加藤喬の司法試験・予備試験対策ブログ

令和2年司法試験論文と司法試験過去問との関連性「刑事訴訟法」 1位/90%

令和2年司法試験論文は、全体的に、司法試験過去問との関連性が強かったです。

この傾向を前提にすると、令和3年以降の司法試験論文対策としても、重要度に応じてメリハリを付けながら、出来るだけ手広く司法試験過去問をやっておくことが望ましいです。

今日から、科目ごとに、令和2年司法試験論文と司法試験過去問との関連性について、具体的に説明させて頂きます。

関連の範囲だけでなく、関連の仕方(出題の角度の共通点等)も把握することで、令和3年以降の論文対策のための司法試験過去問の分析のコツを掴んで頂きたいと思います。

今回の記事では、令和2年司法試験「刑事訴訟法」論文と司法試験過去問との関連性について説明いたします。

例年、刑事訴訟法では、司法試験過去問との関連性が強い出題がなされます。

令和2年司法試験「刑事訴訟法」論文もそうであり、その大部分が司法試験過去問と共通しています。

 

設問1


設問1では、任意同行後の取調べの適法性が問われています。これについては、「強制の処分」該当性⇒任意捜査の限界という流れで論じることになります。

任意同行後の取調べの適法性は平成26年司法試験設問1でも出題されているため、平成26年司法試験設問1と共通する問題であるといえます。

なお、本問では、取調べ中に自白を獲得するために偽計を用いたことが黙秘権を間接的に侵害するとして、任意同行後の取調べの適法性の判断枠組みとは別の観点から取調べの違法性を基礎づけることも可能ですが、設問1でここまで問われているのは不明です(設問2でも書くことになるため)。

 

設問2・小問1


設問2・小問1では、①自白法則と違法収集証拠排除法則の双方が問題となり得る事案における両者の関係、②自白法則に関する論証、及び③違法収集証拠排除法則に関する論証の3つが問われていると思われます。

②は平成27年司法試験設問2前段で、③は主として平成18年試験設問2及び平成27年司法試験設問2前段で出題されています。

 

設問2・小問2


設問2・小問2では、小問1で論じた①ないし③を前提として、当てはめを展開することになります。

本問は、偽計自白の事案であり、約束自白が出題された平成27年司法試験設問2前段とは異なる事案類型に属するものの、当てはめの仕方はけっこう共通するので、平成27年司法試験設問2前段で学習したことが役に立つと思います。

違法収集証拠排除法則についても、司法試験過去問を使って当てはめを経験しておくと、本問でも説得力のある当てはめをしやすかったと思います。

 

設問3


設問3では、類似事実証拠による犯人性の立証の可否について、①犯罪性向を媒介として犯人性を立証しようとする場合と、②顕著な特徴が相当程度類似すること自体から犯人性を立証しようとする場合とに分けて、それぞれ論じることになります。

平成19年司法試験設問2では、同種前科”事実”による犯人性の推認の可否について、③犯罪性向を媒介として犯人性を推認しようとする場合と、④顕著な特徴が相当程度類似すること自体から犯人性を推認しようとする場合とに分けて、それぞれ論じることが求められています。なお、平成19年司法試験設問2では、伝聞法則等の証拠能力レベルの問題を検討対象外とするために、敢えて、同種前科”事実”を推認過程の出発点として設定しているのだと思います。

類似事実証拠による犯人性立証と同種前科証拠による犯人性立証の論証も当てはめもほぼ同じであるため、平成19年司法試験設問2との共通性が強い問題であるといえます。

それから、②の当てはめでは、類似する犯行の特徴についてどのように選別し、評価するのが重要です。そのうち、評価については、平成19年司法試験設問2では「自動車に放火するに先立ち、自動車のドアに折りたたみ式ナイフで複数のひっかき傷を付けるという、放火を迅速かつ容易に遂行する上でかえって支障になるような行為に及んでいる」ため、顕著な特徴であると評価しやすい一方で、令和2年司法試験設問2における犯行の特徴には「住居侵入窃盗を迅速かつ容易に遂行する上でかえって支障になるような行為」は含まれていないことから”も”、顕著な特徴を認めることが困難であるという意味で、両者の事案は対照的です。

犯罪を迅速かつ容易に遂行する上でかえって支障になる行為に及んでいる場合には、その分だけ、顕著な特徴であると評価しやすくなるという点は、秒速・総まくりでも秒速・過去問攻略講座でも強調していることであり、こうした過去問分析も本問の当てはめに役立つのではないかと思います。

 

以上が、令和2年司法試験「刑事訴訟法」論文と司法試験過去問との関連性についてです。

刑事訴訟法では、司法試験過去問だけで出題範囲の大部分をカバーできる上、「読解・思考・書き方」が重視されることからすると、司法試験過去問を使った演習中心の勉強をすることが論文対策として非常に効果的であるといえます。

これから司法試験過去問をやる方、司法試験過去問をやっているのに答案の水準が上がらない方などには、科目・分野ごとの「知識」だけでなく科目・分野ごと「読解・思考のコツ、書き方のルール」が集約された『秒速・過去問攻略講座2021』を受講することで、確実で効率的な過去問学習をして頂きたいと思っております。

 

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加藤ゼミナールは、加藤喬講師が代表を務める予備試験・司法試験のオンライン予備校です。

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加藤ゼミナール代表取締役
加藤 喬かとう たかし
加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
加藤ゼミナール代表
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
2014年 労働法1位・総合39位で司法試験合格
2021年 7年間の講師活動を経て、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立
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