4年前に平成28年司法試験の再現答案の添削・講評をしていて気になったのが、伝聞証言の理解を誤っている答案が一定数あり、そういった答案はかなり厳しい採点をされているということです。
刑事訴訟法では、出題趣旨や採点実感において理論面についてかなり高度なことが求められることがありますが、こうした場面で理論的におかしなことを書いても、さほど厳しい評価はされません。
しかし、基本中の基本について明らかに間違ったことを書くと、厳しい評価を受けることになります。
捜査であれば、「強制の処分」該当性の当てはめで捜査の必要性を考慮する答案などです。
伝聞法則であれば、証人の知覚・記憶・表現・叙述の真実性が問題になることをもって伝聞証言に当たるとする答案などが挙げられます。
例えば、甲を作成者とする供述書であれば、その伝聞証拠該当性の判断においては、要証事実との関係で「甲の供述」の内容の真実性が問題となるかどうかを検討することになります。
そして、甲の供述書に、「乙が『・・』と言っていた」という乙発言部分がある場合には、再伝聞該当性の判断として、要証事実との関係で「乙の供述」の内容の真実性も問題となるのかを検討することになります。
「甲の供述」「乙の供述」のいずれも、公判廷外供述であるため、反対尋問等(「等」には直接主義、宣誓・偽証罪による処罰の予告が含まれます)による真実性のチェックをすることができないからです。
これに対し、甲の証言(公判廷における供述)は、要証事実との関係で「甲の証言」の内容の真実性となるということだけでは、伝聞証言に当たりません。
甲の公判証言については、公判廷における供述であるため、その内容の真実性について反対尋問等による真実性のチェックをすることができるからです。
例えば、「被告人がVを指すところを見た」旨の甲の証言は、「被告人がVを刺した」という要証事実との関係でその内容の真実性が問題になるものの、甲の知覚・記憶・表現・叙述の誤りの有無について、反対尋問等によりチェックをすることができます。
甲の証言が「乙が『・・』と言っていた」という内容を含んでおり、かつ、要証事実との関係で「乙の供述」の内容の真実性が問題になるのであれば、甲の証言は伝聞証言に該当します。
甲の証言中の乙の供述は公判廷外における供述であるため、乙の供述の内容の真実性については反対尋問等によりチェックをすることができないからです。
だからこそ、伝聞証拠は、「公判廷外供述であって、かつ、要証事実との関係でその供述の内容の真実性が問題となるもの」と定義されるわけです(形式説)。
要証事実との関係で「公判廷外供述の内容の真実性が問題になる」(=公判廷外供述の主体の知覚・記憶・表現・叙述の正確性が問題になる場合)に初めて、伝聞証拠に該当するということです。
以上のことは当たり前のことですが、ぎりぎりの時間制約と緊張感の下では、「誰の」供述の内容の真実性が問題となるのかを検討するべきなのかがめちゃくちゃになってしまうことがあるので、気を付けましょう。
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