
論証を記憶するコツにはいくつかあります。
前回は、「論証を記憶する5つのコツ」という記事で、論証を記憶するコツについて5つ紹介させて頂きました。
今回は、関連記事として、「理由付けのキーワードを正確に理解していれば、複数の要件を自然と導くことができる」ということについて、記事にさせて頂きます。
例えば、権利外観法理(表見法理ともいう)絡みの論点については、論証の理由付けの核をなしている権利外観法理の内容を理解していれば、規範である要件の整理や内容の導くことができます。
民法94条2項の趣旨は、権利外観法理にあります。
権利外観法理とは、①虚偽の外形の②作出につき帰責性のある真正権利者の犠牲において③虚偽の外形に対する第三者の信頼を保護することで、真正権利者と第三者の利益調整(静的安全と動的安全の調整)を図るという考えです(佐久間「民法の基礎1」第4版121頁参照)。
不実登記事案に民法94条2項を類推適用するための要件は、①’不実の登記の存在、②’真正権利者の帰責性、③’第三者の正当な信頼というように、権利外観法理の内容(①~③)が反映されたものとして整理されます(佐久間「民法の基礎1」第4版134頁、124頁参照)。
権利外観法理について正確に理解していれば、(ⅰ)②真正権利者の帰責性は、真正権利者・第三者間の利益調整において、真正権利者において第三者保護のために権利を喪失させられてもやむを得ないといえる事情を要求する趣旨の要件であること(「「民法判例百選Ⅰ」事件22解説[佐久間毅])を導くことができます。
そして、(ⅰ)の理解からは、(ⅱ)③第三者の正当な信頼の内容は②真正権利者の帰責性に応じて決せられる(帰責性が大きければ、その分だけ正当な信頼の内容が緩和される)ため、真正権利者の帰責性に関する事案類型ごとに無過失要求の有無が変わること(佐久間「民法の基礎1」第4版136頁参照)、(ⅲ)②真正権利者の帰責性は不実登記の意思的承認に限られないこと(最一小判平成18・2・23・百Ⅰ22でいう「自ら外観の作出に積極的に関与した場合やそれを知りながらあえて放置した場合と同視できるほど重い」帰責性も含まれる)という2点を導くことができます。
このように、論証の理由付けの核をなしている制度趣旨や原理を正確に理解することで、規範である要件の整理や内容を自然に導くことができるようになる論点もあります。
すべての科目に妥当するコツではありませんが、特に民法では、記憶の負担を軽減するため、さらには、判例の理解を深めたり、応用問題に対応する力を培うためにも、論証の理由付けの核をなしている制度趣旨や原理を正確に理解することが役立ってくれると思います。

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