用した方がよいのでしょうか? 宜しくお願いいたします。

まず、①不任意自白の派生的証拠の証拠能力については、初めに自白法則について検討するべきです。虚偽排除説に立つのであれば、ご指摘の通り、自白法則により甲の自白の証拠能力が否定されるからといって当然に甲の自白の獲得手続(先行手続)が違法と評価されるわけではありませんから、派生的証拠について違法収集証拠排除法則の枠組みで論じるのであれば甲の自白の獲得手続が違法と評価されることを別途指摘する必要があります。 次に、②派生的証拠について違法収集証拠排除法則の枠組みで論じる場合、㋐第一次証拠・派生証拠の双方について違法性承継論で一元的に処理する見解(古江賴隆「事例演習刑事訴訟法」第2版418頁)、㋑第一次 […]

2020年12月15日

①現行犯逮捕の適法性を検討し、違法であると結論付けた後に、②違法逮捕後の再逮捕(総まくり47頁[論点4])として緊急逮捕の可否を検討します。②において、現行犯逮捕の時点で緊急逮捕の実体的要件を満たしていたと評価される場合には、緊急逮捕は再逮捕であることを理由として否定されることにはなりません。あとは、③緊急逮捕の時点で緊急逮捕の要件を充足するかを軽く検討し、これを満たすとの結論になったのであれば、緊急逮捕は適法であるといえますから、勾留請求は逮捕前置主義の要請を満たすことになります。したがって、④違法逮捕後の勾留請求の可否(総まくり50頁[論点8])は顕在化しません。これが、2006.No.3 […]

2020年11月28日

被疑者を移動させてから実施する被疑者の身体・所在品についての無令状捜索・差押え(最三小決平8・1・29・百25)を論じる際には、「被疑者の身体及び携帯品のほか、逮捕地点を起点として同一の管理権が及ぶ範囲内の場所」(川出敏裕「判例講座  刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕」初版130頁)という相当説からの定義を飛ばして、いきなり、最高裁平成8年決定を踏まえた論証から書きます。 というのも、例えば、判例の事案のように、警察官が被疑者を公道上で逮捕してから警察署まで連行して身体・所持品について無令状捜索・差押えを実施したという事案では、逮捕地点(公道)と無令状捜索・差押えの実施地点(警察署)とで管理権が異な […]

2020年10月21日

単独犯の事例における甲の犯人性を立証する場合 ㋐メモの記載内容と犯行状況との非偶然的一致(メモと被告事件との結びつき)、㋑メモが甲により作成されたこと(メモと甲との結びつき)が認められる場合には、①メモ(証拠)⇒メモ作成当時の甲の意思計画(要証事実)⇒甲の犯人性(主要事実)、②メモ(証拠)⇒メモの存在・記載自体(要証事実)⇒甲の犯人性(主要事実)という2つの推認過程が、経験則に適う合理的なものとして許容されます。基本書等では㋐が推認過程の合理性の条件として説明されているのは②の推認過程ですが、私は、①の推認過程でも㋑だけでなく㋐も必要であると思います。なので、ここまでは、質問者様の理解が正しい […]

2020年10月13日

令和1年司法試験設問1でいう「逮捕、勾留及びこれに引き続く・・身体拘束」とは、逮捕・勾留(延長後の勾留を含む)及びそれに基づく身体拘束(逮捕、勾留、延長後の勾留という理解でも構いません)を意味しますから、逮捕・勾留とは区別される「取調べ」を含みません。したがって、究極的に問われていることは、「逮捕・勾留(延長後の勾留を含む)及びそれに基づく身体拘束の適法性」であり、「余罪取調べの適法性」は「逮捕・勾留(延長後の勾留を含む)及びそれに基づく身体拘束の適法性」に影響をし得る限度で問題とし得るにとどまります。 だからこそ、令和1年司法試験刑事訴訟法設問1に関する採点実感では、「逮捕・勾留中の被疑者の […]

2020年10月03日

川出敏裕「判例講座   刑事訴処方  捜査・証拠篇」初版210頁・224頁によれば、接見指定制度の趣旨が接見交通権と捜査の利益の調整にあることから、接見指定の内容が「被疑者の防衛の準備をする権利を不当に制限するようなもの」か否かは、①「申出がなされた接見の重要性と、即時又は近接した時点での接見を認めた場合の捜査への支障の程度の双方を考慮し」て判断するべきであるとされています。通常の事案であれば、①の比較衡量の判断枠組みを書き、当てはめに入ります。 もっとも、初回接見の指定の場合については、最三小判平成12・3・24・百34が、①の比較衡量において、初回接見の重要性を強調することで、②「即時又は […]

2020年09月29日

第三者の自白調書の証拠能力が公判廷で問題になっている場合のうち、令和2年司法試験設問2のように設問により伝聞法則の検討が除外されていないときは、①自白法則の適用の有無と②伝聞法則(伝聞証拠該当性及び321条1項3号該当性)を区別した上で、①⇒②という流れで論じるべきです。②にも配点があるため、①では、論証の枠外の有力説に立ち、証拠能力を肯定するべきです。 その上で、②に入り、伝聞証拠該当性を肯定した上で、321条1項3号の絶対的特信情況の検討過程において、不任意自白であるという事情を表現の誤りを基礎づけ得る外部的附随事情として取り上げることになります(虚偽排除説からだと説明しやすいです)。

2020年09月19日

覚せい剤だけでは、覚せい剤所持(客観的構成要件要素の一つ)を直接に証明することはできないと思います。目撃供述や自白がなければ、覚せい剤の発見状況などの間接事実により、被告人の覚せい剤所持という主要事実を推認するものであると考えます。この推認過程において、覚せい剤という物は、覚せい剤の発見状況という間接事実を証明する証拠の一つとして間接証拠に位置づけられます。そのため、覚せい剤は、覚せい剤所持を立証するための重要な証拠ではありますが、直接証拠ではない、という位置づけが適切であると考えます。当てはめでは、「覚せい剤は、覚せい剤所持を立証するための重要な証拠である」とだけ書き、間接・直接に言及する必 […]

2020年09月15日

222条1項・102条2項は、捜索の実体的要件に属するものであり、実体的要件のうち基本要件を充足する場合に顕在化する加重要件です。つまり、捜索対象とされている場所・物・身体が捜索可能なものであることを前提として、これらが第三者の場所・物・身体である場合には「押収すべき物の存在を認めるに足りる状況」が積極的に認められるという要件を加重するものです。 緊急処分説は、相当説が述べる根拠(証拠存在の蓋然性の一般的・類型的な高さ)が妥当することを前提として、証拠保全の緊急の必要性の存在も加味して、無令状捜索・差押えの許容範囲を相当説よりも限定する見解です(川出敏裕「判例講座  刑事訴訟法  捜査・証拠篇 […]

2020年09月15日

「場所」に対する捜索差押許可状が「場所」内の物に及ぶかどうかを当該場所の管理権が当該物に及ぶかどうかという論点は、①当該場所に置かれているだけの物と、②当該場所に居合わせた者(被処分者、被疑者、第三者)の携帯品の双方を対象とするものであり、①②いずれについても、当該場所の管理権が当該物に及ぶかどうかを基準として当該場所に対する捜索差押許可状が当該物に及ぶかどうかを判断することになります。 なので、捜索場所内でハンドバッグを持っていた乙が捜索の被処分者なのか、被疑者なのか、それとも第三者なのか(さらには、居住者なのか、偶々遊びに来ていた友人なのか)といった事情は、②について「当該場所の管理権が当 […]

2020年09月15日
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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成30年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成29年」
 行政法(法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 平成23~
 25年」行政法(法学書院)

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