令和2年司法試験論文と司法試験過去問との関連性「民法」 8位/35%

今回の記事では、令和2年司法試験「民法」論文と司法試験過去問との関連性について説明いたします。

司法試験過去問との関連性は35%です。

設問1


設問1では、AB間の売買契約に基づく残代金債権5000万円を譲り受けたCから残代金5000万円の支払請求を受けた買主(債務者)Bが、引き渡しを受けた売買目的物である乙建物が防音性能に不備があることを理由に支払額を少なくするための法律構成を複数検討することが求められています。なお、「Bは、乙建物に住み続けることを前提に、…支払額を少なくしたいと考えている」ため、売買契約の解除(541条、542条1項)は検討対象外です。

平成26年司法試験設問1では、Aは、平成20年10月1日を契約期間初日としてCから甲建物を賃借し、その際、甲建物が最新の免震構造を備えていることを前提に賃料を周辺物件に比べて25%高い月額25万円とすることについて合意したにもかかわらず、引渡された甲建物には最新の免震構造が備わっておらず法令上の耐震基準を満たす免震構造を備えているだけだったため、賃料は月額20万円に減額されるべきであると考え(したがって、合計120万円分の過払い賃料があると考えている)、平成22年10月分から平成23年3月分までは一切賃料を支払わないこととしたところ、平成23年3月1日、Cから賃料不払いを理由として契約を債務不履行解除すると主張されたという事案において、Cによる債務不履行解除を否定するための法律構成を検討することが求められています。

有償双務契約において目的物の品質に契約不適合があった場合における反対債権たる金銭債権(代金債権、賃料債権)の減額の可否が問題になっているという「出題の角度」が、令和2年司法試験設問1と平成26年司法試験設問1とは共通すると思います。

令和2年司法試験設問1では、買主(債務者)Aは、①468条1項に基づく抗弁として、売買目的物の品質に関する契約不適合を理由とする代金減額請求(563条、562条1項)を主張するとともに、②4691条2項1号に基づく抗弁として、売買目的物の品質に関する契約不適合を理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求権(415条1項本文)による相殺(505条1項本文)を主張することになります。

売買目的物の品質に契約不適合があったことを理由とする債務不履行解除を468条1項に基づく抗弁として主張すること、及び同条項でいう「対抗要件具備時までに譲渡人に生じた事由」の意味については、平成18年司法試験設問3で出題されており、上記抗弁のうち①は平成18年司法試験設問3との関連性があると思います。

契約目的物の品質に契約不適合があったことを理由とする債務不履行に基づく損害賠償請求権の成否は平成26年司法試験設問1でも出題されているため、上記抗弁のうち②は平成26年司法試験設問1との関連性があると思います。

このように、出題の角度と条文・論点について、司法試験過去問との関連性があるといえます。

 

設問2(2)


設問2(2)では、BがDとの間で地役権設定契約を締結し(契約①)、その際、毎年2万円をDに支払うことも合意した(契約②)という事案において、DにおいてBが契約②に基づく2万円の支払いをしないことを理由として地役権設定契約(契約①)を債務不履行解除(541条)することの可否が問われています。

債務不履行解除の可否を検討する際には、BとDの言い分を踏まえて、㋐地役権設定契約では地代支払が成立要件とされていないため、地代支払いの合意は地役権設定契約とは別の契約に位置づけられるから、地代支払いは地役権設定契約に基づく「債務」とはいえないのではないか、㋑541条・542条における「債務」は解除対象である契約に基づく債務に限られると理解する場合、㋐において地代支払いが地役権設定契約に基づく「債務」とはいえないと理解する立場からは、地代支払債務の不履行を理由として地役権設定契約を解除することはできないのではないか(解除対象である地役権設定契約に基づく債務の不履行がないため)、㋒㋐において地代支払いが地役権設定契約に基づく「債務」とはいえないと理解する立場からも、判例理論を踏まえて、地役権設定契約と地代支払合意との間に密接関連性があれば後者の債務不履行をもって前者・後者双方を解除できると解することも可能なのではないか(最三小判平成8・11・12・百Ⅱ44)といったことが問題になります。

私は、令和2年司法試験設問2(2)の出題の角度は、平成23年司法試験設問2に似ていると思いました。

平成23年司法試験設問2では、FがGに対して将来の賃料債権を譲渡したにもかかわらず、賃借人Aとの間で賃貸借契約を合意解除することで、譲渡した将来の賃料債権の発生を障害したという事案において、Gが将来債権譲渡契約を債務不履行解除することの可否が問われており、ここでは、㋓将来債権譲渡契約における譲渡人の「債務の本旨」の内容を確定したり、㋔解除制度の趣旨に遡って付随義務違反を理由とする債務不履行解除について重大な契約違反を要求するといったことが主たる検討対象として挙げられます。

令和2年司法試験設問2(2)は、㋐地役権設定契約の際に地代支払いの合意がなされた場合における地役権設定契約の「債務の本旨」の内容、㋒地代の支払いが地役権設定契約の「債務の本旨」に含まれない場合でも、解除制度の趣旨に遡って考えれば、地役権設定契約と地代支払合意との間に密接関連性があれば後者の債務不履行をもって前者・後者双方を解除できるのではないかという問題意識が問われているという点で、平成23年司法試験設問2で問われている㋓・㋔と共通します。

 

設問3


設問3では、Eの妻FがEの姉Gに相談した上でEから代理権を授与されていないにもかかわらずEの代理人としてEが所有する丁土地をBに売却する旨の契約を締結したところ、Eが売買契約を追認することなく死亡し、FとGがEを共同相続し、その後、Fが相続放棄をしたという事案において、①任意代理権の授与がない上、日常家事代理(761条)にも当たらないから、無権代理であること(113条1項)、②Eの生前における追認(113条1項)もないこと、③110条類推適用による表見代理の成否、④無権代理人に準ずる者による本人の単独相続について指摘・検討することが求められており、③では110条直接適用の場合と異なり善意・無過失の対象が異なるから「委任状・本人の実印に係る印鑑登録証明書を示した事実」は「正当な理由」の評価根拠事実とはならない(少なくとも、善意無過失を推定するほどの推認力はない)こと、④では無権代理人による単独相続の論点を応用した上で契約前後におけるGの関与態様に着目した当てはめをすることまで求められていると思います。

110条の直接適用による表見代理の成否において「本人の実印による押印」や「本人の実印に係る印鑑登録証明書の呈示」が持つ意味については、プレテスト(Y銀行の名ばかり支店長であるBが顧客に対してY銀行の正規の支店長印が押されている契約書を示した事案)で出題されています。なお、平成22年司法試験設問1でも、110条の直接適用による表見代理の成否が問題となる事案において、CがAの代理人として融資契約を締結する際にAの実印を使用したという事情がありますが、この事情の意味付けまでは問われていません。

110条類推適用による表見代理の成否において「委任状・本人の実印に係る印鑑登録証明書を示した事実」が持つ意味を正確に理解するためには、比較対象になるものとして、110条の直接適用による表見代理の成否において「本人の実印による押印」や「本人の実印に係る印鑑登録証明書の呈示」が持つ意味について正確に理解しておく必要があるという意味で、令和2年司法試験設問3の上記③における当てはめは、プレテストとの関連性があると思います。

また、平成28年司法試験設問1(1)では、子の財産についての法定代理権を濫用した親権者が子を共同相続した場合における代理権濫用行為の効果帰属が問題となっており、当時は、代理権濫用行為を無権代理行為とみなすという取扱いではなかったため、無権代理人が本人を共同相続した場合に関する判例理論を代理権濫用行為に転用することの可否という現場思考論点が問われていました(注:改正民法下では代理権濫用行為は無権代理行為とみなされるため、代理権濫用行為については無権代理と相続に関する判例理論が直接適用されます)。

令和2年司法試験設問3の上記④は、無権代理人が本人を単独相続した場合に関する判例理論を応用することが求められているという意味でも、平成28年司法試験設問1(1)と共通すると思います。

 

以上が、令和2年司法試験「民法」論文と司法試験過去問との関連性についてです。

民法は、条文及び条文1つ当たりの法律効果が多い上、出題範囲の偏りが小さいため、他科目に比べて出題範囲が広いのです 。そのため、分野論点単位で司法試験過去問からピンポイントに出題される可能性は高くありません。

もっとも、司法試験過去問を通じて、思考のコツ(訴訟物から考える、要件事実的な主張分析等)、書き方の作法(請求⇒要件という書き方、判例の射程・応用問題の書き方)、分からない問題・現場思考問題における対処法等まで確立しておくと、対応できる問題の幅が一気に広がります

こうした真の実力を身につけるためには、正しい方向性に従って、司法試験過去問の演習・分析・復習を行う必要があります。

これから司法試験過去問をやる方、司法試験過去問をやっているのに答案の水準が上がらない方などには、科目・分野ごとの「知識」だけでなく科目・分野ごと「読解・思考のコツ、書き方のルール」が集約された『秒速・過去問攻略講座2021』を受講することで、確実で効率的な過去問学習をして頂きたいと思っております。

 

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講師紹介

加藤 喬 (かとう たかし)

加藤ゼミナール代表取締役
弁護士(第二東京弁護士会)
司法試験・予備試験の予備校講師
6歳~中学3年 器械体操
高校1~3年  新体操(長崎インターハイ・個人総合5位)
青山学院大学法学部 卒業
慶應義塾大学法科大学院(既修) 卒業
労働法1位・総合39位で司法試験合格(平成26年・受験3回目)
合格後、辰已法律研究所で講師としてデビューし、司法修習後は、オンライン予備校で基本7科目・労働法のインプット講座・過去問講座を担当
2021年5月、「法曹教育の機会均等」の実現と「真の合格実績」の追求を理念として加藤ゼミナールを設立

執筆
・「受験新報2019年10月号 特集1 合格
 答案を書くための 行政法集中演習」
 (法学書院)
・「予備試験 論文式 問題と解説 令和元年」
 憲法(法学書院)
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