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リアル解答企画 本番4日目(8月22日) 刑事系の論文試験
刑 法
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所要時間 120分(読む17分 構成21分 答案82分)
想定順位 100番前後
設問全体の雑感
- 全体的に司法試験過去問との関連性が強い。設問1は、平成19年司法試験設問1との関連性が非常に強い。債権者から回収依頼を受けた者が債権回収の手段として恐喝を用いた点、恐喝と欺罔を併用し債権額について欺罔している点、相手方の交付意思が恐喝による畏怖を原因として形成されている点、債権額を超える金銭要求がされている点で共通する。
- 設問2と設問3のうち、早すぎた構成要件の実現については、平成25年司法試験との関連性が強い。
設問1の雑感
- 設問1は、平成19年司法試験設問1にかなり近いと思った。
- 争点は、①600万円の交付意思が恐喝による畏怖と欺罔による錯誤のいずれを原因として発生しているか、②形式的個別財産説と実質的個別財産説のいずれに立つかで被害額が異なる、③恐喝による権利行使としての違法性阻却の可否であり、さらに、④権利行使による違法性阻却では、結果無価値論からは債権額500万円の限度では違法性が阻却され、行為無価値論からは交付額600万円全額について違法性阻却が否定される余地があるのではないか、とも考えた。問題文を読んでいる段階で設問3の検討事項が多いことを想定していたため、気が付いたことをすべて書こうとしたのでは設問3で途中答案になると思い、④については言及しないことにした。
- 小問①では、㋐甲の行為を恐喝罪として捉えた上で、600万円の交付意思が畏怖を原因として発生しているため600万円全額について「人を恐喝して財物を交付させた」という関係が認められると認定した上で、㋑形式的個別財産説から600万円の財産的損害を認めることで、被害額を600万円とする恐喝既遂罪の成立を認める。
- 小問②では、㋒甲の行為を詐欺罪と捉えた上で、債権額についての錯誤がないとして詐欺既遂罪の成立を否定し、被害額を100万円とする詐欺未遂罪の成立を認める構成と、㋓甲の行為を恐喝罪と捉えた上で、実質的個別損害説から100万円の財産的損害を認めることで被害額を100万円とする恐喝既遂罪の成立を認める構成を示す。
- 自説では、「恐喝」 ⇒ 600万円についての「人を恐喝して財物を交付させた」 ⇒ 600万円の財産的損害(形式的個別財産説) ⇒ 権利行使による違法性阻却否定 ⇒ 被害額を600万円とする恐喝既遂罪の成立肯定という構成で書いた。
設問2の雑感
- 甲が睡眠薬をAに飲ませるという第一行為によりAを眠らせた後に、A方で有毒ガスを発生させるという第二行為によりAを殺害する計画に基づき、第一行為に及んだところ、第一行為の段階でAが死亡したという事実は、甲が殺人罪の「実行に着手」する前にA死亡結果が発生したという意味で殺人既遂罪不成立を導き得る。
- 甲が第一行為で用いた睡眠薬には、Aの特殊な心臓疾患を前提としなければ生命に対する危険性が全くないものであったという事実は、相当因果関係説に立った場合に甲の第一行為とA死亡の間の因果関係を否定するという意味で殺人既遂罪不成立を導き得る。なお、不能犯と未遂犯の区別という論点は、事後的に純客観的に見た場合に結果発生が不能であるという場面で問題になるというイメージを持っていたため、第一行為には行為時に存在したAの特殊な心臓疾患という事情を前提にするとAを死亡させる危険性があった以上、不能犯と未遂犯の区別という論点は問題にならないと思った。
- 甲は第二行為でAを殺害しようと計画しており、しかも第一行為で用いた睡眠薬の量ではAは死亡しないと思っていたという事実は、甲には第一行為の時点でAを殺害する認識・認容がなかったとして殺人既遂罪の故意を否定するという意味で殺人既遂罪不成立を導き得る。
設問3の雑感
検討事項が多すぎると思った。実際、途中答案っぽくなってしまった。強盗殺人既遂罪に関する早すぎた構成要件の実現(設問2の①③)では、平成25年司法試験過去問も役に立つと思った。
(1) Eから600万円の払い戻しを受けた行為
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- 原因関係の有無内容にかかわらず預金債権が成立することと、恐喝被害金については誤振込金に関する組戻しのような手続は予定されていないと思われることから、払込みを求めている600万円が恐喝被害金であるという点は重要事項に当たらないとして、錯誤に向けられた「欺」罔行為がないからEに対する詐欺罪不成立。
- 払戻しに関する詐欺罪の成否について、どれだけ配点があるのか定かではなかったし、設問3の検討事項が多すぎることから、ここに時間をかけるべきではないと思い、簡潔な論述にとどめた。
(2) 600万円を自己の債務の弁済に充てたこと
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- 500万円については、Aに対する委託物横領罪が成立。
- 100万円については、甲が委託信任関係に基づかずに占有するB所有物であるため、Aに対する委託物横領罪ではなく、Bに対する占有離脱物等横領罪が成立。
- 債務弁済についても、どれだけ配点があるのか定かではなかったし、設問3の検討事項が多すぎることから、ここに時間をかけるべきではないと思い、簡潔な論述にとどめた。
(3) A所有の高級腕時計を上着のポケットに入れA方から出たこと
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- Aに対する窃盗罪が成立。
- 少なくともA方から出た時点では「窃取」完了が認められるから、上着のポケットに入れた段階で「窃取」完了といえるか(窃盗罪の既遂時期)については言及しなかった。令和1年司法試験では同種行為について窃盗罪の既遂時期にまで言及することが求められているため、何らかの配点はあると思うが、最後まで書き切るために、敢えて言及しなかった。
(4) 第一行為の後、Aが死亡したことについて、強盗殺人既遂罪の成否を検討する
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- 強盗利得罪における「暴行又は脅迫」は処分行為に向けられている必要はないが、財物取得と同視できるだけの具体性・確実性のある利益移転に向けられている必要がある。相続人がいないAが死亡すれば返還債務が消滅するから、「暴行」あり。
なお、「本件債権についえ、その存在を証明する資料はなく、A、B及び甲以外に知っている者もいなかった」という事情は、関係があるようで、関係がないのではないかと思い、使わなかった。
- 240条後段における「強盗」には殺人既遂の故意を有する者も含まれる。したがって、甲も「強盗」に当たる。
- 第一行為の時点における強盗殺人罪の「実行に着手」の肯否について、平成16年・30年判例を踏まえた論証を書き、当てはめをした上で、肯定。
- 危険の現実化説から、第一行為には行為時に存在したAの心臓疾患を急激に悪化させて急性心不全によりAを死亡させる危険性があり、これがA死亡へと現実化したとして、因果関係を肯定。なお、相当因果関係説からの説明⇒不都合性の指摘⇒危険の現実化という流れで書こうかとも迷ったが、時間がないのでやめた。
- 前記③の結論から、第一行為は予定されていた第二行為と一連一体のものとして強盗殺人既遂罪の実行行為を構成すると把握されることになるため、第二行為に留保されていたA殺害の認識・認容が第一行為に前倒しされるから、因果関係の錯誤があるにすぎない。因果関係の錯誤は故意を阻却しないと解されるから、甲には強盗殺人既遂の故意がある。したがって、強盗殺人既遂罪成立。
- 甲は「自己の意思」により「犯罪を中止」”しようとした”。しかし、未遂犯を前提とした中止犯は既遂犯には成立しない。したがって、中止犯不成立。もう少し丁寧に書きたかったが、時間がなかった。なお、中止犯の成立を否定した後に初めて「強盗殺人既遂罪が成立する」という結論を書いたため、刑法の理論体系と整合しない記述になってしまった。
- 罪数処理をする時間はなかった。
刑事訴訟法
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所要時間 120分(読む13分 構成17分 答案90分)
設問全体の雑感
- 例年通り、全体的に司法試験過去問との関連性がかなり強い。
- 設問1は、任意同行後の取調べの適法性が問題になっているという点で、平成26年司法試験設問1と共通する。
- 設問2は、自白法則と違法収集証拠排除法則が出題された平成27年司法試験設問2との関連性が強い。
- 設問3は、同種前科証拠による犯人性立証が出題された平成19年司法試験設問2との関連性が強い。
設問1の雑感
- 設問1は、任意同行後の取調べの適法性が問題になっているという点で、平成26年司法試験設問1と共通する。
- まず、「強制の処分」に当たらないことは明白であるが、平成26年司法試験1では「強制の処分」に当たらないことが明白である取調べ①についても「強制の処分」の意義⇒当てはめという流れで論じることが求められていたため、「強制の処分」の定義を示したうえで問題文の事実を網羅的に使って「強制の処分」該当性を否定した。
- 次に、任意取調べとしての適法性については、判例の下位基準を記憶していなかったため、「社会通念上相当」という上位規範該当性について、取調べの必要性と法益侵害性(本事例では、心身の疲労)とを比較衡量する形で検討した。適法違法の結論について悩んだが、違法にした。
- 最後に、自白を獲得するために偽計を用いたという点に着目して、黙秘権を間接的に侵害するという意味でも違法にした(これについて、設問1の段階で書くべきことなのか迷った)。
設問2の雑感
- 小問1では、小問2の具体的検討(当てはめ)で使う抽象論について言及することが求められているのではないかと思った。
- 自白法則と違法収集証拠排除法則の双方が問題となり得る事案における両者の関係、自白法則に関する論証、違法収集証拠排除法則に関する論証の3点について言及。
- 小問2では、自白法則と違法収集証拠排除法則のいずれとの関係でも証拠能力を否定する。
- なお、設問2における「甲の自白」とは事例中の「甲の・・・自白を内容とする供述証拠」を意味しているだろうから、伝聞法則も問題になると思った。もっとも、小問2では小問1で書いた「自白法則及び違法収集証拠排除法則の適用の在り方」を前提として論じるものであるから、伝聞法則の検討は除外されていると判断し、言及しなかった。
設問3の雑感
- 同種前科証拠による犯人性立証が出題された平成19年司法試験過去問との関連性が強い。
- 犯罪性向を媒介とする犯人性立証の可否と、顕著な特徴が相当程度類似すること自体から犯人性立証をすることの可否の双方について検討した。
- 前者については、同種前科証拠と類似事実証拠との違いを踏まえて論じることまで求められているかもしれないと思ったが、ここまで書いている時間もないし、両者の違いを踏まえた論証の記憶も曖昧だったため、言及しなかった。
想定順位 100番~200番
- 刑事訴訟法はある程度量を書かないと、2桁に入るのは難しい。本問では何を書くべきかが比較的明らかであることも踏まえると、1行あたり30文字・5枚では、100~200番くらいだと思う。
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弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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