加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

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被疑者を移動させてから実施する無令状捜索・差押えの論じ方

秒速・過去問攻略講座2021を受講させて頂いております。
平成25年司法試験刑事訴訟法設問1の「逮捕現場から移動後の捜索・差押え」の論じ方について質問がございます。
移動後の捜索・差押えについては、「逮捕の現場」についての元々の規範(総論24頁[論点1]や脚注3))を定立しないで、いきなり総論25頁[論点3]から書き始めても問題ないでしょうか。

被疑者を移動させてから実施する被疑者の身体・所在品についての無令状捜索・差押え(最三小決平8・1・29・百25)を論じる際には、「被疑者の身体及び携帯品のほか、逮捕地点を起点として同一の管理権が及ぶ範囲内の場所」(川出敏裕「判例講座  刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕」初版130頁)という相当説からの定義を飛ばして、いきなり、最高裁平成8年決定を踏まえた論証から書きます。

というのも、例えば、判例の事案のように、警察官が被疑者を公道上で逮捕してから警察署まで連行して身体・所持品について無令状捜索・差押えを実施したという事案では、逮捕地点(公道)と無令状捜索・差押えの実施地点(警察署)とで管理権が異なるため、「被疑者の身体及び携帯品のほか、逮捕地点を起点として同一の管理権が及ぶ範囲内の場所」という定義を満たさなくなってしまうからです(なお、上記の川出先生の定義は少し分かりにくいのですが、「被疑者の身体及び携帯品」についての無令状捜索・差押えであっても、「逮捕地点を起点として同一の管理権が及ぶ範囲内の場所」で実施される必要があります)。

また、平成25年司法試験設問1の出題趣旨・採点実感でも、最高裁平成8年決定を踏まえた上で自説を展開することだけが求められており、これに先立ち「被疑者の身体及び携帯品のほか、逮捕地点を起点として同一の管理権が及ぶ範囲内の場所」(川出敏裕「判例講座  刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕」初版130頁)といった相当説からの定義を示すことまで求められておりません。

したがって、上記定義を飛ばして、いきなり最高裁平成8年決定を踏まえた論証をから書くことになります。

2020年10月21日
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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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